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青春と僕たちの架空  作者: 白木雨芽
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第九話 暗闇の部室

俺の彼女は、月藤可乃子という。俺よりも身長が高くて、ロングヘアの美人だ。そんな俺の自慢のガールフレンドだが、最近どうも怪しい。まず、帰宅部の可乃子がオカルト研究部に入り浸っているということだ。そのせいで、俺は可乃子と一緒に下校できなくなってしまった。それに最近、明るかった彼女の笑顔が曇っている気がする。これは明らかに、オカルト研究部という謎の黒い組織から生気を奪われているに違いない。

うちのクラスのオカルト研究部は、沼津巳衣子というショートカットの眼鏡女ひとりだった。いつも俯いて怪しそうな分厚い本を読んでいるので、何だか近付きにくい。それに、教室で可乃子と沼津が一緒にいるところを見たことがない。

「可乃子、放課後、最近なにしてるの?」

俺は思い切って、可乃子に聞いてみた。

「ん?あ、ああ、ちょっと遊びに行ってるだけだよ!」

怪しい。まるで浮気を疑われて誤魔化す夫のようなリアクションだ。可乃子は逃げるように「今日も先帰ってて」と、教室を飛び出していった。俺は、同じく教室を出ていこうとする沼津を引き留めた。

「月藤さん?いたかな……部室って真っ暗だから誰がいるか全然見えないんだよね……」

そんな闇鍋みたいなことを毎日しているのか?不気味すぎる。

「活動内容は私たちだけの秘密だから教えないよ……」

「え、それって入部したら教えてくれんの?」

「それはそうだけど……」

「じゃあ、入る!」

可乃子の謎を解き明かすためだったら、俺はたとえ怪しい部活にだって入るんだ!

「あ……入部届は先生に出して……」

「了解!ありがとな」

俺は張り切って職員室まで走った。

部屋が暗いなら俺が忍び込んだところでバレないんじゃないか、わざわざ正式に入部する必要はないんじゃないか、ということには若干気付いていたが、俺は走り出したら止まらない主義なので、そのまま入部届をもらい、提出した。

オカルト研究部は、人通りの少ない地下の端っこに位置していた。地下という場所にあるだけで不気味なのに、すぐ出られそうにない一番端というのが、俺の足をより一層すくませた。

「失礼、します」

静かにドアを開けると、黒いカーテンが窓を覆い、当然電気なんて点いていなくて真っ暗だった。人がいるかさえも見えなかった。可乃子はどこに、いるのだろうか。

「あのー、新入部員の富押凌駕ですけど……」

その時、部室内がざわっとした気がした。

「初めまして!部長の柿崎です!いやー、新入生とは嬉しいね」

顔は見えないが、男の声がした。これ、電気は点けないのだろうか。

「今、何やってる最中なんですか?」

「あー、今は特に何もやってないよ」

期待外れにもほどがある返答だ。

「じゃあ、電気点けてもいいですか?」

「それはダメだよ。これは暗闇に慣れる練習だからね。ちなみに僕は君の姿が見えるよ。ベテランだからね」

な、何のために……?

「僕たちはありとあらゆる怪奇現象を検証しているんだけれど、その時に暗闇は必須でね。君もいずれ慣れるよ」

外に出たら眩しさで目がチカチカしそうだ。

「あの、月藤可乃子は?」

俺は可乃子を探しにきたことを、この人たちの奇行によって忘れてしまっていた。

「んー?そんな名前の子はいないけど?」

俺は耳を疑った。ここ最近足繫く、通っていたというオカルト研究部に可乃子がいないだと?

「今まで一度もですか?本当に知らないんですか?」

「うん、知らないね。部員も少ないし、さすがに把握してるよ」

僕は全くメリットもない部活に入部してしまったようだった。

「すみません、退部します」

「もう⁉早くない⁉てか待って、人数少ないからやめてもらうわけにはいかないよ!」

部長が俺の腕を掴んで止める。この人、暗闇の中でも俺が見えるから厄介だ。

「せ、せめて!幽霊部員でもいいから退部はやめてー!」

部長は本気で俺の退部を拒み続け、結局オカルト研究部に在籍することになってしまった。


「あれ?凌駕、まだ帰ってなかったの?」

オカルト研究部から解放されて、とぼとぼと廊下を歩いていると、可乃子と遭遇した。

「お前、オカルト研究部に通ってたって言ってたの、嘘だったのかよ」

俺のメンツは丸つぶれだ。彼女に騙されてオカルト研究部に入部って……、穴があったら入りたい。

「凌駕、なに言ってるの?私が遊びに行ってたのは、ファン研だよ?ファンタジー研究部!」

「ファン研……?」

似ても似つかない部活名じゃないか。

「でも、何で俺が部活のこと聞いたらちょっとテンパってたの?」

「あー、あれはね……。部活でコスプレしてたの!」

コスプレ?

「だって凌駕に教えたら覗きにくるでしょ?」

「そんな理由かよー……」

「ファン研の人に半ば強制でコスプレさせられてたんだよ。もう大変だったんだから」

可乃子の笑顔が曇っていたのはそういうことか。可乃子はすらっとしているし身長も高いからな。

「明日からは一緒に帰れるよ」

俺はホッとしたが、オカルト研究部の書記として通うことになったということを言い出せずにいたのであった。

読んでいただき、ありがとうございました!

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