似てない同士。
初作品初投稿なので、初心者が書いたんだなと思って見ていただければ幸いです。
「ねぇ!奏!聞いてる?」
「うーん。聞いてるってば。」
2人の女子の声が他に誰もいない教室に響く。
宮本奏17歳、高2。勉強は英語と国語が得意だがそれ以外と、運動はてんでダメな女子高生。
奏は今高1の時からクラスが同じの松本愛恵の最近できた彼氏の惚気話を聞かされていた。
「でさぁ、はやとくんがぁ…」
「はいはい。わかったから、はやとくんにあんまり迷惑かけないようにね。」
奏はまだ愛恵のように語れる相手がいない。いや、付き合ったことは数回あるものの、どれも1、2ヶ月のものだった。その中に奏が本当に好きだと思える相手はいなかった。
「奏はさぁ恋しないの?」
「こい、ねぇ…。」
付き合ってもすぐダメになってしまう奏には、現実の恋愛に対する興味自体が消えかけていた。
「愛恵、私はさぁ、今は少女漫画で十分なの。現実でリア充より漫画の中の方が全部上手くいくし幸せなの。」
奏の今の楽しみは少女漫画だった。
「何言ってんのよ!漫画なんて所詮2次元じゃない!奏のそれは単なる現実逃避だよ!」
奏はスマホの漫画を見つめながら顔をしかめた。愛恵の言っていることは当たっている。奏はスマホの画面を切ってカバンを持った。
「あー、もううるさいな。彼氏なんていてもいなくても変わんないわよ!」
愛恵はすぐさま謝ったが、奏はすねた振りをして教室を出た。
(愛恵の言ってることは合ってるけど現実はもうやだんだ。気づつくだけだもの。)
それから半年が経ち、いつの間にか愛恵の惚気話は愚痴へと変わっていた。
「それではやとったらさー酷くない?!」
「まぁ、はやとくんだってなんか考えてたのかもよ?」
相変わらず奏は聞き役に徹していた。
「えー。でもさぁ…。」
ドンッ!!!
「わぁ!」
「何?!」
教室のドアを見るとそこに居たのは息の切れた隣のクラスの高根悟だった。奏は聞いたことの無い苗字だったためすぐに覚えた。
「あっれ~、隣のクラスの高根くんだぁ!どうかしたのー??」
奏はすこし驚いて声が出ないまま高根を見つめていた。すると、高根は奏の方に歩いていき、
「宮本…さんだよね。ちょっと来て。」
と言って奏の手を取り連れ去った。
「えっえぇ?!ちょっと!」
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「高根くん!ちょっと待って!」
奏は掴まれた手を振りほどき止まった。
「どうしたの急に!あ、その、私と話したいことないし、なんか用事?」
高根は少し驚いてからふっと笑って言った。
「頼みがあるんだ。」
「えっ?」
高根は奏に向かい合って言った。
「俺と付き合って欲しい。」
「えっ?!」
奏には高根の言っていることがよくわからなかった。
(なんで?なんなで私にこんな事言うの?話したこと…は無い!記憶に全くない!とりあえず、)
「なんで急に?」
高根は髪をかきあげながら言った。
「俺のクラスの奴が最近彼女できて、何故か俺にも作れってうるさいんだ。で、あんまりにも毎日言ってきてうるさいからうその彼女でも作ろうと思って。」
(なんか、私と似てる…かも。)
「でも俺、あんま女子と話さないからこんなこと頼める人いなくて。」
「それで、なんで私?」
「俺が話したことあんのって松本さんぐらいだから。」
「えっ、待って。私たち話したこといよね?」
(悪いけど私にはそんな記憶全くないわよ?!)
「ほら、1年最後の大掃除の時、箒なくて困ってた俺に。」
「あっ!」
(なんかそんなことあったな。確か箒探してる男子に私が使い終わったほうきを渡して…。)
「松本さんのクラスの友達に松本さんに彼氏いるのかって聞いたらいないって言うからいい機会だと思って。」
「いや、いやいやいや話したのってそれだけっ?!」
高根は頷いて笑った。
「聞いてたらさっき俺と似たような状況にいる松本さん見つけてチャンスだって思ってさ。笑」
奏は今1番つかれたくないところをつかれてちょっとむくれた。
(まぁ、別に嫌な人じゃなさそうだし。よーし。覚悟を決めろ私!!)
「わかった。期限は?」
高根は少し考えてから言った。
「そうだな。1番はクラスの奴が彼女と別れるまで…かな。」
奏は呆れて言った。
「有限でお願い。」
「うーん。わかった。じゃあ3年生に上がるまでの半年。俺と付き合ってください。」
「は、はい。」
(こんなにちゃんと告られたのって久し
ぶりだからちょっと恥ずかしいな。)
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。高根くん。」
「あ!そうだそれそれ。」
「えっ?」
「仮にも付き合うんだし、お互い名前呼びにしようぜ。奏。」
(ダメだこいつ天然だ。でもここで照れたら負け。こうなったらいけ!私!)
「わかったよ。悟。」
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『えぇ!?じゃああの後一緒に途中まで帰ったの?』
「そうなんだよぉ。なんでこんなことにぃ…。」
『いやいや、OKした奏も悪いよ笑。』
奏はその夜、電話で愛恵あった事事を全て話した。
『まぁいいじゃん!高根くんイケメンだしスポーツもできるし勉強もできるって聞いたよ!属に言うオールマイティってやつだね!』
「そんなこと言ってる場合じゃないよぉ泣。」
『落ち着け奏!大丈夫!ありのままの自分でいれば。絶対そのままの奏を好きになってくれる人はいるよ!もしかしたらそれが高根くんだったりして…。』
「ーーーもうっ!」
「はっははー笑。じゃね!おやすみぃー」
ブツッ。ツーツーツー。
「はぁ、愛恵ったら。」
(ありのままの私を好きになってくれる人か…。)
「おはよう奏。」
「…え。」
次の朝、悟は奏が乗るバスのバス停にいた。
「なんでいるの。」
「なんでって聞く?普通。」
「え、聞いちゃダメなの?」
「ダメじゃないけどさ笑。まぁ、いいや。俺は普通に奏に会いたかったから。」
「は、はぁ…。」
(ほんとに付き合ってるみたいだなぁ。)
「奏は今日は部活?バドミントンだっけ?」
「体育館工事中だから30分ぐらい外周して終わりだよ。」
「そっか。じゃあ終わったら教室来て。待ってるから。」
「…わかった。」
(…外周、頑張らないとな。)
ー放課後ー
「はーい、じゃあ今日はここまで!」
タッタッタッタッ。
(ちょっと遅くなっちゃった。)
「悟っ!おまたっ……」
「好きです!!!」
(えっ。何。)
悟は黙ったまま告白してきた子の言葉を聞いている。奏は今来た道をUターンし、走って昇降口に向かった。
「はぁっはぁっはぁっ。」
(何あれ何あれ何あれ!!悟は私の……!!!)
「あ、あれ…。」
奏は足を止めて上を見た。
(そうだ。そうだった。悟にとって私は本命ができるまでの代わりで、本当に私を好気なわけじゃないんだ。なんで、なんで忘れてたんだろう。)
その時、奏の頬を熱いものが流れた。涙だった。それは奏にはとても久しぶりの感覚だった。
(なんでだろう。今まで彼氏と別れても泣いたりなんかしなかったのに。なんで…。)
奏はその場にしゃがみこんだ。その時、
「奏っっ!!!」
「……っ!!!」
奏の肩を掴んで奏の名前を呼んだのは悟だった。
「さ、悟?!なんで…。」
「なんでって…。」
(っ!いけない!)
奏は悟に背を向けて言った。
「さっき告白されてたね、好きですって。
良かったじゃん。あの子うちの学年でもトップを争う程の可愛い子なんだよ!」
(声が震える…。でもっ。)
「もうさ、私はいらないかな。私と偽物恋愛してるより、あの子と本物の恋愛した方がいいよ!クラスの人にも嘘つかなくて大丈夫になるし!何より2人ならお似合い……」
そう言いかけた瞬間、悟は我慢できないと言った様子で奏を振り向かせた。
「やっ!」
奏は顔お腕でおおった。悟はそれを押さえつけ奏の顔を見て驚いた。奏の目からは次々に涙が溢れていた。
「だ、だから、やだって…言ったのに。」
「な、なんで泣いて……」
「悟が…私を振って、あの子と付き合っちゃうんだって、思ったら…」
「っ!!!!」
その途端悟は奏を壁に押し付け怒鳴った。
「お前なぁ!!適当なことばっか言ってんじゃねぇよ!」
「え…?」
悟は奏をじっと見ながら言った。
「俺が好きなのは最初から奏だって。」
「えっ。えぇ?!」
悟は奏を離し、照れた様子で言った。
「クラスの奴が彼女作れとか、それが面倒だからとかは全部嘘だ。」
「嘘…。」
「もちろん、さっきの人のも断った。俺は奏が好きだからって。」
「なんで…あんな嘘…。」
「だって、そうでもしないと、奏と関わり持てなさそうだったし。誰かに取られるかもって思ったら気が気じゃなかった。」
奏は頭がぼーっとしていた。すると悟は奏に1歩近づき、
「奏、好きです。俺と付き合ってください。」
(悟は私を…。今度は私も!)
「私も、悟が好きです。私と付き合ってください…!」
悟は頬を赤く染めて柔らかい笑顔をうかべ、片腕を壁に押し付け、
「よろしくお願いします。」
と耳元で囁き、奏の唇にそっと優しくキスを落とした。
いかがでしたでしょうか。初投稿なのですごく緊張しました。日頃胸きゅんシーンを想像するのが好きなのですが、文字に起こしたのは初めてなので評価は甘めにお願いします。では、また気が向いたら投稿するのでそちらも良かったらお願いしますね。では~。