空のひとみ
題名ちくっと修正しました。なんでナンバリングしてたんでしょう。
短く終わって堪るか。数分前の自分の覚悟はどこに行ったのか。
未来ある若人をここで見殺しにする気かジジイ! いやそこまで老いてねえけど!
荷物全回収完了! 二人のいる部屋まで、足強化したなら数秒!
グラグラと揺れる柱に肝を冷やしつつ部屋に着けば、青ざめパニックのい少女を必死に身振り手振りで宥めようとするヤツがいた。
こちらに気がついた瞬間、ヤツは暴れる少女を軽々抱えて俺を見つめる。
どうするんだ、と問いかけられているんだろうか。
「……逃げるが勝ちだ!」
「逃げるが勝ちだ」
ヤツは口の中で軽く転がすと、俺の示した方向へ走り出した。
赤に反射する金髪が眩しい。これなら見失わないだろうか。
ドラゴンは……まあそりゃ気がつきますよね!? 反抗してこない建物相手への陰湿な尻尾攻撃をやめ、逃げ惑う人間にターゲットを変えたらしい。
少女は泣き叫びながら「殺してやる」だの「地獄に落ちろ」だの「熱い痛い」だのとにかく凄い喚き様だ。酸欠にならないのが凄い。
耳元で叫ばれて迷惑そうな顔をした金髪。というかそんなに叫んでたら何処まで逃げても意味がないのでは……。
ヤツが困った様に俺を見る。開けた右手をぶん、と振り下ろす様なジェスチャー、それに首を傾げ。
意味は分からないがOKしてみた。
因みにこの首をかしげるだのOKサインなどは、お互い頑張って伝えられる様になったやつなのだ。
言葉も文化も違う(多分)中で、かなり頑張ったのだ。
どうやったか……? そりゃ全種族共通の不快感をもたらすもの、痛みでですよ……。
向こうの示した解釈が合えばなし、合わなければ手のひらにぺちん、と。音がすればいいやって威力だぞ?
これもヤツの理解力が高いので出来た芸当である。
さて話を戻そう。
OKした次の瞬間、見えない速さの手刀が炸裂。痛みを感じる間もなく、少女は昏倒した。静かに、と言えないからって肉体言語かよ。いや、言っても意味なかったろうけど。
あんだけ躊躇いなく振り下ろした癖に、凄く申し訳なさそうだ。
……でも、少女には悪いけどこれで逃げ切れる可能性は上がっている。
と言うかヤツの足が速すぎる。本当になんもバフかけてない? マジで?
これで俺が強化かけたらどうなるんだろう……そしたらアイツらだけでも逃げれるかなあ……。
いや、逃げれた所であの二人じゃ生きてけないか。俺がいないと駄目だな。
すぐ横の地面がデカイ尻尾で綺麗にえぐれた。うわあ、もう死にそう。
「◼︎◼︎、◼︎◼︎◼︎」
俺の前を走っていたはずのヤツが、急に俺の隣に飛び込んできた。
その瞬間、ヤツが先程までいた所が派手に爆散。ヤツの顔も心なしか引き攣っている。
「やばいなこれ」
「やばいな」
はは、と眉を下げて笑うヤツは、また俺の言葉を真似た。
このままじゃジリ貧だ。いくらヤツが驚異的な身体能力を持っていようが、疲労はあるし、些細なミスだってあるだろう。
ここは全力で、この辺りの全精霊に「力を借りて」逃げることにしよう。
逃げ出した頃は躊躇していたが、幸いこれがどう言うことか分かるかもしれない少女は気絶中。ならば。
ドラゴンの動向を視界の端で確認。
大きく息を吸う……次は火炎放射……?
またまた運がいい。他の行動だったら時間が足りなかった。
忙しく呼吸しているヤツの首に、左の指を二本当てる。
他人にどうこうするのは何年振りだろう。失敗しないといいんだが。
「……?」
訝しげな視線を向けてくるヤツ。
今更コイツの目が、綺麗な青色だと知った。
あんだけ活動報告で色々言っておいて、まだまだ起承転結の「起」を出ていません。はよしろ。




