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4/6

壊される世界

本当に前書きは撤廃しました。

ずーっと視点が変わらなくて申し訳ないですね……もう少ししたら少年視点になる、はずです。

一瞬ですけど……。主人公なのに内面を描写するとネタバレしまくる悲しみ。

 少女は目覚めはするものの、少し物を食べてはまた眠るを繰り返していて、まだ体調は回復しきっていないらしい。

 ヤツはと言うと。彼女が回復するまでここに居座るつもりなのか、最近は辞書をひたすら俺に音読させている。

 今は百ページ位だろうか。ノリで出さなきゃよかった。

 読ませているのが遊び半分だったら「やってられっかバーカ!」とぶん投げることも出来るのだが、いかんせん文字を追う奴の表情が真剣すぎてそれは憚られるのだった。


 平仮名は余裕で読めるようになった。早すぎる。なんなら平仮名の所だけ音読しては得意げに笑っている。くそう、頭の出来が違いすぎるのか。


 漢字は……あれだ。「お前さっき「いきる」って読んだのに「ショウ」とかふざけてんのか?」と言う目を向けられもしましたが、最近は漢字にはいくつも読みがあると理解してくれたようです。助かった。


 基本独り言の多い人種なので、何気なく呟いた言葉に奴が反応するのが面白いってのもある。

 今まで一人しか居なかった家に、エネルギーの塊の子供二人が居るってのは、まあ。悪いものではないなと。

 家が明るくなった気がする。うん。



 そう、家が明るくなったのだ。

 物理的にな! 最悪だ!!




 異変に気が付いたのはヤツだった。

 突然顔を顰めたかと思うと、窓から華麗に飛び出して外へ行ってしまった。

 辞書の言葉が何かマズったんだろうか、とぼんやり考えて居ると血相を変えヤツが戻ってくる。


「◼︎◼︎◼︎◼︎!! ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎、◼︎◼︎!」

 また投げつけられる意味不明な難しい発音の羅列。脳みそがパンクする。


「だから分からないって!」

「……〜〜ッ!」

 一瞬考え込むものの、まだ一週間だ。

 上手く言葉の出てこない事に苛立ったヤツは、初めて会った時のように俺の服の裾を掴み外へ引っ張って行った。

 力が馬鹿みたいに強い。転びそうになりつつ外へ出ると、そこには地獄が広がっていた。


 俺の館は森の中にある。結界を何重にも張り、外界からは視認も出来ないし、運良く出来たとしても結界に弾かれ入れないような立地である。

 まあそれをヤツは軽々抜けた訳だが。それはさておき。


 外と隔たれた空間故に、ここには変化があまり無かった。

 風と、空と、植物と。それくらいしか要素がない。

「……なん、だこれ」


 いつも青と緑ばかりの世界だったはずなのに。

 俺の世界は、刹那赤に染まってしまった。


 さっきまで普通だった、使い魔だってなんの異変も……そこでまた使い魔が操れなくなっている事に気がついた。ヤツが来た時と同じ、確認するまで気が付けなかった異常。

 使い魔は破壊されるような異常事態も、しっかりと送ってくれるはずなのに。


 どうして今まで気がつかない!?

 自分の無能さに吐き気がしてきた。


「……クソ!」

 範囲を狭めれば結界はそれだけ強くなる。

 苦渋の決断だった。家周りまで縮小する。目に見えて赤の侵食は鈍くなった。

 俺の世界はまた小さくなる。これで何度目か。


「……おい、チビ」

「……」

 自分の事だと何となく分かったのだろう。ヤツは真剣な顔をして、俺をじっと見つめている。


「さっさと準備してここを出るぞ」

 ぱち、瞬き一つ。

「さっさと準備してここを出るぞ」

 寸分違わぬ発音、イントネーション。

 二、と口角が上がったのが見えた。こいつ、こんな状況下で笑えるタイプかよ。


「よし、そんだけ余裕そうならお前の心配はしない!」

 少女が寝ている部屋を指差してから、俺は別の部屋へと走った。

 少女は、言われなくてもヤツがどうにかして守るに違いない。


 ならば俺は、ここで失う訳には行かない自分の荷物を纏めた方がいい。

 緊急用の術式を途中で放り出すんじゃ無かった!

 何が結界が破られるときは俺が死ぬとき……だこのアホ!

 今死んだらアイツらどうなるんだこの馬鹿! 馬鹿野郎! このクソレベルの能無し!!


 半分しか作ってない術式をリアルタイムで無理やり組み直して作動。

 粗は人力で対応……大丈夫、俺ならやれるとも。


 赤はまだ耐えられる。全部回収してから悠々と風呂入ってでもまだ余裕が……フフぐぶへッ。

 瞬間、家が揺れた。地響きが何かかと思うような、そんな。


「……な、なん、だ」

 どうして想定外ってのは連鎖するんだろう? 窓の外を見ると嫌な予感が的中する。


 いや、あれ、あれだろ? ほら……模造ゴーレム! 悪戯とかはったりに使う奴! だよな!?

 無慈悲にそんな考えを打ち砕く、「ゴーレムはこんなじゃないです」という俺の中の声。

 家に全力で数メートルのテールをぶちかましているのは、本でしか見た事ない、最早伝説とまで言われる。


 ドラゴンだった。で、でかい……家くらいある……。


 書籍曰く。

 全てを灰に帰す炎を吐き、鉤爪で結界なぞ紙切れの様に切り裂く。鱗は上級の魔術、魔法共に物ともせず、牙は……何だったかな……。


 ああ……何にせよ、短い人生だったなあ……。


 一瞬とはいえ、俺は本当にそう思ってしまった。


所で模造ゴーレムってなんなんでしょうね。

あとでこのおっさんに説明して貰いたいものです。というかさせます。

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