異世界への入口
俺の名前は異島綾斗。何の変哲のないただの人間。小中学生の頃は特にこれといったこともなく過ごしていた。ただ結構女の子が好きで、いろんな人と仲良くしてたら先輩に目をつけられたり…といった経験もあった。高校に入学してからは生徒会長をやったり学校に貢献した生徒だったんじゃないかな〜と思ってる。そして今はただただレッテルに憧れてた自衛官になってしまった。入ってからはとにかく訓練や課業後の靴磨きやアイロンのプレスなど、ここまでやるかと思うほどやらされてきた。そんな毎日を過ごし、日に日に異世界に行きたいと強く思い始めていた。ある意味この世界も異世界だけど(笑) エルフや獣人が集うファンタジー世界に行きたい。今はただその思いがあるのみ。
「ぱっぱらっぱ〜ぱっぱらっぱ〜」
「あーこの音まじで鬱になりそう。起きたらこの天井、この景色、まじでため息しか出ない。」
ガチガチに固めた作業服に腕を通す。
「なんかいいことねーかなー。ってこれもう口癖になってるわ(笑)」
「おーい異島〜今日お前隊舎の鍵あけだぞ〜」
「やべ。完全に忘れてた! チャリ借りるぞー!」
駐輪置き場からチャリを出し漕ぎ始める。
新隊員は隊舎の鍵あけをしなければならない。そして自分の居室から隊舎までは歩いて約10分、チャリで約4分。
「何でこんな朝一から急がなきゃいけないんだよ。ほんとめんどくさいわー」
隊舎に着き鍵あけをこなしていく。
なんだか今日嫌な予感する。昔からそうだ。なんか嫌な予感がある日は大体何か失敗をする。とりあえず鍵あけ終わったし戻るか。
居室に戻り制服に着替える。そう。今日は俺の昇任の日だ。1士になる。全然嬉しくない。今の生活に満足していないというか、今俺は最高にこの仕事を辞めたいからだ。辞めたい理由としては外の世界で暮らして、ある程度の稼ぎで趣味に没頭したいと思っているからだ。その趣味とは…アニメ鑑賞。そして、異世界ファンタジー作品に出てくるような秘境の地に行き、その風景を写真に収めること。くだらないと思われるかもしれないが、自分の人生をどうこう批判される義理はないし、人生の舵は自分で取りたい。と思っている。
さて、昇任の申告の時間が近ずいて来た。隊長室の前までため息をつきながら歩いていく。
「おーい、異島ー。」
…!?
(この声は苦手な上司川山1尉…)
「はい!」
「あなたの名前は何ですかー?」
(ついに頭沸いたのか。こういう対応が一番だるい。直接指摘してくれればいいのに。というよりどういう意味だ。名前?) …!!
(ネームがついていない!)
「やっべー!!!」
居室に猛ダッシュで戻る。秋で涼しくなり始めているというこの季節に額、背中、脇からは滝のように汗が吹き出している。ネームを付けすぐに隊舎に走って戻る。
(嫌な予感ってこの事か…ついてなさすぎる。)
隊舎に戻り早速隊長室に入る。倍列者は各隊長が並んでいた。
(早速申告だ。自分以外にもう2人昇任する同期がいた。そして、なぜか辞めたい俺が指揮を取らなければならない。本当に面倒だ。)
息を吸い、吐き出したと同時に声を張る。
「前へー進めっ!1、2、1、2、分隊ー止まれっ! 右向けー右!」
「敬礼!」
バッ!!
「直れ! 申告します。東都方面衛生隊、異島2士以下2名のものは平成30年10月1日付を持って、一等陸士に昇任されました。敬礼!」
決まったぁ〜。にやにやと不意に頬の肉に力が入ってしまう。
「休め。」
呑気な隊長の声だ。
「整列休め。」
「あっ全然楽に休んでくれたまえ。」
(はい。おきまりの文句ですね。そんなことも想定済みだ! )
再び頬に力が入ってしまう。
「敬礼!!」
その場に戦慄が走った。というより俺にだけ戦慄が走った。
「…?はっはっはっ!!」
隊長室が笑いに包まれる。
「楽に休めって言っているのに敬礼するとか君素質あるよ(笑)」
「…///」
(あああーー!!もう!!)
最高に恥ずかしい。自分ではわかっていたことにも関わらず、なぜ休めという言葉が出なかったんだ。
申告が無事?に終わり自分の小隊に戻る。
(朝の嫌な予感的中しまくり。最悪な日だ。あんな大恥をかいてしまうだなんて。まあ近いうち退職する予定だし。もう何とでもなってしまえ。まー残りの半日は適当に過ごしてれば終わるって祈るばかりだな。)
日も暮れ課業も終了し部屋に戻り、私服に着替える。
「あ〜。」
声に出るほどの欠伸。
まじで災難な一日だった。
(とりあえず、外にでよう。こんな柵の中にずっといるだなんて無理だ。)
そして自然と異島の足は現代社会における最も異世界ファンタジーな世界。秋葉へ向かっていた。
「ウッヒョ〜! やっぱ秋葉は最高だな。街のいたるところに自分の好きなアニメの広告が貼られまくってる! こんな天国他にはないよな〜。今日は裏通りを散策してみるぞ〜」
たくさんのゲーセンや家電製品。アニメ専門店などなど、夢のような世界が形成されている。
しばらく歩いていると…
「ん?」
今まで見たことのない看板があった。
看板にはこう書いてあった。
〜人生に飽きていませんか? 異世界に興味がある方是非一度ご来店を〜
いかにも怪し過ぎる。どうせよくある水系の店だろ(笑) くだらね。
「おーい!」
「え?」
「おーい! ことじま あやとさーん!」
振り返るとそこにはメイド服のようなものを着ている。身長160cmぐらいの細身でサラサラな銀髪ロングヘア。リボンで髪を結んでいる。目はぱっちりで俺の名を呼んでいるその小さな唇は薄いピンク色をしている。
(絶対メイド喫茶の勧誘だろ。いや、まず何で俺の名前知っているんだ。)
「自分ですか?」
「他に誰がいるんですかー?」
「ですよね(笑)」
なんて笑顔なんだ。昔から俺のことを知っていたかのような口調だ。
「今日はお店に来てくれたんですよね?」
「? どの店…ですか?」
「おっと、そうでした。店の看板なのに店の名前書いていませんでしたね。えへへ(笑)」
(可愛いけど全然何言ってんのかわからん。ってか誰なんだ。)
「この看板のお店ですよ!」
さっき見た看板の店だった。
「ここはですね…おっと。そろそろ帰退時間じゃないですか?」
時計を見るともう9:30を回っていた。
「やべっ! てか何で知ってるんだ? とにかく帰ります!」
「何ででしょうね〜(笑) あっ! でも異島さん40分後にはまたこちらへご来店されますよ。ふふっ」
(どういうことだ。とにかく走ろ。)
「よくわからないですけど、さよなら!」
メイド服の女は笑顔で手を振っていた。
「やっべーまじでやばいぞ、あのメイドに会う直前に来たはずなんだけどな…とりあえず早く戻らないと!」
(駅が見えた!よしギリギリ間に合いそうだ。)
「JR山都線では現在人身事故の為ダイヤを見合わせております。大変申し訳ありません。繰り返します現在山都〜」
(おいおいまじかよ。本格的にやばいやつじゃないかよ…タクシー使うしかないか…)
再び走ってタクシー乗り場にいく。
「はぁ…はぁ…」
(うっわぁ、めっちゃ並んでるやん…)
タクシー乗り場にはの行列が出来ていた。
(走っているタクシーを捕まえた方が早そうだな。)
その時たまたま目の前にタクシーが止まった。
「お兄さん! 乗んな!お困りでしょう??」
「おおー!!めっちゃナイスタイミングです!」
「駐屯地まで送りますよ!」
「ありがとうございます。助かりました。」
何かおかしい。
(俺目的地言ったけ?)
タクシー運転士は思いっきりアクセスを踏み込み軽快にハンドルを切っていく。信号が赤になりタクシーが止まった。遠くからサイレンの音が聞こえる。同時に、反対車線から信号無視をして爆走している車がこちらへ向かって来ている。
「お客さん。これやばいっす。これやばいっす!! 突っ込んで来ますよあれ!!」
「おいおいおいおい! まじかよまじかよ!」
次の瞬間。
ガッッッシャーンッッ!!!!!
「あれ…身体が動かない…背中が熱い…意識が遠のいてゆく…気が…」
視界が暗くなっていった。
(ッ!! 眩しい。)
視界がボヤけてよく見えていない
(…なんだこの柔らかくて甘い香りがする枕は)
視界が鮮明になり始め枕の延長が見え始めた。
(…膝が見え…る。てことは膝枕か…。居心地の良い夢だな…)
「そうですか。それは良かったです。でもこれ現実なんですよっ!」
(あぁ…そうなんだ…なんか聞き覚えのある声だ…)
意識が徐々に回復しだし我に戻る。
「ええええええ?!!!」
驚きを隠せず飛び起きる。
「うわっっ! いきなり大声出すからびっくりしちゃいましたよ〜(笑)」
「いやいやびっくりしちゃいましたよ〜じゃないですよ!」
(さっき秋葉にいた女の人だ。この人の膝枕…かぁ〜良き思い出になった。)
「エヘッ」
「って違う違う! あれ、そういえば俺あの時…」
交通事故を鮮明に思い出した。
(あの後どうなったんだ。全く記憶が…)
「ないんですよね!」
(ビクッ!)
「俺の心の声聞こえるんですか?」
「そんなの当たり前ですよー! だって私神ですから!」
(やべ。事故のせいで頭おかしくなったかも。)
「失礼な。あなたが今ここにいるのは死後の世界なんですよ?」
(うわっ心の声聞こえてるんだったっけ。ていうかこういう死んだ後の異世界ファンタジーアニメ結構好きだったなー)
「だーかーら。それも全部聞こえてますよ?(笑)」
(ハッ!)
「ははは…そうでしたね。で、ここは死後の世界なんですね。」
「お〜さすが異世界ファンタジーアニメ好きな異島さんは飲み込みが早いですね〜。でも、正確には違います。死後の直前ってのが正しいですかね? ここはポーズステーションという場所です!」
「ポーズステーション? ポーズってあのゲームとかに出てくるやつですか?」
「その通りです! つまりここはあなたの魂が完全に消滅する前に今と異なった世界で生きるか、それとも無になってお星様の栄養となるかのどちらかを選択する場所になります。まーゲームで言うと死にかけた瞬間にポーズ画面で止めると言ったところでしょうか。まぁ 異島さんの場合は死んでいるんで、魂が消えかけてる最中といった状況です。」
「なるほど。異世界に行きます。」
「決断早っ!! まあわかりきっていたことですけどねー。」
「え?」
「あっ申し遅れました。私はミアネス。ミアネス ティアと申します。これでも一応神です。」
「…よろしくお願いします。」
「あなたが異世界に行きたいと思い始めた頃から観察していました。さぞ異世界に行きたいようですね(笑)」
「まぁ、現実世界がつまらなくて、これなら死んでも良いかなーとかふと思っちゃってたりしてたんです。」
「それも知ってます。なので先ほどの事故は私が計画したものです!エヘッ」
(こいつ可愛い顔して怖いこと普通に話してる…)
「…エヘッ 聞こえてますよ。」
「すみません!!」
(完全に忘れてた。もう何も考えないようにしよ…)
「エッヘン! とりあえず異世界に行く準備は整っているのですぐにでもいってもらいたいところなのですが、何かあなたにスキルつけなければならないんですが、何が良いですか?」
「うーん。言語能力が欲しいですかね。異世界だと読み書きできないと思うので…」
「承知しました! 」
「ピロリン!」
では付与しといたので第2の人生楽しんで来てください!
自分の世界観を創りたくて書き始めました。実際に自分の創造に時間をかける事が厳しいので結構グダグダになってしまいました。面白い作品を作れるようになりたいです。いろんな方からのアドバイス等を貰いたく思っています。