表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/42

3、助けてくれた人

「………ん」

私はゆっくりと目をあけた。まだ、頭が少し痛む。体を起こすと、私は所は大きな畳間にいることがわかった。花がいけられていたり、壁に水墨画がはってあったりと、なかなか綺麗なところだ。襖の隙間から漏れているの光が畳を温かく照らしている。

「けど、私はなんでこんなところにいるんだっけ……」

まず、頭に浮かんだのは緑色のカップラーメン。次に、赤い鳥居とあやかしの世界という言葉。それから、狐さん。 あ、そうだ。襲われたんだ……。あれ?でも、それからはぷっつりと記憶がない。

「あ、起きた?」

ふいに可愛らしい男の子の声がして、私は声の主を探した。

「あのっ……!」

気がつくと、目の前には同世代ぐらいの男の子が立っていた。ふさふさな癖っ毛の白い髪にくりくりと小動物のような茶色の目。えくぼのある可愛らしい口で男の子は優しく笑っていた。

か、かわいい。癒される。

あれ?ということは……。

「あの、助けてくれて、ありがとうございました」

「ああ」

男の子はにっこりと笑った。

「お礼は僕じゃなくて……」

男の子がいいかけたとき、スッと誰かが入ってきた。その人は、なんとも不思議な男の人だった。同世代ぐらいなんだけど……。

真っ青でストレートな髪。金色に妖しく光る目。鼻筋の綺麗な鼻。小さな口。小さな頭。

絶世の美男だ。さっきのと男の子とこの人が並ぶと、なんとこの世の中、不公平なんだと嘆きたくなる。

「起きたのか」

「ああ、うん!」

その人の問いかけに、男の子は楽しそうに答えた。

「元気そうだな」

その人は眉ひとつ動かさずに言った。なんか、怖そうな人だ。

「あ、はい。助けてくれて、ありがとうございました」

「ああ」

軽くその人は受け流した。

「……あ、そういえば自己紹介をしてなかったね」

男の子はポンッと手を打った。

「僕の名前はハクト」

ハクトはそういってにこりと笑うと、クイクイとその人の袖を引っ張って促した。その人が面倒くさそうな顔をする。

「俺はセイだ」

セイもハクトも珍しい名前だ。

私はハクトの期待した眼差しを感じて、口を開いた。

「私は武井朱雀。高校生です」

「よろしくね」

ハクトがふんわりと笑った。

私も、よろしくね、と言った。

「けど、どうして私、こんな世界に……?」

普通に自己紹介してしまったが、思い出してみれば、ここに私がいるのは異常なことだ。

「あー……、えっと、それはね……」

言葉を濁すハクト。なにか、知っているのかも知れない。

「なに?それはね、の続きは?」

「あー、うん。えっと……」

「知らん」

ハクトの言葉を遮るように、セイが言葉を重ねた。

「知らんって……、今、ハクトは……」

「知らん。知らんといったら知らんのだ」

口を真一文字にすると、セイは答える気ないとでも言いたげにそっぽを向いた。

「ハクトー」

「あはは、ごめん、ね?」

ハクトにすがりつくと、困ったように笑われてそれ以上踏み込めなくなった。

「じゃあさ、さっき、私、襲われたんだけど、それってどうして?」

「ああ……」

ハクトが困ったように笑った。セイは少し迷ってから説明した。これは答えてくれるらしい。

「まず、ここはあやかしの世界だ。だからいろんな妖怪がいる。朱雀を襲った狐は雪目(ゆきめ)という狐で、まあ、いろいろなやつがいるんだ」

あれ?何となく、はぐらかされている?

私は一瞬そう思ったが、次の疑問を口にした。

「それじゃあ、あなたたちは、どういう方たちなの?えっと……、種類?」

「ああ……。我々は、ただの人だ。たまにいるんだ、そういうやつが」

へえ、そうなんだ。

「けれど……」

セイは、ふっと厳しい表情をした。

「外で軽々しく自分の名を名乗ってはいけない。名前を教えることで、襲ってくることもあるからな」

あ、だから、襲われたんだ。

あれ、でも、あのとき、あの狐さんは私を探していて、名前を聞いたとたん、敵扱いした気が……?

気のせいだったかな……。

「……そうだな、そなたは朱雀の朱からとって、シュウと呼ぼう」

シュウか。なんか、かっこいい。

あれ?でも。

私は首をかしげた。

なんで、私の名前の漢字を知ってるの?

「あ、でも、このお屋敷のなかなら、名前で読んでもいいんだ」

そうなんだ。あれ?そういえば……。

「ここって?どなたのお屋敷なの?」

「ここは、俺とハクトが住んでる屋敷だ。ああ、あと、仕えの者も住んでるな」

凄い、お金持ち。

「ところで、朱雀ちゃん、そんなかっこじゃ、目立つから、着物とか買いにいこうか」

見てみれば、まだ、制服のままだった。そっか、着物を着なきゃいけないものね。

「あ、でも、私、お金を持っていない……」「そのくらい、我々が出す」

「あ、ありがとう」

ハクトはよいしょっと立ち上がった。

「それじゃあ、朱雀ちゃんがここに来たなれそれを聞きながら、買い物に行きますか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ