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21、表裏一体

体のどこも痛くない。

血の温もりも臭いもない。

瞼が自由に開きそうだったから、私はそっと目を開いた。

見えたのは、冷たい床。高い天井。出口のない壁。

そして、驚いた表情で固まった雪目。

雪目は私が起きたのを一瞥すると、素早く飛び上がって、戦闘の態勢をとった。

「なんで、生きてるっ!?」

明らかに動揺している雪目。

私はそっと自分の体の確認をした。

傷は、消えている。

骨も、痛くない。

戦ったことが嘘のようだった。

でも、ひとつだけ、変わったことがあった。

それは、今まで感じたことのないほどにみなぎるなにか。

これが、決まり字の力……っ!

これが、朱雀の力!

今なら戦える!

勝てる!

「雪目っ!!!!!!」

右手を突き出し、力を集める。

熱くなる右手。

激しい突風。

雪目も負けずに応戦する。

「雪目っ!やっぱりあなたは間違っているっ!」

「っ!そんな、訳っ!」

雪目は私の力に押されていた。

「確かに人間は嘘をつく!けど!」

「っはっ!くっ……っ!」

苦しみに表情が歪む雪目。

「支えて、支え合って生きていける素敵な生き物なんだよっ!」

「はっ、は……っ!に、んっ、げん、っは!、なん、でっ……!」

耐えきれなくなった雪目は床に倒れこんだ。

「あん、た……っ、なん……!かっ……!は……っはっ……!」

「雪目、決着をつけるときがきたみたいだね」

静かな空間に響く雪目の喘ぎ声と私の声。

「ごめん、雪目」

静かに雪目の身体の上に手をかざす。

右手に集まる全身の力。

「……さようなら」

力をゆっくりと出す。

もう意識が朦朧とするのか、雪目は目を閉じていた。

私の力が雪目の身体に触れる直前、

「っ!?」

右手に受ける衝撃。

右手に刺さった、針。

それが、私の右手を麻痺させていた。

「……豹変したか、朱雀」

「……っ!」

その冷たい声には聞き覚えがあった。

「萠埜っ、雪!」

どう、してっ!

冷たい萠埜雪の瞳。

「ふん、説明する必要もないわ。わっちはお前を殺すために現れただけだからなぁ」

「っ!」

……そうか、本当の敗者は、私、だったんだ。

私はなんて、馬鹿だったのだろう。

「……おかあ、さん……?」

弱々しい声。

今にも折れそうな声。

声の主は、雪目、だった。

「雪目!!」

萠埜雪 が血相を変える。

「お前……っ!!なんて……っ、ことを!!」

雪目の母親は……、萠埜雪……!?

「許さぬっ!!!!」

怒りに燃える母の瞳。

目の端に萠埜雪の毒針が見える。

ごめん、柴江さん、私、やっぱり……。


勝てなかった、みたい。


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