14、愛の在り方
「……えーーっ!?」
小絵巳さんの口から出てきたことに私は声をあげた。
「こっこっこれ、ね、禰霧なんですかっ!?」
「わー、禰霧じゃない!!禰霧さんとよべっ!!」
信じられないことだが、その偉そうな態度は禰霧そのものだった。
「でも、どうして………」
「ほら、この前、おシュウちゃんたちが麒麟様の所に話を聞きに言ったじゃない?その時に、いつまでもハクトに憑いていかれると困るからって、鼠に異動してくださったのよ」
「ふん。俺様的にはもっと、強くて大きな動物がよかったんだけどな」
「あら、魂があるだけいいじゃない」
「まあな」
ほんわかと微笑む小絵巳さんと少し嬉しそうに話す禰霧は種族は違えども、本当に恋人のようだった。
けど……。
二人は、もう、抱き締めあったり、キスしたり出来ないんだよね。
辛くないのかな、苦しくないのかな。
それに……。
薄々分かってたけど、あくまでネズミの禰霧は仮の姿。だから、いずれかいなくなっちゃうんだよね。それなら……。
「……朱雀」
耳元で低い声で囁かれ、思わず息を飲む。しかしそれがセイだと分かると肩のちからが抜けた。
「あの二人はあれで幸せなんだ」
っ……。
「今はあのままでいいんだ。確かに辛い。だが、大切なのは心だ。二人は心で繋がっている。触れ合えなくても、幸せなんだ。もし、禰霧がいなくなる日がきたとしても、小絵巳さんは笑って見送れると思う」
ゆっくりと、セイの言葉が身に染みる。
「うん………、うん。そうだよね。そうだよね!」
思わず嬉しくなって顔を勢いよく上げる。
目元が柔らかくなって、優しく微笑んでいるセイが目にはいる。
すると……。
セイは口を真一文字に結んで、
「え?」
顔を背けた。
「ええ、え、セイ?」
「いっ、いや」
顔を片手で押さえたセイの頬や耳をよくみると真っ赤に染まっている。
「どうしたの?」
「いや、あれだ。あれ……」
セイはもごもごと呟くと、顔から手を離して体を私の方に向けた。
「……悪い。顔が近くて、動揺した」
恥ずかしげに反らしている目線。いじけたように結ばれた口元。
いつもは大人っぽいセイの珍しい表情だった。
か、可愛い……。
「ふふふ」
「笑うな」
思わず笑った私を睨むセイが、また可愛い。
「セイって、意外と照れ屋だったりして」
「そ、そんなことはない」
「嘘だ、だって……」
「ほらほら、二人とも。そろそろ着替え終わるところだから、ハクトがここにくるわよ」
え、ハクトが!?
禰霧がとりついてからずっと会っていなかったハクトにやっと会えると知り、心が興奮する。
「ほら、ハクトの足音が……」
ぱたぱたという足音と共に。
「……あーっ!!す、ざ、く、ちゃーーんっ!!」
「わふっ」
ハクトが思いっきり抱きついてくる。
「久しぶり!」
「ひ、久しぶり」
その明るい声に、
ああ、ハクトが帰ってきたんだと、私は微笑んだ。




