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9、明かされた真実

質素だけど、高級だと分かる畳の部屋にセイと禰霧と座ると、麒麟様の合図で仕えの人が頭を下げてから、退室した。

「どこから話そうか」

眉間に皺を寄せると、麒麟様はふぅと溜め息をついた。

「青竜はどこまで話したんだ」

「はっ。なにも話しておりません。神のあり方も、昔のことも」

「そうか。それなら神のあり方から話すか」

麒麟様はじっと私の目を真っ直ぐに見た。









まず、神には『代』というものがある。主に、前代が死んだら、次の代を選ぶ。その代にも、決まった家系があるのだ。麒麟は我々、近衛家(このえ)、青竜は枇榔家(びろう)、白虎は鷹左右(たかそう)、玄武は七木屋(ななきや)、とな。だが、朱雀は少々面倒臭くなっていて、代々女なため、二つの家系が交互に選んできたんだ。それは、武井家と橘家だ。そして、今代の神、我々は丁度百代目に当たる、おめでたい代なのだ。

そして、我々、百代目を決めるときに争いが起きたのだ。とくに朱雀を決めるときにはな。元々、私、(きん)と柴江、それから、橘櫻紗己(たちばなさくらざき)は幼馴染みだったんだ。私と柴江は神になることが決定していた。だからと言って、櫻紗己は私たちを恨むことはなかった。むしろ、自由に生きられるって喜んでいた。そして、少しずつ大人になるにつれて、私と柴江は互いに惹かれあった。けれど、それは決して許されない恋だった。近衛家と武井家の血が入り交じりことは絶対にあってはならないことだった。儂たちは引き裂かれ、柴江は人間と結婚し、儂も紹介された人と結婚し、櫻紗己も結婚した。だが、儂は罪を犯した罰として、従兄弟が99代目となり、儂が100代目になった。それから時がたって、儂はある噂を聞いた。南の方で、夜暗並組という怪しい組が勃発したという噂だ。そしてそのリーダーを、暗姫という、と聞いた。儂は驚いた。昔、幼馴染み三人組で、ごっこ遊びをしていたときに、櫻紗己は必ず、暗姫という役をしていたからだ。儂はすぐに夜暗並組に乗り込んでいった。勿論、柴江も共に。櫻紗己の姿は変わり果てていた。視線は殺意がこもっていて、眉間には深く皺が彫り込まれていた。櫻紗己は『何できたんだ』と儂たちに詰めよった。『当たり前だ、なにをしているのだ、櫻紗己。正気を取り戻せ』と儂たちは返した。『ふざけるな』櫻紗己は答えて、ギロリと儂たちを睨み付けた。『私がどれだけ惨めな思いをしたと思っているのだ』そのときはよくわからなかったが、今となってはその気持ちがよく分かる。櫻紗己はずっと我慢していたのだ。自分だけ神ではなく、普通の人間として産まれてきたことを。しかし、その憎しみや嫉妬は遂に耐えきれなくなり、娘を産むと、夜暗並組をつくることを反対する夫を殺して、南の地へきた。そして、夫から吸収した妖力をつかい、夜暗並組を大きくしていった。そして、儂たちに復讐をしようとした。しかし、神である柴江と儂の力には及ばず、櫻紗己の力は封印された。そんなときに朱雀、お前が産まれた。本来ならその橘家の娘が神になるのだが、櫻紗己のこともあったため、この武井家の娘を朱雀にすることを決め、名前も朱雀、と名付けた。予想通り、橘家は怒りに燃えた。しかし、そこからが予想外だった。橘家と夜暗並組の力は予想以上に大きく、戦争を持ち出してきた。我々は予想外の出来事に戸惑いながらも、応戦した。奴等の目的はただひとつ、お前を殺すことだけだった。やがて戦争は大きくなっていったが、我々の勝利は目に見えていた。しかし、また予想外の出来事が起きた。櫻紗己が力を持ったのだ。櫻紗己は憎しみに突き動かされていた。憎しみの力は膨大だった。人間界で過ごしていた柴江はすでに歳をとっていた。しかし、儂は指揮をとらなければならなかったため、柴江と櫻紗己は一対一で戦った。もっとも、二人は五分五分に戦った。そして、二人の争いも下火になったとき、柴江はあることを起こした。朱雀、お前を守りたい一心で、自分の命と引き換えに櫻紗己を封印したんだ。南の地から出れぬように。戦争は我々の勝利だった。しかし、櫻紗己は次の代の朱雀に復讐をすると誓って消えた。だから、お前は世間で『呪われた百代目』と呼ばれるようになった。そして、柴江の遺言で、戦争が終わった日の十五年後にお前が現れるように妖術をかけた。そして、お前は現れたのだ。朱雀よ。お前は、この世にとっても、我々四神にとっても重大な神であるのだ。











サラリとした風が、私の髪を吹き流していった。

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