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RPG風の世界で、色々みなさん頑張ってる物語

調整中  -”呪われました”の16作目-

作者: 茶屋ノ壽

 ここは、とある辺境の”お山”です。黒く巨大な竜の人であるヤミさん(10万と38歳、独身)の洞窟です。ヤミさんは、”お山”の鍛冶屋さんにして、常識外れの能力をもつ発明家です。いえ、”お山”の住人は全て常識を越えた所に自身の能力を据えているので、目立つこともないのですが。

 ヤミさんの洞窟には、広い空間がいくつもあります。ここはそのひとつで、部屋の端から端まで200歩ほどの、ほぼ正方形の空間です。縦方向には平均的な人の身長の30倍ほどの高さです。床や壁は白っぽい材質の石ではない何かのパネルのようなもので、覆われています。ヤミさんはその部屋の一辺に座っています。

「はいはい、それではみなさま始めますよー」大きな声が、広い部屋に響きます。その言葉を聞いているのは、生来の呪いの副作用によって、非常識な身体、精神スペックを誇る、”呪われ娘”こと美少女シルフィさん。大きな黒い竜の人に、物理的に引っ掛けられて、天界から堕ちてきました元天使の”堕天使”さんのエルさん。年期が数十世紀に及ぶ実力派の神主さんが基礎を作り上げ、国の創世に関わった二柱の神様の力を注ぎ込まれた、自律タイプの”式神”の四季さんの、三人です。……かるく流していますが、それぞれ世界の行く末を左右しかねない実力の持ち主さんたちです。

 三人は白い部屋に等間隔で立っています。その身にはとくに何も武装は装備していません。と、黒い竜のヤミさんが手元の機器を操作すると、3人の周囲の様子が変化します。青々とした草原に立つ、三人です。装備も変化しています。

 ”ガンマン”のシルフィさんは、幅広の帽子テンガロンハットを、銀色の髪の毛の上にちょこんと乗せて、鋲撃ちされた、青色のズボンを細い脚にはいて、茶色のチョッキで薄い胸を覆い、左右の腰に、拳銃を収めた、ホルスターを吊るしています。

 ”堕天使”のエルさんは、不思議な光沢をしている金属?製の薄い鎧を、体の要所要所に装備し、銀色のマフラーをたなびかせています。手には、長く、装飾過多の迫力のある槍を構えています。金色の髪にはティアラのような防具が装備されています。

 ”式神”の四季さんは、前で合わせるタイプの白い上着の着物を、帯でとめていて、下半身はゆったりした、青い色の、筒のようなズボンで足を隠しています。手には、長めの片刃の直刀を両手で構えています。黒い長めの髪を、金属で補強したバンダナのようなものでまとめています。

「じゃあ、まずは、自由に動いてみてねー」幻の草原に、姿を消した、黒い竜の人のヤミさんの声が響きます。3人は、かるくうなずくと、それぞれ別の方向へと移動しはじめます。シルフィさんは、右手方向へ、四季さんはそれとは逆に左手方向へ、エルさんは、黒い翼を広げて、真上へ飛んでいきます。すると、元あった部屋の広さを越えても、動き続けられることがわかります。もちろん離れていった他の人の姿も把握できます。

「なんだか奇妙な感じなのです」シルフィさんが、ちいさくかわいく首をひねります。

「きっちり、地平線まで見渡せますね。シルフィさんと、四季さんの位置情報も違和感ないですね」エルさんは、軽く黒い羽根をはばたかせながら言います。

「驚愕の技術力と表現するに吝かないであります。さすがなのでございます」感心することしかりの、四季さんです。

「よしよし、”見えない手”を利用した、simulatorの調子は良いようですね」ヤミさんが満足そうな声で話ます。

「全力で移動しているように見えますけど、本当の位置はほとんど変化ないのですよね?」シルフィさんが、軽く前後にステップを踏みながら、問いかけました。

「その通りです、移動しようとする動きに合わせて、周囲の『すべて』を”見えない手”で動かしているのです。作用に対する反作用を的確に戻しているのですよ」ちょっと自慢するように竜の発明家は言います。

「お互いの間合いを離すと、距離もとれて、遠くに相手がみえるようになりますね。これは幻影で表現しているのですね」と黒い翼を動かしながら、上空へと移動したエルさんが言います。

「移動情報から、逆算して、リアルに見えるように空間へ、幻影を投影しているのです、もちろんもともとの姿は幻影で隠しつつですね。同時に周囲の風景も変化させていますから、ちょっと違和感はないですよ」

「どれほどの、演算能力が必要になるのか、試算いたしますと、空恐ろしくなる次第でございます」”刀”の型を数種類試しつつ、その動きの違和感のないことに驚きながら、黒髪の美少年、四季さんは言います。

「さて、それでは、実験を次の段階へすすめますねー、中央にでますよー」ヤミさんが軽く言うと、幻影で作られた草原の中央に、大きな黒い物体が出現します。巨大な黒竜の人、ヤミさんその人です。

 あんぎゃー、と吠えて、巨大な怪物のような挙動をして、周囲に精神的な圧力をふりまきます。

「1分の1サイズの僕と、模擬戦といきましょか!」部屋全体に、ヤミさんのアナウンスが流れます。

「本気でいっていい?」シルフィさんが、かわいくたずねます。

「どこまで私の”力”が再現できるのか少し楽しみですね」にこりと不敵に笑う堕天使さんです。

「卑小な身でありますが、全力を尽くさせていただきます」ちゃき、っと、刀を構える四季さんです。

「……ある程度、手加減お願いします。装置が壊れそうになったら、また言いますので~」ちょっと冷や汗をかきながら、ヤミさんは言いました。


 ***


 黒い竜の巨体に、シルフィさんの”拳銃”から雨あられのように光弾が、降り注ぎます。その射撃を援護に、堕天使のエルさんが、黒い翼をはためかせて高速軌道からの槍の一撃ランスチャージです。さらに、巨体の死角を取りつつ、刀で足の指に切り付けて竜の体のバランスを崩す四季さんもいます。

「通常の攻撃に対しては、うまく動いているようですね」あんぎゃー、と吠えている、中央の黒い巨大な竜とは別のところから、ヤミさんのアナウンスが響きます。「じゃあ、”スキル”とかいってみましょうか?」

「了解いたしました。それでは、様式を”春”に変化いたします。……起動式を取得、術式容量確保、大規模生成術式、起動いたします」宣言とともに大地が盛り上がり、巨大な竜の人を越えるほどの、巨大な巨人が形作られます。

「……術式名”だいだらぼっち”でございます。些細な術式でございますが、一手ご指南いただきたく」ぺこりと礼をしつつ、巨人を黒い巨竜へと突っ込ませる、やけに色気がました黒髪の美少年です。

「うわあ、地形が変わるほどの生成術ですか、きっちり生まれた後の穴まで再現してあるところが、すごいですね」感心しながら、巨大怪獣と、巨人の格闘戦を見ているエルさんです。

「ちょっと、負荷がかかってきてますが、ああ、っと。いえ、まだ大丈夫ですかね?」ちょっとあわてながら、いろいろ機器を、舞台の裏側で操っているヤミさんです。

「それでは、次は私ですね」堕天使のエルさんが、身振り手振りとともに、攻撃の準備をし始めます。風が、舞っていきます。最初は小さな渦、次にそれが長く太く大きくなっていきます。規模を増しながら、さらにそれらが分かれて増えます、1つが2つ、2つが4つ、4つが8つに。そして、それぞれが大竜巻にまで成長したのちに……

「”てんぺすと(Tempest)”」というエルさんの声とともに、巨竜へと襲い掛かります。あんぎゃーという悲鳴?とともに、間合いをはずした巨人と入れ替わるように襲い掛かってきた巨大竜巻×8に翻弄される黒い竜の人でございます。

「ちょっ、おまっ!……いえ、まだまだです、大丈夫、いける、いける……かなぁ?」範囲外に飛び出そうとする力を打消し、必死に術式を再現しようと、細かく調整を入れていくヤミさんです。その手の動きの素早さは、まるで手が6本に増えたようです。

「では、わたしもいきますね」じゃかん、じゃかんと、服のあちらこちらから、部品をとりだして、巨大な”銃”を組み立てていく”ガンマン”のシルフィさんです。くみあがっていくそれは、すでに”銃”という大きさではなく、”砲”というにふさわしいものでございました。

「うわっ、ちょっとまって、今容量を拡大するから……、よし、これで”いくる”……はず、だと、いいなあぁ」

「じゃあ、撃ちますねー」

「よしこい!……いや、ちょっとまって~」

 制止の言葉は少し間に合いませんでした、轟音が響きわたり、巨大な光の砲弾が『あんぎゃー』と悲鳴を上げている巨大な竜の人へと、迫ります。ちょっと、処理が間に合っていないのか、妙にゆっくり進んでいきます。

 着弾、そして、大爆発のエフェクトです、なかなか見事な演出ではありますが、さすがに、少々コマ落ちをしているような……。ぎりぎりな感じでございました。

 爆発の後には、黒焦げになりつつも、げふって、黒い息を吐きつつも、いまだ健在な黒い巨大な竜の人が雄々しく?立っていました。『あ、あんぎゃー?』吠え声が何か戸惑っておられますが。

「……よし!なんとか耐えきった!すごいぞ、僕、すごいぞこのsimulatorと制御システムと、超高性能電子計算機!さすが僕!」すこし上ずった声で自画自賛する、”お山”屈指の発明家さんでありました。


「面白そうなことやってるじゃねーか、俺もまぜろや!」とその時、傍若無人な声とともに、新キャラ乱入です。ダイレクトエントリーなのです。突如として、何もない空間に作られたドアから、ひとりの小柄な青年が、仮想の草原に出現します。

 同時に巨大な竜の人に向かって、腰の”銃”を抜き打ちで放ちます。その銃弾は、着弾の後に音が聞こえてきました。音速を軽く超える速さで矢継ぎ早に銃弾が撃ち込まれていきます。両手それぞれに一丁ずつ、リボルバータイプの”拳銃”を構え、超速で撃ちきるたびに、素早く装填しなおし、切れ目なく弾丸な雨が降り注ぎます。

 それは、まさに、銃弾で形作られた壁でありました。

「おお、師匠なのです。さすがの早打ちなのです」崇拝する”ガンマン”の、お師匠様の登場と、相変わらずのその美技に感激するシルフィさんなのです。

「うわわ、ちょっとまてってビリー!さすがに無理無理!」そういいつつも、必死でsimulatorを操作するヤミさんですが……、これは確かに無理じゃないでしょうか?なんだか、機械から黒い煙が出ているよーな。


 ぶつん


 大きな破滅の音が、周囲に響き渡り、部屋は暗闇に包まれます。

 そして、1拍おいて非常用の電源?に切り替わり、薄闇くらいの明かりがともります。


「ビリー~」恨みがましい声を上げているのは、竜のヤミさんです。

「い、意外に軟かったな、ちょっと本気を出しすぎたか?」あさっての方向を向いているのは、シルフィさんの師匠にして、世界最高の”ガンマン”である、小柄で陽気な好青年?のビリーさんです。

「言いたいことは、それだけかな?ちょっと上までいこうか、な?」

「お、いいぞ、少し物足りない気分だったし」けろりと言葉を返すビリーさんです。

「そういう反応!僕怒ってるんだけどね!」

「いーじゃないか、だいたい3人ともかなり手加減をしてたのに、ぎりぎりだったじゃんこのsimulator、どちらにしろ、まだ改良の余地があるって」

「そうだとは思うけど、君に言われたくないよ、感情的に!」がおがおと吠えながら、ヤミさんは言います。

「わたくしとしては手加減とかしてはおりませんよ、竜のお方」四季さんが、フォローを入れます。

「……ありがとう、でも、様式の高速変化と、それによる多重攻撃方法とか、どちらにせよ対応できなかったような気がする……うん、スペックを数世代くらい上げることにしよう」軽く答えるヤミさんですが、ええと、容量を拡大するわけでなくて、進化させる方向で進ませるところに、なんとも非常識な才能を感じさせられるしだいであるのです。

「治癒とか治療系統のテストもしてみたいですね」エルさんが言います。

「この面子でだれかけがをするとか、あまり想像できないのですけどね?まあ、確かにそこらへんも要確認ですねー」メモを取る巨大な竜の人であります。メモも大きいですね。

「とりあえず、ここからでて、一息いれましょう、お茶いれますよ」シルフィさんは、大好きな師匠にまとわりつきながら、かわいく言いました。「で、いろいろ、そこで相談しましょうね?師匠はともかく、私の攻撃ぐらいで不具合がでるのは、問題だとおもうのですよ」

 いえいえ、シルフィさんの攻撃力も、非常識なのですよ。彼女は相変わらず気が付いていませんが、基準がおかしいのです。

「……そうですね、まだまだ調整が必要ですね~」ヤミさんは頭をかきながら、みんなとsimulator room を後にしたのでありました。


 後日、割とすぐに、simulator room の出入り口に『稼働中は乱入しないこと』という立札が立っていました。

 さらに、後日、大幅にパワーアップしたsimulatorに、はっちゃけた一同が、またやらかしまして……、竜の人のヤミさんがさらなるsimulatorの進化を決意したのは、ご愛嬌でございました。


 遊びの延長で、ほとんど新しい世界の創造と変わらないことをしてのけていることに、皆様気が付いておられないくらい、平和な”お山”の日常でございました。


 ---ひかりあれ?って言った方がよいのかな?--- 


 ”お山”の”鍛冶屋”にして非常識なほどの”発明家”である、ヤミさんの呟きでした。




 どっとはらい






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