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探索者は  作者: 小町通
5/11

人間

気が気でなかった。

あのあと、ゆっくり休めと言われたが、いつ取って食われるか分からない現状では眠れなかった。

というか、もう既にかなり眠りについていたようだ。


ふと、気付く。

俺は奴の住みかにつれられてきたようだ。


窓を見れば、木々が生い茂っているのが見えるので、先ほどの森は抜けていないようだ。

中は、ここ、そして三つの扉と申し訳ない程度の流し台だけだった。

方角は分からないが、窓を中心とすると、窓の左側に二部屋、右側に一部屋と流し台、そしてソファーの後ろに出入口だ。


そして、俺が今かけているソファーは窓側を向いていた。


ちなみに、左の二部屋のドアは色が違う。

片方は、この家の材質に合わせた、木目柄だったが。

もう片方は、どことなく血液を思わせる、くどい赤色だった。

不気味で気味が悪い。


一息着くと、ソファーにごろんと横になる。

部屋は空いていた、木目柄の部屋だ。

しかし、あまりその部屋に泊まるのはいただけない。

なんせ許可をとったわけでも無しに使うのは気が引けるし。

奴を信頼したわけではないのだ。


気休めでも出口に近いほうで寝ることにした。



「能力、か」


天井を見つめながら、呟いた。

それはそれは惨めな気分だった、なんだか自分をその能力とやらに、全て持っていかれたような気分だ。


「チッ」


小さく舌打ちをした、横目で赤のドアを見ながら。





眠れない、苛立ちが募る。

無駄で憂鬱なことが考えをよぎる。


人間というものを手に入れた、それは素晴らしい事だ。

ただ、その人間というものが、ここまでの体験をしなければ手に入れることが出来ないのかは、はだはだ疑問だ。


確かに、外の世界というのか、そちらでは持っていなかったような気がする。

どうにかなる、どうなっても大丈夫だ、最後はなるようになる。

そう言う考えも人間らしいといえばらしい。


だが、それしか無かったのだ、それ以外が無かったのだ。

泥をすすってでも生きる、大切なものを守りたい、欲しいものが欲しい。

それらの人間らしさを追い求めてはいなかったのだ。


それでは、面白くも無いことなど当然だった。

ああ、今考えればとても馬鹿らしい、いやになる。


明日にでも、外へ帰ろう。

ここが一寸の狂いもなく、幻想郷ならば、博麗神社から外へ出るのも可能なのではないか。


それにはまず、奴を巻かなくては。


また違う、人間というものを手に入れ、ほくそ笑むのであった。


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