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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
死霊魔哭斬だと……? byアリアパパ
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「王種降臨」part7

一六三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸さんが超反応したところで

 状況を整理しよう


 まず巫女さんの側近は、生贄さんを含めて五名

 いまのところ、火口のんの狙撃に対して有効な策を見出せずにいる


 戦局の鍵を握っているのは巫女さんだ


 火口のんは、投射魔法が届くぎりぎりの線を保ち続けている

 つまり、いつでも離脱できる距離だ

 よほどうまく不意を突かない限り、反撃もままならないだろう


 巫女さんなら、それが出来る

 属性と性質を完全に分離してイメージできる魔法使いだからだ

 その分野にかけては、彼女は特装騎士すら超えている


 しかし戦闘に関しては素人だ

 巫女さんが子狸と羽のひとの身を案じていたのは

 もちろん善意によるものだろうが

 同時に不安の表れでもある


巫女「防御! 防御に専念して! こっちはいいから!」


 とても指揮をとれる精神状態ではない


 その巫女さんに代わって、一時的に側近たちの指揮をとっているのが生贄さんだ

 勇者さんの推論を疑えるほどの余裕がないものだから

 側近A、Bと共に巫女さんの守りを固めている

 火口Bの襲撃を警戒しているのだろう


生贄「良くないでしょ!? 頭! 頭を下げて! おちつきなさいと……!」


 逆転の手札を持っている巫女さんに頼りたくなる気持ちはわかるが

 当の本人は孤立している側近CとDのことで頭がいっぱいだ

 こちらも生贄さんの言葉に耳を貸すほどの余裕がない


 むしろ追い詰められつつある側近CとDのほうが冷静なくらいだ

 自分たちの身を守ることに集中できるからだろう


側近D「あんまり時間かけてらんないよ」


側近C「そうだね。増援があるかも。……ピエトロちゃん! こっちはまだ大丈夫!」


 ピエトロというのは、勇者さんの偽名だ


 火口のんの狙撃は、時間を追うごとに激しさを増している


 いちいち判例を持ち出してもボロが出るだけだから

 おれたちの設定上の能力は一定のルールに基づいている


 その目安になるのが退魔性だ

 

 ポンポコ級の退魔性が相手なら

 撃ち出した触手を空中で曲げるのもありだが

 そうでない場合は直線上にしか撃てないことになっている


 殺到する触手に

 お馬さんたちは速やかに避難を終えている


 巫女さんは……

 自分が何とかしなくてはならないという気持ちはあったのだろう


 けっきょく勇者一行と合流したことで

 いちばん油断したのは

 これまでずっと一味を率いていた彼女に他ならなかった


 だから子狸と羽のひとがいなくなって

 その落差についていけなかったのだ


巫女「……うぅ~! ぐすっ」


 泣いちゃったね

 


一六四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 ……な、泣くことなくね?


 いつも通りじゃん……

 いつもだったら、今頃おれのこと土魔法でしばいてるじゃん……


 お、おれは悪くないよな!?



一六五、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 ……また女の子を泣かせたのか


 タイミングが悪いというか何というか……


 女難の相でも出てるんじゃねーの、お前ら?



一六六、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 ら? いま、お前らって言った?



一六七、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 お前はいつもそうだよ


 子狸が学校でメンズと殴り合ってるときだって

 お前は女の子たちに囲まれていちゃいちゃいちゃいちゃと……



一六八、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 誤解を招くようなこと言わないでくれる!?


 おれにはおれなりの苦労があるんだよ!



一六九、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 子狸さんに謝れ



一七0、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 なんでだよ!?



一七一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 わかっているはずだぞ


 謝れ



一七二、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 ……ごめんなさい



一七三、管理人だよ


 どうしてお前らは

 人間たちと仲良くできないんだ



一七四、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 あれっ、本気で怒ってる!?



一七五、管理人だよ


 怒るよ! そりゃそうだろ!


 おれはっ……!


 もうっ、これっ、このっ……!


 めっじゅぅぅぅっ!



一七六、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん


 会話っ!


 お願いだから会話して下さい!



一七七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 こいつ、巫女さんのこととなると本気で怒るからなぁ……


 なんなの? 好きなの?



一七八、管理人だよ


 知るか! そんなの! おれに訊くな!


 なんか、ぐぁーってなるんだよ!



一七九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 ぐぁーってなった子狸


 一方その頃、側近Cの心強い言葉に頷いた勇者さんが

 狐娘に一声かけてから、地面に片手をついて屈む


勇者「コニタ。二十秒」


狐娘「わかった」


 いや、わからないから


 しかし、どうしたことか

 狐娘の動きが目に見えて変わった


 勇者さんの動揺を誘うために

 火口のんは狐娘も標的に加えるが

 ことごとく盾魔法で弾かれる


 着弾点を読まれているということだ


 狐娘の実力とは考えにくい


 おそらく何らかの手段で

 勇者さんが指示を出しているのだろう


 その勇者さんはと言うと

 聖☆剣を地面に突き立てて

 火口のんの動きをつぶさに観察している


 行動パターンを読もうとしているのか?


 真剣そのものの表情である


 勇者さんはまじめだなぁ……


 まじめ……だなァーッ!



一八0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 庭園の!?



一八一、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 そのとき庭園さんに異変――!



一八二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 誰か! 誰か庭園さんを抑えてぇーっ!



一八三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 いいや、その必要はないぜ


 ふおおおおっ……


 おれレボリューションんんっ!



一八四、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 単独だと!?



一八五、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 庭園のひと(ステルス中)が跳躍する



一八六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 見えるひと!? いたの!?



一八七、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 記念撮影あるところにおれあり

 アリバイを気にしているようでは、王都のひともまだまだだな……


 続けるぜ


 飛び上がった庭園のひとが

 くるくると回りながら四方へと触手を伸ばす


 木漏れ日に照らされて

 落ちた影から

 黒鉄の鎧が飛び出した


 空中で分離した鎧が

 まるで呼応するように

 触手に装着されていく


 はためくマント

 みなぎるガントレット

 きらめくつの


 まびさしの奥で

 赤斜の眼光が激しく明滅した



一八八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 うおおおおっ!


 子狸バスター! 


 アナザーぁっ……


 ぱおーん



一八九、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 ……満足か?



一九0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 うむ……



一九一、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 満足したようである


 レボリューションし終えた子狸バスター・アナザー(ステルス中)が

 腕を組んだままゆっくりと下降してきて

 勇者さんの背後に立つ


 とくに何をするでもない

 おちついたようだな


 じゃ、あとは任せるぜ

 しっかりやれよ



一九二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう。ありがとう、見えるひと

 お前がいなかったら大変なことになっていた……

 恩に着るぜ



一八0、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 一八一から一九二まで

 あとで編集するときにカットな



一八0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 待ってくれ

 羽のひとは、とくべつおれに厳しくないか?



一八0、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん


 いや、そんなことはないと思うぞ?



一八一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 ……そう?


 じゃ、続けるけど……


 火口のんの狙撃に対して

 素晴らしい反応を見せる狐娘

 これなら安心だ

  

 勇者さんは、地面に聖☆剣を突き刺したまま微動だにしない


 よく見れば、半ばまで埋まった刀身が高速で振動している

 死霊魔哭斬とは、また異なる前兆だ


 まさかの新必殺技なのか……?


 おれたちの期待が高まる



一八二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おお……



一八三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 新必殺技なら仕方ないな……



一八四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 ああ。むしろ本望とさえ言える……



一八五、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 ところが、ここで子狸参上


子狸「そこまでだ!」



一八六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 じつに空気が読めないポンポコである


 でも巫女さんは喜んだ


巫女「ぽんぽこっ」


子狸「ポンポコだよっ!」


 おどけるポンポコさんだが

 勇者さんの新必殺技で倒されたい火口のんが

 これの排除に乗り出した


 空中でしなった触手が、子狸のジョーをかすめる

 とっさに避けようとしたのがあだになったようだ


子狸「んぅっ……」


 かくんと子狸のひざが揺れた

 完全に意識が飛んでいる


 十年に一度のベストショットだった


妖精「っ……!」


 羽のひとが嫉妬を禁じ得ないほどの一撃である


 奇跡の瞬間を目撃した全員が硬直した

 勇者さんもびっくりしている


 いや、理由はべつにあるのだが……


火口B「これっ、気をしっかり持たんか!」


 子狸の背中に

 なぜか火口Bが乗っかっていたのだ


 火口Aが、思わずといった感じで叫んだ


火口A「お、親父――!?」


子狸「……はっ」


 子狸さんが現実に復帰しました



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