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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
死霊魔哭斬だと……? byアリアパパ
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「王種降臨」part4

八一、海底洞窟のとるにたらない不定形生物さん


 これまでのあらすじ


 緑のひとの家に向けて出発した勇者一行&巫女一味


 大きいひとのおれアピール、子狸と生贄さんの再会など

 ちょっとしたアクシデントはあったものの

 かつてない豪華メンバーに

 さしものおれたちも手を出しあぐねる


 しかし、そこは長年に渡って騎士団をおちょくり倒してきたお前らである


 ファイブスターズの家の近くには

 原種と呼ばれる、ちょっとスペシャルなおれたちが住みついているらしい

 なお、原種が登場する予定はない


 色とりどりのお前らが出迎えてくれる空中回廊は

 極限まで鍛え上げられた戦士たちのご来場を想定した夢のテーマパークなので

 一見さんはお断りの難易度設定なのである


 ここで原種の登場は早すぎる

 でも遠くからそっと結界を張るくらいなら許される


 結界に囚われた勇者たち


 この結界を突破しない限り、一行に明日はない……!


 こんなとき、いつだって事態を打開してきてくれた勇者さんは

 あんまり結界についてわかってない感じだ!


 どういうことなの、羽のひと!

 教育がなってないんじゃないの?

 次回へ続く!



八二、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 うるさいなぁ……

 表面的なことは教えてあるよ


 ただ、結界の細かい理屈を説明しちゃうと

 じゃあ何で妖精さん(可愛い)は結界を使えるの? っていう話になるだろーが……


 元はと言えば、お前らが妖精の里なんてものをでっち上げたせいだぞ

 歩くのだるいからショートカットしたいとか言い出した誰かさんのおかげで

 気付けばおれは住所不定だよ

 本当ならお花畑に住みたかったのに……

 


八三、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん


 お前は理想が高すぎるんだよ

 世界中のお花が季節を問わず咲き乱れる土地なんて、この世には存在しねーから


 ついでに言うと、その無茶な願望に付き合って

 お花をひとつひとつ丹念にスケッチしたのは

 何を隠そうおれと、庭園のひとだからね


 感謝しなさいよ、まったくもう……



八二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 まあ、どのみち厄介ごとはおれに回ってくるしな


 あまり気にするな



八三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 悲しいことを言うなよ……



八四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 庭園のんの自覚症状が進んだ、一方その頃……


 生贄さんに代わって子狸とのタッグを願い出る羽のひとに

 勇者さんが問いかけた


勇者「どうするつもりなの?」


 黒雲号の頭に乗った羽のひとが振り返って答える


妖精「まずは大まかな規模の特定ですね。それから、結界を上書きして術者を誘き出すつもりです」


 結界は厄介な魔法だ


 人間たちは射程超過を使えないから

 目をつぶって歩けるくらい見慣れた場所でもない限りは

 どこにあるかわからない境目に魔法をぶつけようとしても上滑りしてしまう


 それでも、歩き続ければ、いずれは脱出できる


 ざっくりと要約すると、結界というのは

 入り口と出口の間についたてを設置して迷路を作る魔法だからである


 出口を閉ざそうとすると

 空間をひねったりねじったりしなくてはならないので

 開放レベルが一気に跳ね上がってしまう


 つまり、まったく別の魔法になる


 おれたちは開放レベル6以上の魔法を内緒にしているので

 極力、使わないに越したことはない


 いま羽のひとが提案しているのは

 迷路の上に新しく

 簡単な迷路を作って時間を短縮しようということだ


妖精「ノロくんは生き物の気配に敏感ですから、わたしも安心して作業できます」


 しかし勇者さんは、あまり乗り気ではなさそうだった


勇者「……エニグマの言うように、もしも術者が原種だった場合は?」


 歌人に対してもそうだったように

 勇者さんは他人を苗字で呼ぶことが多い


 羽のひとの答えは簡潔だった


妖精「逃げます。仮に逃げきれなかったとしても、わたしとノロくんの二人なら対話に応じてくれるかもしれません」


 魔軍☆元帥は、バウマフ家の人間をスペアだと言っていた


 つまり魔軍☆元帥の配下にある魔物は

 バウマフ家の血を絶やさないよう命令されている筈だ


 また、妖精と魔物が種族間で対立しているという記録もない


 部隊を二分割するにあたっても

 まずベターな判断である


 巫女一味は、メンバーの全員が子狸を上回る術者と見ていい


 子狸を捕獲される恐れがあるため

 できればこの場にとどまって欲しいと勇者さんは考えているだろう

 

 勇者さん自身には、高い退魔性と聖☆剣がある

 狐娘は他者の敵意に敏感だ

 この二人のコンビなら、たとえ巫女さん相手でも遅れをとることはあるまい

 至近距離ならなおさらだ


 付け加えて言うなら、巫女さんの標的はおそらく子狸である

 子狸以外はおまけなのだ

 勇者さんは詳しい内部事情を知らないだろうから

 さすがにそこまでは読めないだろうが……


 いずれにせよ、羽のひとの案はそう悪くない


 他に代案もないのだろう

 勇者さんは肯いた


勇者「……いざとなったら、一人でも逃げてきなさい」


妖精「それは、嫌! です」


 羽のひとは、いーっと歯を剥いてから、にこっと笑った

 背中の羽が朝日に透けて、きらきらと輝いて見えた


 そう答えるとわかっていたのだろう

 勇者さんは羽のひとを咎めなかった

 代わりに、腰にしがみ付いている狐娘に問う


勇者「コニタ。あなた、わたしを見捨てるよう命令したら従ってくれる?」


狐娘「やだ」


 即答だった


 勇者さんは嘆いた


勇者「誰もわたしの言うことを聞いてくれない……」

 

 子狸は言わずもがなである


 その子狸さんはどうしているのかと言うと

 巫女さんの側近たちに包囲されていた


側近A「同志ポンポコ、一人で大丈夫か?」


側近B「きちんとリンちゃんを守るんだよ? できる?」


側近C「どうも、いまいち信用できないなぁ……」


側近D「なんか、わたしたちのこと避けてない? 気のせい?」


子狸「え、いや……」


 そして絡まれていた


 巫女さんが腕前を見込んで連れてきただけあって

 必然的に年上のお姉さんたちである


 子狸はびびっている


子狸「そんな、急にいろいろ言われましても……」


側近D「大したこと言ってないでしょ」


側近C「同志シャルロットが言ってたとおりの子なんだね……不安だ」


 側近Dのツッコミが厳しい


子狸「はわわっ……」


 はわわになってしまった子狸


 助けを求めて、羽のひととお話している勇者さんを見るが

 すぐに考え直して虚勢を張った


子狸「お、おれは、君たちよりも……ふ、古株と言えなくもない気が……しますね?」


 古株という言葉を知っていたことに、おれ感動


側近A「らしいね」


 側近Aは素直に認めた


側近A「土魔法を使えるって本当? なにかコツとかあるのか?」


側近B「ああ、それは興味ある。よし、吐け。吐くんだ、同志ポンポコ」


側近C「というか、なんでポンポコ?」


 いくら巫女さんから啓蒙を授かったとはいえ

 豊穣属性に目覚めるかどうかは個人の資質による


 むしろ覚醒した人は幹部になるので

 連れて来なかったのだろう


 手はじめに土魔法で田畑を耕して利便性をアピールする等

 地域密着型の勧誘が巫女一座の常套手段である


 怒涛の質問攻めに子狸が対処できる筈もなく……


子狸「古株なのさ」


側近D「それは聞いたよ」


子狸「木こり……なのか」


 会話が崩壊した



八五、管理人だよ


 お前ら助けてくれないか


 こんなところを勇者さんに見られたら誤解されてしまう……



八六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 誤解されるほどの好感度があるかどうかも疑問だが……まあいい


 とりあえず土魔法だな

 興味がありそうだから、土魔法について話せば主導権を握れる


 コツねぇ……


 盲目的にならないこと、というのは子狸らしくないか


お前「自分で考えないと意味がないです」


 これでどう?



八七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 微妙だな


 その程度のことは、巫女さんから聞いてると思う


 巫女さんが言いそうにないこと、批判されるような内容を言えばいい


お前「土魔法をとくべつだと思ってるようじゃだめ。つまりお前らは全員だめ」


 これでどう?



八八、管理人だよ


 え? どっち?



八九、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 果敢に攻めすぎだろ


 骨っち骨っち、記念撮影して~



九0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ステルスした歩くひとが

 ふわふわと浮遊しながら勇者さんと肩を組んではしゃいでいる

 ずいぶんと上機嫌な様子である


 ステルス中のおれたちは

 何をしても認識されないのだ


 ……って、おい。その角度だと、おれも写るだろ。やめて下さい



九一、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 王都のひと~王都のひとも笑って~


 いいよ、そのポーズいいよ~


 念写ぁっ……



九二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 念写ぁっ……じゃねーよ!


 おい! おれのアリバイを崩してどうする気だ!?



九三、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 うふふ……



九四、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 うふふ……


 あ、そろそろ牛さん起こさないと

 歩くのぉ、おれ行くわ~



九五、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 おう。おれもそろそろ王都に戻るわ


 ちなみに、新装開店オープンセールですけど

 まず根本的に立地条件が良くないよね

 地道にコツコツやっていこうと思います


 じゃあね!



九六、管理人だよ


 あ! 歩くひと!



九七、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 んお? なんだい、ノロくん



九八、管理人だよ


 月の輪ぐまぁ……



九九、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 月の輪ぐまぁ……



一00、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 ぜんぜん意味わかんないけど

 お前ら意外と仲良しだよね



一0一、管理人だよ


 なんでか知らないけど

 おれ、歩くひとには近いものを感じるんだよね

 こう……なんていうの? シンパシー?



一0二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 むしろシンパシー以外に理由があったら訊きてーよ……


 ところで、いいの?

 子狸さん、うんともすんとも言わないもんだから

 側近たちが呆れてますけど……



一0三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 もう月の輪ぐまぁ……でいいよ


 クマさんには申し訳ないけど

 本当に申し訳ないんだけど

 響きがね

 そのひとことに子狸の全てが集約されてる



一0四、管理人だよ


 一理あるな


おれ「月の輪ぐまぁ……」


側近A~D「…………」


勇者「…………」


巫女「…………」


妖精&狐娘「…………」


 あれ、全員集合してる


 なんだこれ


 なんか、おれが滑ったみたいな感じになってる


 ハードル高ぇな……



一0五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 一理あるね



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