「勇者会議」part1
一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
お前ら集まりましたか~?
はい点呼~
1~
二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
2ぃぃぃ
三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
3んんっ
四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
真・3んんっ
五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
真とかねーから~
4ね。おら、喧嘩すんなそこ~
4。はい次~
六、管理人だよ
真・よ~ん
七、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
絶対に言うと思ったよ、も~
真でも4でもねーから~
5ね、5。次~
八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(主張中
6
九、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
やだ、クール……
7ぁぁぁ
一0、管理人なのじゃ
よかろう、ならば決闘だ
一一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
なんか混ざった~
別の河じゃねーのか~?
8~
一二、管理人なのじゃ
ふっ、お前か
相手にとって不足なしといったところだな……
一三、火山在住のごく平凡な火トカゲさん(出張中
聞けよひとの話~
ちょっと現地に行ってくるわ~
9~
一四、管理人だよ
ぷれしあ~ん
一五、管理人なのじゃ
どどりあ~ん
!? な、なにをするっ
お、お前は――!?
一四、管理人だよ
おじいちゃん!?
おじいちゃーん!
8~
一五、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
重複してる上に戻ってる~
10~
一六、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
緑のひとグッジョブ~
11~
一七、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
そのまま隔離したって~
12~
一八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
多いよ~多い多い~
お前らのオリジナル野郎はどこ行ったの~?
一九、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
いま忙しくて手が離せないんだと~
二0、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
家で、ろくろしてるよ~
すごい集中力だ~
二0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
つまり下手人はやつか
逃げやがったな……
あと、羽のひとと歩くひと~
なんで返事しないの~?
ジョーたちは事情があるだろうからいいけども~
二一、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中
点呼とか意味あるの?
二二、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
無意味のひとことに尽きる
二三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
またこの子たちは!
めーだよ!
王都のんを見習いなさい!
恥ずかしくてもちゃんとやってるでしょ!
しかも目立たないタイミングを狙い澄ました上で言ってるからね!
二四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ひとの内心を見透かしたかのように言うのはやめてくれませんか
も~……いいから話を先に進めろよ!
いや、だいたい予想はついてる
人海戦術に打って出たら
騎士団が横槍を入れてきたんだな?
大隊長が動いたということは
山腹軍団はざっと十万といったところか
二五、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
億です
二六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
え? なにが?
二七、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
億。数の単位
一万の一万倍
二八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ああ、単位の億ね
唐突すぎて一瞬なんのことかわからなかった
そうか……
ところで子狸なんだけど
二九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
おう。子狸な
その後、どうなの?
勇者さんの前で
発電魔法を使ったのはまずかったな
とはいえ、いずれ直面した問題ではある
お前らのことだから
うまく誤魔化してくれたんだろ?
三0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
前回の旅シリーズとの絡みになるのかねぇ……
ああ、でも人間たちには
先代勇者のこと、正確には伝わってないんじゃなかった?
三一、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中
そうだね
人間たちの歴史だと
邪神教徒と魔王がごっちゃになってて
最終決戦は勇者と魔王の一騎討ちだ
邪神教徒どこ行った
三二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
そう。だから、話がつながらないんだよ
安全上、子狸が邪神教徒の子孫ってことは隠しておきたい
史実の上でなら、勇者の末裔にあたる子狸が
魔属性を使えてもおかしくはないんだが……
そのへんは緑のひとに語ってもらったほうが
説得力あるだろ
三三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
そうだな
話のネタが出来るし
本人も喜ぶと思うよ
三四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
つまりは、誤魔化してる最中なんだよね
お前らが別の河でアリア家の攻略に躍起になってる間
おれたちの子狸さんが
馬術の習得に励んでたのは知っての通りだ
これが偶然にも
じっくりと話し合う場に適してたもんだから
……まあ、ちょうどいい機会だと思ったんじゃないか?
鞭の練習と同時並行で
いろいろとお話しましょうってことになったわけさ
三五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
うん。そうだね
子狸もなかなか強情だから
子狸「なんていうか……新しい」
そう簡単には口を割らないわけよ
勇者さんも負けてない
勇者「反省の色が見えないわね……。わたしに対して、何かと反抗的なのは何故?」
子狸「好き嫌いは良くないと……」
勇者「わたしの命令を無視したのは?」
子狸「だって……怒らない?」
勇者「怒らないわ。言ってご覧なさい」
子狸「じゃあ。お嬢ってさ……好きなものばっかり食べようとするでしょ」
勇者さんにとって
この旅は戦いの連続だった
しかし子狸にとって
戦いは生活の合間に過ぎなかった
物の見方が
まったく違うのだ
勇者「……わたしが食べたいと言ってるのに、作ってくれないから注文が同じになるんでしょ」
子狸「逃げてって言ってるのに逃げてくれないし」
勇者「……怨霊種と戦ったときは逆のことを言ってたわ」
子狸「おれもね……むかしは食べられなかったんだよ、魔どんぐり」
勇者「話題を一つに絞りましょう。それがいいわ」
子狸との議論は無益だ
勇者さんは一つの真理を得た
一方、同席しているはずの羽のひとが
妙に大人しいと思ったら
妖精「しっ……!」
黒妖精さんとの再戦に備えて
コンビネーションブローに磨きをかけていた
妖精「大きな一発はいらない。基礎だ……」
ぶつぶつと独りごちている内容が
なんだか怖くて
誰一人として声をかけられなかった……
三五、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
なんだよ。構って欲しかったなら言えよ
照れ臭いから言わなかったけどさ……
お前ら、素材としては悪くないんだよな
いいサンドバックになるんじゃないかってさ……へへっ
三六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
なにを照れる要素があるというのか
ちっとも胸がときめかない
三七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
だれが好きこのんでサンドバックになどなるものか
子狸と一緒にしないで欲しい
三八、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
なんだよ! む~っ
三九、管理人だよ
おれで良かったら
四0、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
子狸さんが男前すぎる……




