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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
おれたちは牛に屈さない……by骨のひとたち
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「都市級が港町を襲撃するようです」part14

四三0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 沈めちゃうの?


 沈んだ船はどうするの?


 おれ? おれが始末するの?


 お魚さんたちには何て言えばいい?


 たぶん人類社会から船が消滅するけどいいよね?


 つーか、おれが消す


 

四三一、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 あ、いや……


 う……嘘ぴょん。沈めないよん



四三二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 うん。お前ならそう言ってくれると信じてた


 言葉には気をつけて欲しいのです


 罰として語尾ににゃんと付けて下さい。お願いしますね



四三三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おちつけ、海底の


 たしかにおれたちが意図的に船を沈めるのはやばい


 お前の言い分はもっともだろう


 だが、空のひとのバランス感覚は

 この場にいる誰よりも優れてる


 まだ行けると踏んだんだろう


 まさか本気で沈めようってんじゃあるまい



四三四、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 そう! そうなの!


 そこの青いの、いいこと言った! にゃん!



四三五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 あ~……うん。すまん


 おれ、過敏になりすぎてた


 本当にごめんな、空のひと


 お詫びと言っては何だけど

 羽のひとの物真似するわ


 シューティング☆(びしっ



四三六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 青いの六人もいらなくねーか?



四三七、住所不定の特筆すべき点もないてふてふさん


 一人くらいは塗料になってもいいな



四三八、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 や、やめろーっ!


 な、なんて恐ろしいことを言うんだ……


 この邪妖精どもめ……!


 海底のひとは……このおれが守る!



四三九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 空のひと……



四四0、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 青いひと……



四四一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 うん



四四二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 海底のが自宅で磔にされた一方その頃……


 子狸サンドストームの圏外にいた勇者さんは

 上空に飛び上がった空のひとを見て

 ジョーたちと打開策を練っていた


勇者「わたしを、あなたたちの船まで魔法で運びなさい」


 魔物たちはポイントに固執している


 高度な再生能力を持つジョーに構わず

 先回りしてゴールそのものを潰してしまうというのは

 合理的な判断だ


 ジョーたちがどこまで考えて

 幽霊船を波間に置いてきたのかは不明だが


 子供たちが避難した魔法動力船は

 波に浚われないよう浅瀬に乗り上げている


 出航の手間を考えたなら

 いくぶん距離が遠い幽霊船に乗り込んだほうが

 結果的には近道だ


 その、わずかな時間差が明暗を分けることになると

 勇者さんは考えたのだろう


 計算上、空のひとの巡航速度は

 お馬さんの五倍強ということになる


 ふつうに走ったのでは間に合わない


 自然とジョーたちの返答は端的なものになった


骸骨B「無理。並行呪縛、必要」


骸骨C「高度。ビッグね」


 なんで片言だよ


 ……逆に言うと

 並行呪縛さえ使えれば

 たとえば投射魔法に便乗して

 空を飛ぶことも可能になる


 魔法を使うというのは

 つまり、イメージを実現する際の

 制限を解除するということだ


骸骨D「だが、足場を用意することはできる」


 人間には、というより魔物以外の生物には

 最低限の退魔性が保障されている


 かつて子狸が覗き行為に走ったときのように

 生成した力場の上を走るだけなら

 魔法の影響下に完全に落ちたとは見なされない


 勇者さん一人では、たぶん無理だ

 退魔性が強すぎる

 だが、彼女には黒雲号という心強い相棒がいる


 動物たちは人間と違って素直なので

 不自然に退魔性が高まるということはない


 子狸と仲良しというのも

 この場合はプラスに働くだろう


 黒雲号は星を見つめていた


 もうこの際だから

 はっきり言ってしまおう


 このお馬さんは

 たぶん子狸よりも賢い


 ジョーたちの提案に

 勇者さんは頷いた



四四三、管理人だよ


 ふたりとも頭いいよね


 買い物に連れて行くと

 ちゃんと買い物してくるんだ

 


四四四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 いや、そのときお前は何してたんだよ



四四五、管理人だよ


 おれは、いつだって挑戦者だから



四四六、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 意味がわからん



四四七、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 この前はキングに挑んでたな。腕相撲キング


 キングが相手をするまでもないと思ったから

 おれが軽くひねってやった



四四八、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 お前も何してんの?


 キャラ的に勝っちゃだめでしょ


 もっと自分を大事にしようよ



四四九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや、順当な結果だったよ


 羽のひと、設定上でも時速で200とか出すから


 子狸はハンデをやるとか言って指一本で勝負したけど

 角度やばかったもん


 非日常的になった前足を見つめて

 思わず口を衝いて出た

 子狸さんのコメントがこちら


子狸「……ひゅっ」



四五0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸には申し訳ないけど

 今年いちばんのリアクションだったな

 もちろん大賞にノミネートしておいた


 今年こそは獲ってみせるぜ


 まあ、それはよしとして……


 ジョーDが生成した力場の上を

 黒雲号が駆けていく


 黒騎士との戦いで

 子狸が作った傘の道を

 海上で再現したものだ


 ただし、子狸が作ったものよりも幅広で

 お馬さんの足に負担が掛からないよう

 緻密に調整してある


 盾魔法は外部の干渉を弾く魔法だから

 反発力を抑えれば芝生の弾力を再現することもできる


 逆に反発力を高めれば

 ポンポコ級の退魔性なら加速にも使えるかもしれない

 こけたらダイナミックに捻挫するだろうけど


 幽霊船までの行程を

 黒雲号が三分の一ほど走破したあたりで

 豆芝さんが波打ち際に到着した


子狸「豆芝、待ってて!」

 

 豆芝さんから飛び降りた子狸を

 三人のジョーが拾い上げる


 子狸が後ろを指差しただけで

 その意図を豆芝さんは汲んだ 


 子狸を神輿みたいに担ぎ上げたジョーたちが

 一糸乱れぬ足並みで勇者さんを猛追する


骸骨B~D「おうおう!」


子狸「おう!」


骸骨B~D「シエル!」


子狸「ドロー!」


 特訓でつちかったコンビネーションを

 余すことなく発揮するポンポコ神輿


 遺憾ながら

 おれたちの魔法と子狸の魔法は

 ほぼ同質だ


 応用の幅が広すぎるため

 チェンジリング☆ハイパーは不可能としても

 目的が同じなら、互いに互いのイメージを補うことができる


 減速魔法は、物質と物質の関係性を操作する魔法だ

 減速魔法と銘打ってはいるものの

 じつのところ一定周期で加速と減速の波がある


 減速した場合は相対的に硬度が増し

 加速した場合は相対的に硬度が減る


 つまり脆くなる


 子狸が素で加速しようものなら

 足首がブレイクするだろう


 しかしジョーたちには極めて高い再生力がある


 子狸の加速魔法は

 減速魔法で加速するというジョーたちのイメージを

 高速で再生するジョーたちというイメージで補っている


 つまり、とんでもなく速い


骸骨B~D「わっしょい! わっしょい!」


子狸「わっしょーい!」


 後方では、ジョーAが奮闘している


 空のひとの砲撃は

 いまなお続いていた


 ジョーたちのこん棒さばきは

 一流どころの剣士に勝るとも劣らない


 束になって襲い掛かってくる氷槍を

 大きく飛び上がったジョーAが

 空中でコマみたいに回って

 まとめて叩き砕いた


 だいぶ視界も晴れてきた


 一連の動作で

 頭上を通過した空のひとを視認し

 一瞬で構成を組み上げる手管は

 過去、魔法戦士たちから学んだものだ

 

骸骨A「レゴ・グレイル・ラルド・ディグ!」


 お返しとばかりに

 大口径の氷槍を後ろ手に撃つ


 開放レベル2の投射魔法なら

 詠唱破棄の盾魔法を貫通できる


 空のひとの意表を突いたかに見えたが

 これは黒騎士の魔☆剣で撃墜された


 じつに目障りな上司だ


 舌打ちしたジョーAが

 豆芝さんと合流する


 先行するポンポコ神輿では

 翼で風を打つごとに加速する空のひとに

 子狸の肩にとまっていた羽のひとが

 決死の覚悟を決めた


妖精「先に行くぜ!」


 ここがデッドラインだった


 ポンポコ神輿が先行しているいまなら

 空のひとに先んじて幽霊船に辿りつける

 

子狸「はちみつは……」


 誰もはちみつの話なんてしてない


 羽のひとはツッコミを放棄して飛翔した



四五一、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 あとで、さっと熱を通します



四五二、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 子狸3分クッキングが

 にわかに現実味を帯びてきた


 羽のひとの旋回速度の秘訣は

 二対の羽から生み出される爆発的な加速力にある


 たちまち黒雲号に追いつき

 その頭上を抜けようとした羽のひとを

 勇者さんが制止した


勇者「リン!」


 羽のひとの妖精魔法では

 空のひとに対して決定打を与えられない


 それを見越しての判断なのか?

 それとも……


 片手を差し出した勇者さんを

 羽のひとは信じることに決めた


勇者「あなたはここ。落馬しないように、わたしを支えて」


妖精「はい!」


 秘策があるらしい


 羽のひとは従った


 だいじょうぶと言って聞かせるように

 勇者さんが頷いた


勇者「そう。そのまま。あなたを見ていたほうが、きっとうまく行く……」


 羽のひとを乗せた左腕のひじをくっと引いた勇者さんが

 お馬さんの手綱を手放して

 右手に聖☆剣を顕現する


 顔に巻きつけるように振りかぶった右手の中で

 聖☆剣が不安定に揺れていた


 幽霊船まで、残すところあとわずか


 黒雲号とポンポコ神輿が横一線に並んだ

 まさにそのとき、上空を空のひとが駆け抜けた


骸骨B~D「わっしょい! わっしょい!」


子狸「エラルドぉっ!」


 黒雲号を抜き去ったポンポコ神輿

 上空を仰いだ子狸が

 かつて羽のひとにへし折られた人差し指を

 空のひとに向けた


 子狸、渾身の魔法がいま!


子狸「ディグ・タク・アバドぉーん!」


 えっ



四五三、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 えっ



四五四、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 えっ



四五五、住所不定の特筆すべき点もないてふてふさん


 えっ



四五六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 重力砲とか……


 どう考えても開放レベル4だろ……

 

 なまじ魔性に近しいから

 子狸の魔法は失敗しても半端に実現しようとして

 周囲に被害をもたらす


 撒き散らされた重力場が

 足場になっている魔法の桟橋を

 木っ端微塵に打ち砕いた


骸骨B~D「はわわっ」


子狸「な、なんと……」


妖精「ばかーっ!」


 かろうじて羽のひとの念動力が

 黒雲号と勇者さんの落下速度をゆるめる


 ポンポコ神輿は

 あえなく海中に没した



四五七、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 四連結ならレベル2だろ的なっ



四五八、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 あわよくばレベル3だろ的なっ



四五九、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 どんぶり勘定をするなとっ……


 このポンポコ、役に立たねえ!



四六0、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 まずい! ジョーは泳げん!


 王都の!



四六一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 急に言われても思いつかんぞ……


 ジョーAは……だいじょうぶだな

 スタートが遅れたぶん、浅瀬だったのが幸いした


 問題はコイツらか

 際限なく沈んでいくジョーたちを

 とりあえず海上に射出


 ちゃぽんと跳ねた海水を

 女性の形に固定する


 水の精霊……ということにしよう

 仕方ないから声はおれがあてる


 突如として出現した水の精霊が

 金銀にデコレーションされたジョーたちを

 柔らかい手つきで指し示す


おれ「あなたが落としたのは金の骨ですか? 銀の骨ですか?」


骸骨B「それ骨じゃないだろ」


 海面から顔を出した濡れ子狸が答える


子狸「いいえ、鉄の骨です」


骸骨C「鉄でもないんだが……」


おれ「あなたは正直者ですね」


骸骨D「えっ……」



四六二、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 お前らが妙なドラマを演出している一方その頃……


 幽霊船の上空を陣取った空のひとが

 勇者一行をあざ笑うように一瞥して

 急降下を開始した

 

 体当たりをするつもりだ


 低レベルの魔法で破壊しても

 逆算能力で修復される


 レベル4の魔物の打撃は

 開放レベル4の魔法と同意義だから

 実質的に修復は不可能ということになる


 治癒魔法が神のご加護であるというなら

 そんなことはあってはならないことだから

 魔☆力が毒のように内部を蝕むのだと人間たちは解釈している

 

 目下、落下中の勇者さんは

 一心に空のひとを見つめていた


 とっさに羽のひとが念動力で支えたものの

 馬上で勇者さんの身体は傾いでいる


 しかし、そんなことは勇者さんの集中の妨げにはならなかった


 短い吐息と共に、聖☆剣を振りぬく


 幾つもの淡い光が

 空のひととを隔てる虚空に

 連続して灯った


ひよこ「……?」


 空のひとが首をねじって

 ぎょっと目を見開いた


 聖☆剣の切っ先が

 両者を隔てる空間を飛び越えて

 片翼を切り落としていた

 

ひよこ「おお……」


 淡白な反応だった


 空中でバランスを崩した空のひとが

 狂った進路を立て直そうと

 残った片翼で激しく羽ばたくも

 狙いが逸れて海面に着水する


ひよこ「!」


 とっさに盾魔法を足場にして水没を免れたが

 足元の海面が突如として渦を巻く


庭園B「! まずい! 飛べ!」


 設定上、聖☆剣は魔法ではないことになっている


 逆算能力で治療するのはご法度だが

 レベル3以上の魔物は変化魔法で同じ効果を得ることができる


ひよこ「待て、いま……エリア・ブラウド!」


 半ばから切り落とされた翼が

 にゅっと生える


 飛び立とうとした空のひとを

 しかし海面から伸び上がった水竜巻が捕獲した


ひよこ「うおっ……」



四六三、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 さあ、おしおきの時間だ



四六四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 もはや事態は完全に人間たちの手を離れた


 触手のようにねじ曲がった水竜巻が

 空のひとの巨体をぎりぎりとしめつける


ひよこ「ぬぬぬっ……!」


 カッと開いたくちばしで噛み切ろうとする空のひとに

 水竜巻が素早く背後に回り込んだ


 空のひとの翼をロックし、コブラツイストに移行する


ひよこ「ぬおおっ……!」


 さりげなく避難した黒妖精が

 空のひとの耳元まで飛んで行って叫んだ


コアラ「ギブか? ギブか?」


ひよこ「ネバー!」


 魔獣種としてのプライドがそうさせるのか

 空のひとは激しくかぶりを振って

 続行の意思を示した


 水竜巻が巨人と化して

 さらなる苦悶を空のひとにしいる


 背骨をへし折らんとばかりにしめつけられて


ひよこ「ほうっ」


 空のひとのくちばしから

 かつて聞いたことのない音がした


 観戦を余儀なくされている勇者一行


 勇者さんの肩に移った羽のひとが

 畏怖に打たれて震え上がっていた


妖精「並行呪縛……」


勇者「?」


妖精「あれ……王種のよりしろです……」


勇者「よりしろ……?」


妖精「遠隔操作の、人形みたいなものです。本体じゃないのに……王種は……こんな、圧倒的すぎる……」


 水の精霊から三種のジョーを取り戻した子狸が

 どさくさに紛れてゴールした


ゴールド「うぃー!」


シルバー「うぃー!」


アイアン「うぃー!」


子狸「うぃー!」


 幽霊船の甲板で、こぶしを突き上げて勝ち誇っている


 空のひとは責め苦に耐えていた


 水の巨人が首をひねると

 海面がさざめき

 盛り上がった海水が

 即席のリングと化した


 巨人を介して海のひとが叫ぶ


人魚「ひとんちでっ」


 空のひとを抱えたまま助走し

 ロープに投げる


 すでに空のひとはグロッキーだ

 よたよたと海面を走らされ

 ロープでバウンドして戻ってくる


人魚「騒ぐなっつってんだろーがぁぁっ!」


 巨人のラリアットが空のひとに炸裂した


ひよこ「おふっ!」


 空のひとの巨体が半回転して

 マットに沈んだ


 黒妖精が両腕を交差して

 試合終了を告げる


ひよこ「…………」


 マットで大の字になっている空のひとは

 ぴくりともしない


コアラ「ドクター! っ……勝者、海のひと!」


人魚「うぃーっ!」 


 壮絶な幕切れに、ジョーたちと子狸が喝采を上げる


 危機は去ったのだ……



四六五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 日没と同時に

 港町の住人たちは黒騎士の魔☆力から解放された


 ……お前たちも

 もういい加減、諦めたらどうだ?



四六六、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 まだだ!


 まだ終わっちゃいない……



四六七、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 諦めるのは、お前だ!


 おれたちは

 シナリオを遂行したぞ


 オリジナルでなくとも、やれると証明した!

 


四六八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 強情だな……


 わかった


 理由が必要ならくれてやる


 歩くひと、見てるな?



四六九、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 こんばんはぁ


 あれ? なんでびくってしたの、お前ら?


 ああ、ごめん。お前らだなんて……


 お兄ちゃん



四七0、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 山腹のがだな



四七一、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 うん、そう。山腹のが


 おれたちは止めたんだよ


 ね、議長?



四七二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 いえ、おれオリジナルですし……



四七三、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 オリジナルはおれたちの目の前にいるだろ!


 怖い! このひと怖い! 平気で仲間を売る!



四七四、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 怖いのはお前らだよ!


 でも残念でした~


 おれは勇者一行の味方だもんね


 いや、悪いね、ホント……



四七四、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 お前ら、もうちょっと賢く生きろよ


 ポンポコ(大)を見習え


 あいつは、おれを見るなり最速で土下座したぞ



四七五、住所不定の特筆すべき点もないてふてふさん


 さて、と……


 そろそろ魔都に帰るか。な、お前ら



四七六、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 そうですね、司令



四七七、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 お供します、司令



四七八、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 オリジナルども


 今回は勝ちを譲ってやる


 だが、忘れるな


 ライフワーク担当のおれたちはどこにでもいる


 第二、第三のおれたちが、いつの日かきっと……



四七九、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 きれいにまとめようとしてるとこ悪いけど


 お前ら全員、王都に集合



四八0、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 はい



四八一、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 はい



四八二、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 はい



四八三、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 あ、そうだ。王都のひと



四八四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 はい?



四八五、湖畔在住の今をときめくしかばねさん(出張中


 アリア家の地下に

 鬼のひとたちが幽閉されてるんですけど


 訪問販売しに行って

 即行でつかまったらしい



四八六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 なにやってんだ、あのひとたち……



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