「幼なじみっていいよな」
一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
幼なじみっていいよな
二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(主張中
突然どうした
三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
いや……
この山腹さんはね
今回の旅シリーズのエンディングについて
思いを馳せていたわけだよ
で、思ったのね
勇者さんが魔王を倒して、こう……最後にだな
じつは幼い頃に子狸と会ってて、そのときの思い出で締めくくるのさ
ストーリーはこうだ
公園で邪悪な儀式を執り行っていた子狸(幼)が
ひとりぼっちの勇者さん(幼)に声を掛ける
子狸(幼)「いっしょにあそぼうよ!」
勇者(幼)「でも……」
子狸(幼)「いけにえは、たくさんいたほうがいいんだ!」
勇者(幼)「うん!」
ぱっと笑顔になった勇者さんが
差し出された子狸の手をとる
そこでスタッフロール
ね? きれいでしょ
四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
……?
べつに会ってませんけど
このおれが言うんだから間違いない
そんなドラマはねーぞ
第一、その場面で勇者さんが元気に頷くとかありえんだろ
キャラ崩壊してるじゃねーか
五、管理人だよ
いや……
有りだな!
六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
有りじゃない
そんな事実はないの
現実を直視しなさい
お前と勇者さんの間に
そんな美しい思い出は一片たりとて存在しません
一分の隙もなく赤の他人です
七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
そこで!
そこでですよ
この山腹さんはね
世界各地で活躍するおれと
総力を結集して二人の接点を探ってみました!
八、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
どれだけ、暇人なんだよ……
九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
その結果がこちらです!
ざざ~ん
~山腹劇場~
監督:おれ
脚本:おれ
編集:おれ
スペシャルサンクス:おれ
一0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
とつじょとして訪れた、世界滅亡の危機……!
おれ「やれやれ、今度はどんな無理難題だい?」
世界の命運は、たった一人のおれに託された……!
おれ「ひゅー! おちおちピザも食ってられねえぜ」
残された時間は……!
あと一秒……!
おれ「まあ、難易度Cってトコかな」
おれの孤独な戦いがはじまる……!
おれ「報酬は……君の笑顔」
一一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
軽く観たいじゃねーか……
一二、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
海底のひとは……
無駄に才能を持て余してるな……
一三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
こら!
いまのはコマーシャルだよ!
本編はこれから!
一四、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
いや、もう無理だよ
海底劇場のクォリティが高すぎた……
一五、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
なんかごめんな
おれのご近所さんが……
一六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ぐぬぬっ……!
ま、まあいいさ……
そんなことを言ってられるのも
今の内なんだからねっ
*
【山腹さんが編集作業に入りました】
一七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ねつ造の予感がする……
一八、管理人だよ
わくわく
一九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
~fin~
二0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
諦めた!?
二一、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
かわいそうに
勝機が見えなかったんだよ……
二二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
なんかね
勇者さん……まあ当時は勇者じゃなかったけど
学校の下見に来たことがあるみたい
二三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ああ、そういえば貴族が視察に来るっていう話はあったな
……当日は子狸さん急用でいなかったけど
二四、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
いなかったのかよ
二五、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
いや、後日談があるんだ
勇者さんが王都を発つ日に
なんと、彼女は!
子狸が身を潜めている裏路地の手前を通り過ぎてるんだよぉ~!
これは、もう運命としか……!
図解
裏路地
闇
子狸さん
闇
騎士
勇者さん(通過)
騎士
騎士
二六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
風前の灯じゃねーか……