「なんか魔王が復☆活したらしいです……」part2
四二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
よし
行ったな
じゃあお前ら
さっそくだけど……
子狸の
必殺技を
編み出そうぜ
四三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
お前……
もう少し真面目にやれよ……!
子狸も一生懸命
がんばってるんだぞ……!
まず変化魔法は外せないな
レベル5か……
四四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
まったくだ
何を言い出すかと思えば……
必殺技?
幼稚だとは思わんのか?
いや
ほぼ無制限の変化がレベル5
本人ベースならレベル3だ
が、詠唱破棄でレベル4だな
四五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
いい加減にしろ
どいつもこいつも
子狸の意思を尊重しようという気はないのか?
変化は外しようがないから
よしとして
子狸はセンスないからな
標的指定
座標起点
並行呪縛
このへんは欠かせないだろ
四六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
下らないな
おれは抜けさせてもらうぜ
欲を言えば
千里眼と併用して
射程超過
減衰特赦
このへんもあると理想だな
現時点でレベル7くらいか?
四七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
いや
射程超過と減衰特赦は
座標起点との相性が良すぎるから
たぶんレベル8だな
ここまで来ると
さすがに変化するしないは
あんまり関係ない
それじゃ
おれは子狸のあとを追うわ
ちなみに宰相は
勇者の情報を隠しておきたいみたいだな
子狸「どんな子なんですか?」
宰相「良い子だよ」
子狸「?」
宰相「少し気難しい面はあるが、……心の優しい子だ」
子狸「えっと……」
宰相「ひとの本質は内面にこそ表れるものだ……。そうは思わないかね?」
子狸「あ、はい」
びっくりするほど簡単に
言いくるめられました……
四八、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸ぃ……
しかし
こうまで隠そうとするなら
逆に、勇者がまっとうな平民ということはないな
宰相が気にかける程度には高位の貴族か
四九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
予想通りすぎて面白みに欠けるな
しかし王国の大貴族が勇者とは……
国際問題に発展しないか?
五0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
公表しない方向性で
事を進めるんだろうと予測
上記の理由で
勇者も宰相に言いくるめられてる可能性大
宰相のことだから
各国首脳陣に話は通ってると見た
子狸は保険だな
五一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
王国の上層部は信用ならない
これを機にバウマフ家を排除するつもりかもしれん
念のために
お屋形さまには
おれから伝えておく
五二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
そうしてくれ
無用な心配とは思うが……
最終的な決断を下すのは
お屋形さまだ
おれは
他のひとたちに
話をつけてくる
いまは
宰相の手のひらの上で
踊ってやるよ
大人って汚い
五三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
きれいな馬鹿も
正直どうかと思います……
五四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸さんのこと言ってんのか?
全面的に同意です……
五五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
盛り上がってきたな
勇者の人選に不安はあるが……
子狸ほどじゃない
毎度のことだ
うまくやれるさ
おれたちなら
ところで
脚本どうする?
五六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
検証の時間はないが
おそらく他のひとたちは
各自でイベントを用意してくれるはず
おれたちは
子狸と勇者を追う
他のひとたちは
子狸と勇者を待って
おれたちと合流する
問題は……
五七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸か……
毎度のことながら
立ち位置がひどい
これが
お屋形さまなら
国一番の魔法使いです
あなたが勇者ですか
奇遇ですね
共に魔王を倒しましょう
四行で済むのにな……
あ、無理か
あのひと、わりと自分勝手だわ……
むしろ、おれが魔王とか言い出しそうで怖い
五八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
言うなよ……
子狸のほうが
ましな気がしてくるだろ……
とにかく
いつものパターンなら
うっかり魔物に追われてて
勇者に助けられて
なし崩しで旅の仲間に加わって
最終決戦する頃には
家事担当っていう流れなんだけど……
今回も通用すると思うか?
五九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
いや、いけるだろ
宰相も、ああ言ってるしさ
あの子が村人を救おうとしていたのは……
あれ?
もしかして自分のところの領民だからなのか?
あのテンションの低さは……
やばいぞ
スルーされたらどうしよう……?
六0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸、涙目だな
目に浮かぶようだわ……
まあ、べつに……
いいんでない?
そのときは
そのときで
六一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
だな
千年の歴史で
はっきりしてることだ
バウマフさんちのひとに
ひねった役柄を振ると
あとで、おれたちが泣きを見る
アドリブきかないし
無自覚にストーリーを破綻させる逸材
いつも通り
勇者に軽く肩を叩かれて
仕方ないなお前は(苦笑
みたいなポジションでいいよ
六二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
戻った
六三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
おかえり
どうだった?
息子は出席日数がやばいから
おれが行く
みたいな流れだと嬉しいような気もする
六四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
結論から言うと
魔王は実在した
親狸「おれの息子、涙もろいから。可愛いだろ?」
超☆笑顔
六五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
言うまでもなく
子狸さんには大活躍してもらう所存です
六六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
当然のことだろ?
この世界の命運を
他の誰なら任せられるっていうんだ?
六七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
何を今更だよな
論じる価値すらないよ
子狸ぃ……
六八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸ぃ……
六九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸ぃ……
七0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
この世界は
もうだめかもしれんね……
登場人物紹介
・親狸
子狸の実父。千年に一度生まれるというレジェンドバウマフ(根拠なし)。
ひとことで言うと完璧超人。飄々としたところがあり、将来は貴族の嫁さんをもらって退廃的な暮らしに甘んじるであろうと危惧されたが、魔物にも優しいからという理由で同じ平民の女性とあっさり結婚し、一児をもうける。
王国の千年紀を祝う「千年祭」に狙いを定め王都襲撃を計画、魔物たちを扇動し実行に移した主犯である。
もうやだこのひと、という意味をこめて魔物たちから「お屋形さま」と呼ばれ畏怖されている。
「どこに出しても恥ずかしくないバウマフ」「バウマフ家の歴史を完成させた男」等々……様々な異名を持つ。
意外と子煩悩であるらしい。
ちなみに生まれた子供は、父親の遺伝子をバウマフの血が拒絶したと言われるほど似ていない。魔物たちは大いに喜んだという……。