「なんか魔王が復☆活したらしいです……」part1
一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
なんか
魔王が
復☆活
したらしいです……
二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
くわしく
三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
くわしく
四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
くわしく
五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
いや
だから
あちこちの河で騒がれてる
いま
話の出所が散逸してて
確定情報がない状態
お前ら何か聞いてる?
六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
おれも
その件を追ってる
まだ完全に整理できてないけど
ごく初期に騒ぎはじめたのが
レベル3のひとたちみたいだ
が
どの河を見ても
噂の域を出ない
何が起こっているのか
七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
え?
ていうか
ごめん
おれ知らなかった
魔王って実在したの?
八、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
しいていうなら
王都で小さな店を構えてるのが一匹
妻子あり
九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
親狸ですね
わかります
一0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
千年に一度
生まれるという
レジェンドバウマフ
資格は十分だな……
一一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
なるほど
情報源は人間なのかもしれないな
千年祭んときの犯行がバレたか?
とうとう
お屋形さまも年貢の納め時か……
一二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
だから
おれは反対したんだよ
王都襲撃は無謀
まあ
先陣を切ったのおれたちなんですけどね……
一三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
お屋形さまの辞書に
無謀の二文字はない
今回も罠だ
お前ら騙されるな
一四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
でも回避不能っていう
一五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
むしろ
おれたちからお願いすることになるっていう
一六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
おう
お前ら情報早いな
一七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
おう
王都の
あれ?
まだ昼だけど大丈夫?
子狸お昼寝中?
一八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
いや
授業中だったんだけど
騎士団に連行されていった
おれも
ステルスして尾行中
いまは
王城の中にいる
一九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
なんという重要参考人……
二0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
またか
そんなんだから
友達ができないんだ
二0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
そして
出席日数が足りなくなる
そろそろ
本気でやばいぞ
二一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
誰がとどめを刺すかって
一時期は話題になったんだけどな
せっかく卒業まで自重しようって
おれたち一致団結したのに……
よりによって
じつの父親がとどめを刺すとは
二二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
連れて行かないでって
本気で懇願する教官の姿に
子狸が戦々恐々としてた
本人に
あまり自覚はないらしい
じつは余裕あるのか?
二三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
いや
やばいよ
詳細は
子狸の留年確定が秒読み状態なんだが
の河を参照
じつは本当なら
もう留年確定してる段階なんだけど
教官の温情で
放課後の補習を交換条件に踏みとどまってるのが現状
二四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
まあ
千年祭の王都襲撃は一族郎党処刑されても仕方ないレベル
最悪
お屋形さまの嫁さんは
おれが匿うよ
あの人に罪はない
二五、管理人だよ
おい
お前ら
二六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
あ、管理人さんこんにちは!
二七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
こんにちは!
今日も男前ですね!
二八、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
あの
騎士団に連行されたって本当ですか?
おれら
みんな心配してたんですよ!
二九、管理人だよ
ごめん
心配させちゃったか
ありがとうな
お前ら
ところで
ひとつ質問がある
聖剣って
なんですか
三0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
存じ上げておりません
三一、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
存じ上げておりません
三二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
存じ上げておりません
三三、管理人だよ
おい
おい。正直に答えろ
宰相に訊かれてるんだけど
なんか勇者が魔王を倒しに行くとか言ってるらしいんだけど
おれは
国から魔王を作れなんて依頼を受けてないし
もちろん
勇者も必要ない
というか
精霊なんてこの世にいたの?
どういうこと?
三四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
お前です
おっと
まあ過ぎたことは仕方ない
いまは
過去を振り返るよりも
これからどうするか
だろ?
大切なのはさ
明日を見据えること
なんだぜ☆
三五、管理人だよ
なんだよ
お前……
格好いいな
そうだな
おれが悪かった
じゃあさ
宰相には何て言おう?
おれ
この人が苦手なんだよね
なんかさ
さっきから長々と勇者と魔王の必要性を語ってるんだけど
頭がいいんだな
ってことしか伝わってこない
どう思うかね?
みたいなこと言われても困る
この人は
おれに何を期待してるの?
三六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
いや
お前
それは遠回しに勇者についてけって言われてるんだよ
うまくやれってこと
でも言えないの
お前は表向き
ただの平民だから
察してやれよ
三七、管理人だよ
お前……
頭いいな
でも
それは困る
おれ
出席日数がやばいんだ
かと言って
勇者を放っておくわけには
いかないか……
おれと
同い年くらいの子供らしい
三八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
安心しろ
バウマフ家の歴史
二人に一人は
社会からドロップアウトしてる
そういう家系なんだよ
三九、管理人だよ
本当?
なんか安心した
それなら
おれ行くわ
勇者はもう旅立ってるらしいから
追いかけて
一緒に行こうって言えばいいよね
四0、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
なんで
お前のプランはそう
いつも大雑把なの?
どう考えても無理だろ
不審者にも程があるわ
とにかく
宰相には出発すると伝えて
それから
家族と学校に
しばらく戻らないと報告して来い
その間
おれたちが
情報収集しておく
四一、管理人だよ
うん
わかった
よろしく
登場人物紹介
・子狸
この物語の主人公。
魔物たちの相互ネットワーク「こきゅーとす」の現管理人。
非凡な実父とは異なり、典型的なバウマフ家の少年。お人好しで、あまり物事を深く考えない。
王都の学校に在籍しているが、魔物たちのいざこざで奔走しているうちに出席日数が足りなくなる。
魔法使いとしての実力は可もなく不可もなくといったところ。魔物たちと親しいので知識はあるが、才能がない。
騎士団によく連行されるので、騎士を見かけるとびくっとする。