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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
これは見事なスウィートルーム……by子狸
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「河の底でもっと蠢くおれたち」

五一、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 だいたいだな……

 おれは、剣士という存在それそのものが気に入らない


 手を伸ばせばすぐそこにあるんだ

 なのに、なぜ受け入れようとしない?



五二、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵


 うんうん……


 そうだね。わかるよ

 うん、わかる



五三、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 お前の言ってることはもっともだよ。うん


 おれたちは、お前の味方だぞ


 さ、仕事しようか



五四、火山在住のごく平凡な火トガゲさん


 いいや、お前らは何もわかってない


 いまこうしている間にもだよ?


 おれは一部の人間に神さまか何かと勘違いされて

 お祈りされてるわけさ


 その、お祈りされてるおれがだよ?


 さも大儀そうに寝そべって

 たまにサービスで唸り声を上げたり

 意味ありげに流し目を送ったりしてる

 このおれがだよ?


 じっさいに何をやっているかといえばっ……!



五五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 なるほどな……


 ここが反乱分子どもの巣か……



五六、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 !?



五七、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 !?



五八、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 よぉし!


 今日も張り切って魔物ろうな

 お前ら!


 びびれ人間ども!


 はっはっは



五九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 こんばんは(にこっ



六0、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 てめーおれを売ったな!?


 あ、違うんですよ王都さん!


 こいつです!

 この、いつもいる青いのが嫌がるおれに無理矢理っ……!



六一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 おれは何もしてません


 緑のがこそこそと何かやっていたようですが

 おれは一切関与してません



六二、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 おれに至ってはアリバイがあります


 中ボスさんのメンテナンスをずっとしてました


 え?

 むしろ緑のひと、何かしてたの?



六三、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 まあ待てお前ら

 少しおちつこうじゃないか


 おれたち、言ってみれば運命共同体だろ


 いや、おれはもちろん

 お前らのことを売ったりはしないよ


 仲間だもんな☆



六四、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 だまれ!

 このトカゲ野郎!


 なにが仲間だ!


 おれはじっさいに何もしてねーだろうがっ



六五、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 お前ら

 もういい


 もういいんだ……


 全部おれが悪いんだ……


 お前らが泥をかぶる必要なんて

 ないさ



六六、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 魂胆が丸見えなんだよぉ!


 ひとりだけ心証を良くしようったって

 そうは問屋がおろさねーぞ!



六七、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 醜い……!


 なんという醜い罪のなすりつけあいなのか……!


 性根が腐ってやがるっ……



六八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ログを流しても

 無駄だとだけ言っておく


 すべて読ませてもらった



六九、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 あわわわわわ……



七0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 あわわわわわ……



七一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 ちっ……


 だが、おれたちを責めるのは

 お門違いってもんだぜ


 いや、そもそも……

 お前だ


 あの小娘に力を与えたのも

 それを放置したのも

 すべてな


 意図的に勇者を生み出したんだ

 違うか?


 何を企んでる?

 お屋形さまの指示か?



七二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 王都の、そうなのか?

 それならそうと……



七三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 いや、違う


 お屋形さまはたぶん

 というか絶対に勘付いているだろうが

 直接おれに何かしろと言ったわけじゃない


 結論から言うと

 アリア家とおれの思惑が一致したということだ



七四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 やはりか……


 どこまでだ?

 アリア家はどこまで知ってる?



七五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 少なくともアリア家の現当主は

 おれたちをコントロールしてる人間がいることに気が付いてる


 そして誰がそうなのかも

 もう知ってる


 つまり実の娘をエサに

 その人間を特定したんだ



七六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 ああ、なるほど


 そのことを勇者さんは自覚してるのか?



七七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 勇者さんは

 正直わからん


 怪しいといえば怪しいんだが……


 子狸が絡むと

 何が正解で何が間違ってるのか

 さっぱりわからなくなる


 まあ、それはいいんだ


 知っていようと知っていまいと

 そんなことはどうでもいい


 お前らは

 勇者さんを味方に引き入れるつもりだったみたいだが

 それはやめておけ



七八、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 いや、最初はそんなつもりじゃなかったんだが

 子狸の恋を応援してやろうと思ってな……


 だけど、なんで?



七九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 それなんだが


 これを見てくれ



八0、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 !


 勇者さんのサンプルじゃねーか!

 でかした!



八一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 さすが悪どい!


 この青いひと悪どい!



八二、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 よっ、悪の権化!


 ひゅーひゅー!

 魔物! 魔物!



八三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれたち魔物!

 お前が魔物!

 いぇーい!



八四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 ぶっ飛ばされたいのか?


 そうじゃなくて……


 おれの触手が消滅してるとこのデータ

 コマ送りで追ってくれ


 わかるか?

 数値が跳ね上がってるんだよ


 んで、跳ね上がる直前に

 二番回線とバイパスしてる


 王都の、これはなんだ?

 お前、聖☆剣に何を仕込んだ?



八五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ああ、それは別々の現象だよ


 おれが聖☆剣に仕込んだのは

 二番回線のバイパスだけだ


 まあ、彼女が剣士で

 魔法を使えば使うほど中途半端な存在になることは

 あらかじめわかってたからな


 その予防策だ


 数値が跳ね上がってるのは

 アリア家の特性だろうな



八六、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 退魔力を意識的に強化できるってのか!?


 いやいや、ありえんだろ~


 それってつまり

 おれがやろうとしてできなかったことを

 人間が自力でやるってことだぞ



八七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そこだよ


 早い話、おれはアリア家に興味がある


 退魔力を強化ってのはいいんだ

 きっと副産物みたいなものだろう


 おれはむしろ連中の感情制御に関心があるね

 制御というよりは凍結に近い


 おれたちは人間の意識を読む

 アリア家の人間は、おれたちの天敵なのかもしれない……


 だから、彼女が山腹のと接触したとき

 これはチャンスだと思ったんだ


 お前らに黙って勝手に事を進めたのは

 たしかにおれが悪かった


 けど、お前ら子狸に甘いからな……


 アリア家が、もしも本当におれたちの天敵だとしたら

 子狸の身に危険が及ぶ可能性もある



八八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや、子狸に甘いのはお前だろ……


 なんか怪しい


 お前、他にも何か隠してるだろ



八九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 は?

 なに言ってるの?


 勘違いしないでよね


 おれはべつに子狸がどうなろうと

 知ったことじゃないよ


 開祖の嫁と約束したからな

 仕方なくついてるだけだ



九0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 子狸の布団みたいになってるお前が言っても

 説得力がないんだが……



九一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 はぁ?


 そんなこと言ったって仕方ねーだろ


 子狸が風邪ひいたらどうすんだよ



九二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんの反論にもなってねーし


 だからこっちもお前に内緒で

 事を進めたんだよ……


 まあ、結果的に

 勇者さんの退魔性は心配いらないってことなのか?



九三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 それは彼女しだいだな


 彼女が

 もし本当の意味で勇者になったなら


 そのときは

 完全に退魔性を失うことになる


 まあ、聖☆剣を酷使しない限りは

 だいじょうぶだろう



九四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 それって真人間になったらってこと?


 ふつうに聖☆剣を使うぶんには

 反動の大半が二番回路に流れ込むから

 三番には影響が少ないのか……


 その場で組んだ構成じゃねーな……

 だいぶ前から計画してたのか



九五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう


 遅かれ早かれ

 アリア家の人間が絡んでくるのはわかってた


 共和国の件しかり

 あそこのうちには

 かなりディープな情報が渡ってるだろうからな


 医療に関する魔法が封印されてることに気付いたなら


 おれたちが、わざと人間に負けてると推測するのは

 さして難しくないはずだ



九六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 お前らが河の底で

 うだうだ言ってる

 一方その頃


 歌人から事情を聞いた勇者さんは

 権力にものを言わせて

 捕獲された子狸を釈放させるのであった……



九七、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 真人間への道は険しいね……



九八、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 でも子狸さんなら……


 子狸さんなら

 きっとやってくれる……



 注釈


・魔物る


 動詞。いかにも魔物っぽい行動をとること。

 発言者の火トカゲさん(緑のひと)がいちばん最近に魔物ったのは、「生贄☆大作戦」と呼ばれる、ふもとの村に生贄を要求してみた事件である。

 緑のひとの人気を妬んだ巨人兵さんが発案し、言葉巧みに緑のひとを陥れようとしたのが発端である。

 だが、予想に反して誰も助けに来なかったため(そもそもレベル5の魔物に人間が立ち向かってもどうにもならない)、子狸が緊急出動する事態に。

 誰も子狸の働きには期待していなかったが、案の定うかつな発言を頻発したため、最終的には緑のひとの名を騙って悪事を働いていた子狸デーモン(新種)が、本物の緑のひとの手で成敗されるという結末を迎えた。

 誰も何も得ることのない悲しい事件であった。

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緑のひとって火トカゲかよぉ!
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