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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
スイカさん、なぜあなたはしましまなのですか……by子狸
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「お前ら緊急事態発生」part2

三七、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 お前ら


 空じゃ

 おれに勝てないって

 わかってるんだろ?



三八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 きゃあ



三九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 きゃあ



四0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 !


 一撃だと……?


 羽のひと!

 それだけの実力がありながらどうして……!



四一、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 群れてるだけのお前らに

 何がわかる?


 何が成し遂げられるというんだ!



四二、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 だが

 追いついたぜ


 青いひとたちが稼いでくれた

 この貴重な一瞬でな……



四三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれたちも

 まだ戦えるぜ……!



四四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そういうことだ


 攻撃が軽いんだよお前は……


 諦めろ

 勝ち目はないぞ



四五、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 頭数だけ揃えたところで……


 全部


 おれ!



四六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 イタチごっこに

 なるだけっていうのが……!


 全部

 おれ!



四七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 無駄だ


 人間ほど集団戦に優れた生き物はいない


 そして

 おれたちほど人間と数多く戦った生き物もいない



四八、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 だったら

 ためしてみるといい


 もっとも

 この一撃を

 かわせたらの話だがな



四九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 !?


 街ごと焼き払うつもりか!?


 お前ら!



五0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 やらせん!


 かまくらの!



五一、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう!


 双璧!

 守護魔法

 全

 開!



五二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 山腹の!


 余波が来るぞ!


 上空の観測をカットする!



五三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう!


 くっ

 なんて威力だ……!


 本気なのか羽のひと……


 子狸がいるんだぞ!



五四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


勇者「どう? 似合う?」


子狸「おれ、この旅で変われる気がするんだ……」


勇者「そう。せめて人並みになれるといいわね」


子狸「…………(照)」


勇者「べつに褒めてないわ」


子狸「な、なんか……デ……デ? ト……タ? うん。いい天気だね」


勇者「……デートって言いたいの? 違うし、諦めたみたいだけど……」


子狸「え? どう……かな。意外かもしれないけど、おれ、あんまり母国語が得意じゃないんだ」


勇者「母国語でもないし。意外でもない。……あ、次はあのお店にしましょ。なんのお店なのかしら」



五五、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 羽の……


 魔道に


 堕ちたな



五六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 ほざけ


 人間を守って

 戦って

 傷ついて


 そこから何か見えるのか?


 何も見えやしないさ



五七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前には

 別の景色が見えるっていうのか?


 違うだろ

 まわりを見渡してみろよ

 お前は

 たったひとりじゃないか


 たった

 ひとりじゃないか……



五八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ひとりぼっちで

 何ができるっていうんだよ……


 どんなに万能でも


 どんなに強くとも


 まわりに誰もいないのなら


 それは

 何もできないのと一緒だろ!



五九、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 だまれ!


 そんなズタボロの身体で何を言っても

 負け犬の遠吠えなんだよ!


 とどめを

 刺してやる……!



六0、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 羽のぉぉぉおおお!



六一、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 しつこいんだよ

 きさまは!


 いまさら

 本気を出したところで!


 ちっ


 だが

 もう遅い

 雲を抜ける……


 それとも

 ステルスしたままで

 おれと戦うか?


 終わりだ



六二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 まだだ!


 いかなお前とて


 おれたちふたりの結界を

 破れるものか!



六三、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 おれが

 なんのために


 わざわざ

 予告するような真似をして


 ここへ来たと思ってるんだ?



六四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 !


 王都の!



六五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ああ

 やられたな


 お前らと戦ってたのは

 ダミーだ


 前もって

 全部おれしてたのか……



六六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれたちを

 誘き寄せるために……!?



六七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸が

 あぶない!



六八、管理人だよ


 お前ら

 ちょっと聞いてくれる?


 おれ

 勇者さんに

 恋しちゃってるかもしれない



六九、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中


 しね!



七0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 しね!



七一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 しね!


 いや

 しぬ前に

 土下座しろ!


 おれたち全員に詫びてから

 南国の王さまを二つずつ贈呈しろ!



七二、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 もらってどうすんの!?



七三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 しかも二つ……


 まあ

 おれは

 ご近所の毛皮を着たひとたちにふるまうけど……



七四、管理人だよ


 あれ?


 空のひともいるの?


 あ

 この前のお土産ね


 火のひとが

 地味に嬉しそうにしてたよ



七五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 地味にとか言うな!


 それ、さっきやったし!


 あのひと

 お前の前だと

 無理にテンション上げてるんだよ!



七六、管理人だよ


 え~……


 そんなことないと思うけど


 さっき?

 さっきって……


 あ



七七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 勇者さん

 羽のひと(オリジナル)と

 謎の店内にて

 遭遇


勇者「……妖精?」


妖精「妖精屋へようこそ~」


勇者「妖精屋? ん……たしかにいろいろ置いてるわね。これは?」


妖精「それは、ばかにつける薬ですよ~。すんごく頭が良くなって、この世の真理を語りはじめます」


勇者「…………」


 無言で子狸を振り返る勇者さん


 子狸は退路を探している


勇者「……ひとつもらおうかしら」


妖精「毎度あり~」


 ふつうにご購入される勇者さん


 用途は不明であると

 あえてここでは言っておくが


 間違いなく

 一服盛るつもりである


勇者「他には何があるの?」


妖精「うちでは、一人につき一つのものしか売らないんですよ~。そういうお店なんです」


勇者「聞いてないわ。あなたのミスよ。だから、あと三つね」


 そしてこの横暴である


 そのとき

 羽のひとの小芝居が光る


 勇者さんの後ろで

 ちょろちょろしている

 子狸の存在に

 いま気がついたような風情で

 首を傾げた


妖精「あら? もしかして、あなたノロくん?」


子狸「っ……!」


 名前を呼ばれて

 びくっとする子狸に

 羽のひとが舞い寄る


妖精「あらあら、お久しぶりね~」



七八、管理人だよ


 あれ?


 今日は機嫌がいいのかな……


 羽のひとって

 こうして見ると

 ちっちゃくて可愛いよね


 じつは

 ふだんは

 こんな感じなのかな?


 警戒して

 損しちゃったな

 ははっ


妖精「……よう、子狸」


 ははっ



 おい


 おい。お前ら



七九、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん


 おれたちは

 がんばったよ


 精いっぱい

 がんばったけど

 だめだった


 疑うなら上流を見るといい



八0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 そして

 少しでもおれたちを疑った

 自分の薄汚れた心を

 存分に反省するといいよ



八一、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんなら

 おれを叱ってくれてもいい



八二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 そこはまじなの!?


 ちょっと~


 そうやって

 自分だけ個性を出そうとするのって

 ひととしてどうよ?



八三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれさ

 他のひとたちから


 青いひとの地味なひとって

 言われてるんだ


 ひとひとってさ……

 重複してるじゃん


 語呂、悪いし



八四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんか

 ごめんなさい



八五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや

 それはさ


 地味に

 いい仕事するよねってことだよ


 いぶし銀っていうの?


 おれなんて

 いつもいるひと

 だぜ?



八六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 さあ

 場があたたまって参りました


 子狸の肩に

 ちょこんと座った羽のひとに

 勇者さんが問いかけます


勇者「知り合い?」


妖精「はい! 山で猟師さんの罠にかかって困ってたところを、助けてもらったんですよ~」


子狸「え? 猟師さん、を……」


妖精「あん?」


子狸「そういえば、そんなこともあったなぁ……」


 そういえば

 そんなこともありましたね



八七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 世に言う


 子狸乱獲事件である……



 登場人物紹介


・てふてふさん


 自らのテリトリーに立ち入った人間に悪戯をするという手乗りサイズの小さな少女。「妖精」と呼ばれている。

 背中に二対の羽が生えていて、自由に浮遊できる。羽を動かすと、光の粒子が燐粉のように舞い散る。

 その愛らしい姿から、魔物とは同一視されていない特別な種族である。

めったに人里にはおりてこないとされ、どういうわけか人間たちには「妖精の里」に住んでいると根強く信じられている。

 簡単な魔法なら扱えるとも言われているが、簡単どころか、じつは空間支配の権限を与えられた高位の魔物だったりする。

 ちなみにレベル4の魔物は、人間が言うところの「都市級」に相当し、これは国家規模の総戦力に匹敵する。

 魔王など問題にならないほどのパワーだ。



 注釈


・南国の王さま


 スイカのこと。

 この世界では存在こそ知られているものの、一般庶民が口にすることはまずないだろうとされる高級果実の代名詞である。

 その常軌を逸した模様から、魔法の影響を受けて歪な発育を遂げたものの一種ではないかと推測されている。

 世界には不思議なことがたくさんあるのだ。



・子狸乱獲事件


 てふてふさんと、とある青いひとが共謀し、猟師たちと罠で対決した事件。「罠合戦の変」とも呼ばれる。

 双方ともに罠に対してはプロフェッショナルであり、騙すか騙されるかの泥沼の事態に発展。

 のちに子狸が現地へ出動し、これに知恵と勇気で挑むが、ものの見事に全敗し、罠という罠にかかる。

 まさかのパーフェクト達成に、てふてふさんより直々にお説教を賜った。

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