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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
そうだ! なかなか筋がいいぞ! by料理長
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「子狸さんが巣穴を探しているようです」part3

六五、管理人だよ


宿屋「馬車は組合のものをご利用ですか?」


 なんか

 質問が多すぎて

 わけわかんなくなってきた



六六、帝国在住の現実を生きる小人さん


 いい質問だ


 簡単に説明するぞ


 高級宿に泊まるのは

 貴族と相場が決まってる


 だから、もしも自前の馬車を使ってるなら

 お馬さんの面倒はこっちで見ますよってことだ


お前「乗馬してきたのでお世話をお願いしますアモール!」


 これで問題ない



六七、管理人だよ


 おい


 その語尾


 かっこよすぎるだろ……


 ありがとう!


宿屋「承りました」



六八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おお、プロだな……


 完璧な営業スマイルだぜ……



六九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 まわりの宿泊客には大ウケだぞ

 沸点低いなぁ……


 あ、やべ

 勇者さんに監視されてた


宿屋「ご宿泊は何泊のご予定ですか?」


子狸「あ、野宿しますから大丈夫です」


宿屋「お帰りはあちらです」


 おお、間髪入れず

 お引き取りを願うとは……

 できるな


勇者「一泊よ」


 見るに見かねて

 勇者さん登☆場


宿屋「これはお嬢さま! ようこそおいで下さいました」


 さすがに貴族御用達の宿では

 顔を知られているらしい


 顔だけ覗かせている勇者さん(超貴族)と

 受付の前に突っ立ってる子狸(ど平民)を

 にこやかに見比べてからの……

 子狸☆二度見


宿屋「お連れさまでらっしゃいましたか!」


 子狸はびびっている


子狸「ら、らっしゃいます」


勇者「延泊するときは、追って伝えるわ。表に馬を引いてるから、人を回してくれる?」


宿屋「かしこまりました。ただちに」


 ちなみに、宿の外には前もって宿泊客の馬を預かる人員が配置されてる


 迷惑料を払うから

 荷物を運ぶ人間を多めに回してくれて構わない

 ということだ


 貴族ってのは何かと面倒だな


 一方、子狸はやり遂げた表情である


子狸「じゃあ、ふたりのことよろしくお願いします」


 宿屋のあるじは

 勇者さんと子狸の関係を計りかねている


宿屋「……よろしいので?」


 子狸との会話に得るものはないと早くも見抜き

 勇者さんにうかがいを立てる


 見事な判断力である


勇者「よくない。あなたも来るの。あと、紛らわしい言い方はやめなさい。馬は一頭と数えるのよ」


 面倒見のいい

 お嬢さんだなぁ


 アリア家って

 こんなんだっけ?



七0、連合国在住の現実を生きる小人さん


 バウマフさんちのひとは

 放っておくと、どこまでも脇道に逸れていくからなぁ……


 とにかくだ。子狸よ

 何もわかっていないと思うが

 お世話をすると約束したんだから

 ちゃんと勇者さんについてけ



七一、管理人だよ


 あ、はい


 とりあえず水だけでも汲んでおいてくれる?



七二、王国在住の現実を生きる小人さん


 はいはい……


 必要なら井戸でも何でも掘ってやるから

 またあとでな



七三、管理人だよ


 え、なんだよ……


 お前ら、なんだか妙に優しいな



七四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 はいはい……


 いいから。ほら

 勇者さんが待ってるぞ



七五、管理人だよ


 おう!



七六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 彼女、子狸を立派な従者に

 育て上げるつもりなのかな?


 無理だろ……



七七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 いまいち何を考えてるのか

 よくわからんな


 一人旅してたのは

 ようするに使命感に燃えた勇者さんが

 周囲の反対を押し切って魔王討伐の旅に出た

 っていう体裁をとりたいんだろ?


 だが、なぜ子狸?


 代わりはいくらでもいると思うが……



七八、王国在住の現実を生きる小人さん


 ああ、それね


 子狸さん

 夢で精霊の啓示を受けてることになってるから


 あと、まあ

 いちおう命の恩人だし


 アリア家って自分ルールで生きてるとこあるから

 そういうのわりかし重視するんだよ



七九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうそう

 王家を陰で守って

 今回だけだ。これで借りは返したぞ……

 みたいなね


 ひとことで言えば

 へんなんだよ

 おれらの国のトップ連中


 さて、話を戻そうか


 宿屋のスタッフに案内されて

 本日の巣穴に辿りついた子狸と勇者さん


子狸「高そうな部屋だねアモール?」


 気に入ったらしい


勇者「今後一切、アモール禁止」


 王国暦一00二年

 アモール禁止令

 発令


子狸「そんなばかな……」


 悲嘆に暮れる子狸を

 なかば無視して

 勇者さんはベッドに腰かける


勇者「そこ座って」


子狸「あ、はい……」


勇者「いちおう、これからの予定を説明します」


子狸「はあ……」


勇者「まず最終的な目標。魔王暗殺」


子狸「はあ……。え、魔王?」


勇者「洞窟の中でも言ったでしょ。邪魔なの。目障りなの」


子狸「うん? うん」


勇者「次。中間目標。とりあえず港町を目指します」


子狸「海?」


勇者「海」


子狸「海……」


 限りなく簡単に説明しようという

 勇者さんの気概が

 伝わってくるかのようだ……


勇者「次。港町までは、街から街へ移動を繰り返します」



八0、管理人だよ


 お前ら、大丈夫か?


 ついてきてる?



八一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 えっ

 すでに限界なの?


 説明しろと言われても困る段階なんだけど……



八二、管理人だよ


 おれは、まだまだいけるよ

 余裕です


勇者「朝食と夕食は宿屋でとれる。では、ここで問題です。あなたのやるべきことは何でしょう?」


 そう来たか……

 引っかけ問題だな


 おれの人生が

 いま問われてる


 どうしよう?

 正直に言う?



八三、連合国在住の現実を生きる小人さん


 待て

 なにが?


 お前の言ってることが

 何ひとつ理解できない


 なにを白状しようとしてる



八四、管理人だよ


 冗談ですよ

 ははっ


 えっと。じゃあ……


おれ「……宿を……いや! だぶるだ!」



八五、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 そこ!?



八六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 そこ!?



八七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 洒落た予約の仕方的なニュアンス!?



八八、帝国在住の現実を生きる小人さん


 だれか、このアモールを何とかしてくれ……



八九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 さしもの勇者さんも

 呆然としたじゃねーか……


勇者「……野宿は慣れてるとか言ってたけど。あなた家事ができるの?」


子狸「え? いや……家のことと野宿は違うよ。違うんじゃないかな……」


勇者「野外で簡単な調理ならできる?」


子狸「それくらいなら……」


勇者「そう。それなら、昼食はあなたに任せる。当面は、それがあなたの仕事よ」


子狸「メルシー」


勇者「メルシーも禁止」



 注釈


・おれの人生がいま問われてる


 ついに注釈で説明しなければならない次元に達した。悲しいことである。

 子狸の頭の中での出来事を順を追って解説する。


一、勇者さんは魔王を嫌っているようだ

二、魔王を作るのはバウマフ家の家業である

三、バレたらやばそうだと思う

四、海=海のひとに転ずる

五、一と二がいったんリセットされる

六、いきなり質問されて焦る

七、四も消える

八、三が残る

九、バレたらやばそうである

一0、なにが? 自問する

一一、やるべきことというキーワードを頼りに、一と分離した二が戻ってくる

一二、勇者さんは女の子である

一三、しかもちょっと可愛い

一四、旅をさせるのはどうかと思う

一五、正直に言うべきなのではないか? 煩悶


 以上。

 ちなみに、こんなところで紹介するのもどうかと思うが、海のひとは見目麗しい女性の姿をしている。

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