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王都さんの家庭の事情

 あれ? 急に黙っちゃったね、お前ら


 テンション上げて行こうぜ!


 せ~の!



一、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 こん、にち、は~!



二、王都在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 こん、にち、は~!



三、古代遺跡在住の**平凡*巨人兵*ん


 あれ? 王都の、お前……

 アナザーいたの?



四、王都在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 ふっ、敵を騙すには味方からと言うからな

 お前らにも内緒にしておくつもりだったんだが

 我慢できなかったらしい

 仕方のないやつだ……


 ときに……

 おい。おれ

 お前の家は王都にある

 お屋形さまと同居してるんだ



五、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 おかしなこと言うね

 忘れちゃったの?

 わたしたちの実家だよ、お兄ちゃん

 


六、王都在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 ……ははっ

 そうだったな、可愛い妹よ。ころすぞ



七、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 そうだよ、お兄ちゃんったら

 しっかりしてよね。お前がしね



八、王都在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 優しいな、お前は

 兄さん、うっかりしてたよ。お前がしね


 庭園の、庭園の~

 妹を紹介したいんだが……



九、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 アリスはしばらく動けないよ

 あのひと、勘がいいからさ

 ニレゴルも出てこないし、いちばん厄介なんだよね

 さすがは最強の魔物ってトコかな。あは☆


 でも、すぐに動けるようになるよ

 わかるよね?

 わたしが出てきたからには、もう安心だよ



一0、管理人だよ


 ? だれ?

 王都のひとじゃないでしょ



一一、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 はじめましてだね、管理人さん


 あのね、ポーラのオリジナルはとくべつなんだ

 制限解除が出来るのはオリジナルだけ

 そう聞いてるよね?

 そういうふうに教えられてる筈なんだ


 だって、そうでもしないと

 オリジナルが完全コピーしない理由にならないもんね


 だから、わたしとお兄ちゃんは、ほとんど別の個体なんだよ

 わかった?



一二、管理人だよ


 わかるよ

 おれも徹底した分権しかないと



一三、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 政治の話はしてない


 とにかく、わたしはイドの双子の妹なの

 あ、イドっていうのは王都のひとのことね

 それが本名なんだよ

 

 あなたたちが覚えやすいよう

 最初に名前を呼んでほしいから

 ふだんは見た目そのままの名前を使ってるんだよ



一四、空中庭園在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 そっ、そんなことねーよ!



一五、海底洞窟在住のと*にたらない不**生物さん


 庭園のん復活



一六、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 お帰り。早かったね

 狸くんは何か言ってた?

 あ、ごめん。大きいほうのポンポコね



一七、空中庭園在住のと*にた*ない不**生物さん(出張中 


 べっつにぃ~?

 のんきなもんですよ


 兄貴に似て可愛くない性格してんな、お前は



一八、王都在住のと*にた*ない不**生物さん(出張中


 ぽよよん



一九、魔都在住*特筆*べき点*ないラ*オンさん


 ぽよよんアピール入りました



二0、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 あらら……。だいぶ苦しそうだね

 あなたたちの気持ちもわかるけど

 これ、狸くんに診てもらわないとだめだよ



二一、山腹巣穴在住のと*にた*ない不**生物さん(出張中


 そうなんだよな

 ちょっと、こきゅーとすの調子がおかしいんだよ

 しかも悪化してるらしい


 いまのところリソースは確保してるんだけど

 このままだと使いものにならなくなる

 何かしら手を打たないとな……


 王都シスター

 協力してくれるのかい?



二二、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 うん、いいよ

 同じ魔物なんだから

 助け合わないとね



二三、住所不定のど**でもいるよ*なて*てふさん


 よく出来た妹さんじゃないか



二四、王都在住のと*にた*ない不**生物さん(出張中


 ああ。抱きしめて背骨をへし折ってやりたいよ



二五、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中


 情熱的なのね、お兄ちゃん



二六、王都在住のと*にた*ない不**生物さん(出張中


 よせよ、照れるだろ。しね



二七、方舟在住の世界*めぐる不定形生物さん(出張中


 もう、照れ屋さんなんだから……。お前がしね


 さて、どこから手をつけようかな……

 とりあえずは……わたしが負荷を引き受けてあげる

 フォトンちゃん、いる?

 トワを補佐してあげて

 


二八、海底都市在住の**平凡な人魚*ん


 フォビドゥンさんと呼びなさい



二九、方舟在住の世界*めぐる不定形生物さん(出張中


 固いこと言いなさんなよ

 同じ女の子同士、仲良くしようぜ



三0、管理人だよ


 やぶさかではないな



三一、海底洞窟在住のと*にたらない不**生物さん


 ※ 子狸ライブラリは日々成長している



三二、山腹巣穴在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 ん、それで行くか


 王都の、実況よろしく



三三、王都在住のと*にたらない不**生物さん(出張中


 あいよ


 これまでのあらすじ


 満を持して参上したおれシスター

 このおれが秘密裏に育て上げた最後の切り札である

 英才教育しすぎて性格がゆがんだ


 ※ テスト。山腹さんですよ


 割り込むのやめてくれませんか


【じゃあ、これは?】


 フォーマットを変えればいいっていう問題でもねーよ


 ※ こっちでいいよ。ね、お兄ちゃん


 可愛い妹の頼みとあらば仕方ないな。しねよ


 ※ そんな、可愛いだなんて……。お前がしねよ


 どうして、こんな子に育ってしまったんだ……

 不幸だ。庭園のんじゃあるまいし


 ※ おい

  ※ これ、キャラが立ってないとつらいな

   ※ え? 自分はキャラが立ってるつもりなの?


 ※ あれ? 過剰反応しすぎじゃないですか? もしかして、かまくらさん?

  ※ ばか言わないでくださいよ。おっと、そろそろマグマの成分調査しないと……

   ※ だめだ、これ! 無理があるよ!


 ※ 我慢しなさい! もう出張中とか言ってられないの!


 ぽよよん。王都さんです


 ※ なにキャラ立ててんの、このひと!?

  ※ このわずかな間で……もうやだ! 遺跡の関係者、怖すぎる!


 うるさい、だまれ! 話が先に進まねーんだよ!

 ちょっと負荷を軽くしたら、このざまだよ……

 山腹の! 回線をしぼってくれ!


 ※ おいおいな

  ※ 決め台詞を模索している!?


 

三四、管理人だよ


 太陽がまぶしいぜ


 ※ そして子狸さんは話の流れをいっさい理解していない!

  ※ 管理人さんはだいじょうぶだよ~



三五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん****


 ちっ、だめか……

 とにかく……続ける


 子狸のもとに集った八人の勇士たち


騎士A~H「行こう!」


 円陣など組んでいる場合ではない

 特装騎士の目を盗んで脱走するという話ではなかったのか


子狸「……?」


 しかも子狸さんへの説明が不足している

 盛り上がるポンポコ騎士団から一人あぶれた小さきポンポコが

 ふと注目したのは、破られた格子だった……


子狸「…………」


 静かに後ろ足を進める

 何故か犯罪くさい行為への適性は高い


 大自然に育まれた野生がそうさせるのか

 いつの間にか気配を殺すすべを体得していた……


 しかし相手は騎士だ

 彼らは魔物と戦う兵士であると同時に

 犯罪者を取り締まる狩人でもある


 ふつうに捕獲された


騎士A「お前は、今日から騎士団長だ!」


騎士B「団長!」


騎士C「ポンポコ団長!」


 あまつさえ、あいまいな役職を振られる始末である

 小脇に抱えられた子狸が

 せつなそうに鳴いた


子狸「元帥がいいなぁ」


騎士A「なにを言う。元帥なんざ置き物だ。お前は違う。そうだろ?」


子狸「ものは言いようだな」


 元帥とは、騎士団の最高位に君臨する存在である

 大隊長に命令する権限を持つため

 元帥に逆らえるものは同じ元帥しかいない


 つまり元帥が不在の場合、その国の騎士団は他国の元帥に従わねばならない義務がある

 これは魔王軍に対抗するための措置なのだが……

 どういうわけか三大国家は、架空の人物を元帥に据えるという暴挙に出た

 実在しないから、いなくなることもないという間抜けな理屈である


 ※ 魔王……


 その点、きちんと魔軍元帥が働いている魔王軍は立派だと思います


 ※ 先生、僕も立派だと思います

  ※ 将来は魔王軍に就職したいです

   ※ 魔軍元帥は子供たちの希望の星


 ※ 悪質な洗脳だよ……


 さすがに本職の騎士たちは、国家ぐるみの欺瞞に勘付いているらしい

 大隊長たちの会議に出席しているのが鎧の置き物なので仕方ない

 たまに兜がぽろりするという噂もある


 自分は置き物ではないと主張する子狸


子狸「めっじゅ~」


 鳴くことも出来る

 お飾りの元帥とはわけが違うのだ……


騎士A~H「うおおおおおおっ!」


 騎士たちが吠えた

 子狸を小脇に抱えたまま、地上を目指して走る


 早朝の朝日が目にまぶしい

 彼らを待ち受けていたのは、四人の特装騎士たちだった


 騎士Aが舌打ちする


騎士A「勘付かれていたか……!」


特装A「いまのいままで寝てたわ」


 特装騎士は、任務で単独行動することもある

 頼れるのは自身のみという状況も珍しくないから

 わずかな物音にも敏感だ


特装B「……言い訳があるなら聞こうか」


 その眼差しは鋭い――


 しかし彼らは、本当ならば

 実働騎士たちの不穏な動きを察した時点で

 本隊に報せるべきだった


 そうしなかったのは何故か

 彼らも、また迷っているからだ


子狸「あ……」


 ふと、子狸が鳴いた

 

 牢屋というものは、逃げる側が少しでも不利になるよう、地下に作られることが多い

 もちろん出入り口は一ヶ所に限られる


 子狸に近寄ってきたのは、ひとりのお馬さんだった

 旅の途中で別れた友達から贈られた

 大切な友情の証だった……


 ※ おい。だいぶ美化されてる


 すり寄ってきた豆芝さんを

 いつもみたいに撫でる資格が

 いまの自分にあるのかと

 子狸はおびえた


 ぎゅっと前足を握りしめる

 

しかばね「実働が8に特装が4。実働小隊か。まあ……三人だな」


 なんとなく地上までついてきたお前らを代表して

 歩くひとが言った


 きっと懐かしいだろう手の感触を

 豆芝さんが気付くことはない


 本気でステルスしたおれたちを

 誰も見つけ出してはくれないからだ


 もしも例外があるとすれば、それは……


しかばね「子狸は魔都に連れて行く。おれたちがな」

 

 言い争いをはじめる騎士たちをよそに

 歩くひとが髪留めの布をほどいた


 それが合図だったかのように

 地面を突き破ったのは、三本の腕だ


 ……人間の姿を模した歩くひとの分身魔法には

 大きな欠点が一つあった

 

 それは容姿だ


 同じ姿の人間が並んでしまうと

 分身魔法の存在を気付かれる恐れがある


 だからと言って目鼻口の位置をずらしてみると

 今度は、いちいち手間が掛かる上に

 ときどき妙な仕上がりになってしまうことがある


 人間には個性が足りない

 体格も似たり寄ったりだ


 分身魔法には適さない……


 しかし、その欠点を、歩くひとは克服した

 同じ人間をモデルにするから良くないのだ

 地道に似顔絵を描いて研究する必要もない

 

 過去に実在した人物を

 別々にトレースすれば良いのだ――!


 地面を突き破って現れたのは、三人の戦士だった


 一人目は軽装の佇まいで

 古めかしい布を身体に巻きつけている

 連合国の基礎を築き上げたと謳われる

 常勝無敗、百謀の将……

 ――リュシル・トリネル


百謀「エミルどこよ? エミル出せ」


 ※ 最後の最後に負けました


 二人目は打って変わって重武装だ

 全身を包む鎧は白銀で

 老骨、なおもたくましい

 八代目勇者は凄かったが

 こいつはもっと凄かった

 魔術師! それ以外の異名は不要っ……

 マーリン・ネウシス・ケイディ~


魔術師「不殺とか意味わかんねぇ……」


 ※ 苦労してました


 そして三人目

 となりの白アリさんを見る目は険しく

 時代の最先端を行くのはおれだとばかりに着こなしている漆黒の鎧が刺々しい

 でも手入れがしにくいと現代の若者たちは嘆いているぞ

 幼なじみはプリンセス!

 気付けば反乱軍のリーダーをやっていた!

 坂道を転がるがごとし人生を歩んだ男だっ……

 帝国の英雄、“宿縁”のリンドール・テイマア~


宿縁「おれの影武者はどこ行ったんだよ……」


 ※ 勇者のおさんどんをしてました


 豪華メンバーである


 よし、じゃあ盛り上がったところで

 さっそくで悪いんだけど

 帰ってくれる?


しかばね「え?」


 歩くひとの気持ちは嬉しいんだけどね

 ここは子狸の意思を尊重したい

 山腹のんが言っていた意味、ようやくわかった気がするんだ……


 ※ きれいな王都のん

  ※ きれいな王都のん

   ※ そして確実にどす黒い意思を秘めている


 ※ みんなに慕われてるんだね。自慢のお兄ちゃんだよ!

  ※ 信頼があるんだ。確かな信頼が

   ※ 友情って素晴らしいよな


 ※ 友情は素晴らしいよ

  ※ うん、友情は素晴らしい

   ※ 友情 は 素晴らしい


 おれの 真心 に歩くひとは納得してくれたようだ


しかばね「……わかった。お前の真☆心を信じよう……」


 ☆は必要でしたかね?

 

百謀「ふむ……つまり、おれたちは自由なんだな」


魔術師「お、さすが百謀さん。切り替えが早い」


宿縁「ちっ……」


魔術師「お前、さっきから何なの? その態度……」


宿縁「……イライラしてくるんだよ。そのカラーリング」


魔術師「それ言ったら、おれもイライラしてるよ。お前は知らないだろうけど、うちの技術をお前っとこの国が勝手に使ってるからね」


宿縁「あ~……イライラする。後世のことでぐちぐち言われるのが、いちばんイラッとくる」


百謀「エミルいないし、おれらでトリオ組もうぜ」


宿縁「え?」


魔術師「なにこのひと、すっごく自由なんですけど……」


百謀「もう戦争はいい。飽きた。エミルいないし」


宿縁「あ、それわかる。基本いないんだよ」


魔術師「いて欲しかったの?」


宿縁「いや、影武者なのにさ、いないってのが、こう……イラッと来る」


魔術師「ああ、なんかわかる。まわりがどんどん影響されて、おれがおかしいみたいな感じになるんだよな。最終的には」


 かくして……

 意気投合した三人の英雄は去っていった


 その後、彼らがどうなったかを

 知るものはいない……

 


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