表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
子狸ぃ……by魔物一同
14/240

「勇者さんの“漢”を見たい」part8

三二六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 これまでの☆あらすじ


 哀しみを胸に

 鬼のひととの決戦に赴く子狸


 一方その頃


 鬼のひとの

 全部おれが

 勇者さんに牙を剥く……!


 やがて

 戦いの中

 ついに真の実力を発揮する勇者さん


 なんと彼女は


 あの悪名高き

 アリア家のお嬢さまだったのです……



 こんな感じで行ってくる



三二七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう。頼んだ


 しかし、どうしたものか……


 正直、おれとしては

 アリア家の人間と

 子狸が一緒にいることに

 不安を覚える


 もう少し具体的に言うと

 気分を害したからといって

 殺されても困る


 今からでも遅くないだろう……

 謎の覆面戦士ルートに路線を切り替えるか?



三二八、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 つまり

 子狸には

 ここで死んでもらうわけだな?


 おれは

 一向に構わないぜ



三二九、管理人だよ


 おい


 おい。お前ら


 そうやって

 事あるごとに

 おれを殺そうとするのは

 やめてくれませんか?


 アリア家ってのが

 なんなのか知らないけどさ


 だからって

 子供が親に似るとは限らないだろ?


 おれは

 彼女を信じたい



三三0、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お前が言うと説得力あるな


 さすが、鷹から生まれた鳶の言うことは違う


 でも、本当にいいの?


 お前

 自分で思ってるほど

 人を見る目ないよ?



三三一、管理人だよ


 え?


 なに言ってるの?


 おれだって

 大きくなったら

 きっと父さんみたいになるよ


 人を見る目

 あるし!



三三二、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 じゃあ

 エロ狸さんの強い希望により

 続行ということで


 ステルスモードに移行

 子狸を連れて

 洞窟内部を移動します



三三三、王国在住の現実を生きる小人さん


 おれK

 おれL

 おれM

 完全に沈黙しました


 一対多を想定した剣術だけど

 同時に捌けるのは三人が限度だな


 それでも

 年齢を考慮に入れると

 かなりのもの


 まあ、聖☆剣の性能によるところが大きいんだけど


 と、お前らに報告します



三三四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 切れ味は言うに及ばず


 重量がないし

 多少は変形できる


 経験を積めば、さらに上を狙える


 歴代最強の勇者になるかもしれんな……



三三五、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 だが

 いまはまだ

 しょせん

 ひよっ子


 意思力も技術も

 光るものはある

 が


 体力がない


 肩で息をしはじめた勇者に

 お前らチャンスです

 と、フィナーレへ向けて王国と帝国の橋渡しを担います



三三六、王国在住の現実を生きる小人さん


 帝国の!



三三七、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 おう!


 子狸、見えるな?


 いまから王国のが合図を出す


 そうしたら撃て

 勇者には当てるなよ


 わかるな?

 颯爽とおれ参上パターンだ

 練習の成果を出すんだ


 おい。お馬さんと戯れてる場合か



三三八、管理人だよ


 おう!


 違うよ

 このひと

 なんか

 やたらと

 おれに構ってくる


 なんなの?



三三九、王国在住の現実を生きる小人さん


おれ「なるほど。それが精霊の……なるほど。たしかに……人間には余る力のようだ」


勇者「……次は、あなたの、番ね」


おれ「そうだな。認めよう。予想以上だった」


 残存戦力の

 おれA

 おれB

 おれJ

 おれU

 を扇状に展開します


おれ「そして、十分だった。もはや余力は残っていまい……終わりだ。勇者よ」


 等間隔を保ったまま

 一斉に勇者へと襲いかかります


 いまだ!



三四0、管理人だよ


 おう!


おれ「チク・タク・ラルド・ディグひゃっ!?」


 あ



三四一、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 子狸さん

 一世一代の見せ場シリーズ


 別アングルから

 もう一度


 勇者の危機に

 おれたちの子狸さんが立ち上がる!


子狸「チク(圧縮)・タク(固定)・ラルド(拡大)・ディグ(射出)ひゃっ(奇声)!?」


 お馬さんに

 わき腹をぐりぐりされて

 まさかの大暴投でした



三四二、王国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 おれA跳躍!


 神がかった反射速度で

 頭上を飛び越してゆく子狸の魔法を

 インターセプトします!


おれ「ぐふうっ!」


勇者「……!」


 これをチャンスと見た勇者が

 おれBを撃破し、包囲を脱出


 必勝の陣形を崩されて戸惑う

 おれJと

 おれUを

 立て続けに聖☆剣の餌食にします


 さらに

 子狸の魔法で吹っ飛んだおれに

 素早く詰め寄り、聖☆剣を突きつけます


勇者「形勢逆転ね」


 あなたが思ってる以上に

 形勢逆転してますけどね……


 まったく

 最後まで

 ひやひやさせやがって


 子狸ぃ……



三四三、管理人だよ


 おれのせい!?


 だってお馬さんが……


 あれ?

 この剣、あの子の?



三四四、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 おう

 当初の予定では

 お前を連れた勇者が

 こっそり脱走することになってたから

 荷物一式を

 お馬さんに預けておいたんだ


勇者「最後のチャンスをあげる。言いなさい。誰に言われて、わたしを待ち伏せしたの?」


 精いっぱい威厳を保とうとしてるけど

 ブラフだな


 最後の力を振り絞ったんだろう

 足がガクガクいっとる


 しかし、なんとかなったな



三四五、王国在住の現実を生きる小人さん


 おう。一時はどうなることかと思ったぜ


 さて、どうする?


 もう、この際だし

 魔王に命令されたって

 はっきり言っちゃうか?



三四六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや、ボカしておいてくれ



三四七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お。庭園の


 何か考えでも?



三四八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう。他のひとたちと

 いろいろと相談した結果


 今回は中ボスを登場させようということになった


 そういうわけだから

 鬼のひと、頼む



三四九、王国在住の現実を生きる小人さん


 おう


 じゃあこうだ


おれ「ま、待て。焦るな。……言えば見逃してくれるのか?」


勇者「約束は守るわ。誇りに賭けて」


おれ「……よし。いいだろう。細かい経緯は知らないが、先日お前はおれとは別の種族と遭遇し、そこで精霊と出会い宝剣を授かった。そうだな?」


勇者「いいから。続きを」


おれ「待てって。おい、剣先を近づけるな。わかった。言う」


 今更だけど

 魔物を脅して情報収集って

 勇者がやっていいことじゃないですよね……


おれ「そいつもそうだが、おれたちは精霊の捜索を命じられて、ずっと前から動いてたんだ」


勇者「……精霊ね」


おれ「おう。おれたちに命令したのは……」


 あれ?


 魔王の側近って言っちゃっていいの?



三五0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 すまん

 そこらへんの設定は

 まだ詰めてない


 悪いが

 うまく誤魔化してくれ



三五一、王国在住の現実を生きる小人さん


 難易度、高いな……


 わかった

 やってみる

 が


 最悪、口封じで

 おれを殺してくれ



三五二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう。いつものやつだな


 任せろ

 合図を出してもらえれば

 紅蓮の炎で

 お前を彩る



三五三、王国在住の現実を生きる小人さん


 おう。そのときは派手に頼む


おれ「……本当に見逃してくれるのか?」


勇者「二言はないわ」


 本当かよ?

 疑わしいもんだぜ


 アリア家の口約束とか

 まったく当てにならん


おれ「……おれも詳しくは知らないが、高位の魔物だ。逆らえば命はなかった」


勇者「姿形は?」


 まあ、そう来るよな……


 どうする?



三五四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 問題ない


お前「黒装束の騎士みたいな格好をしていた」


 これで頼む



三五五、王国在住の現実を生きる小人さん


 おう。なかなかいいデザインだな


 言ったぞ


勇者「そう。じゃあ、さよなら」


 はいはい

 用済み用済み……


 誰だよ

 子供が親に似るとは限らないとか言ったやつは……


 あ、子狸さんでしたね

 これは失礼


おれ「き、貴様……」


勇者「常識的に考えなさい。あなたを見逃して、わたしになんのメリットがあるの?」



三五六、管理人だよ


 でも

 お前ら

 死なないし



三五七、王国在住の現実を生きる小人さん


 それ、お前の中での常識だからな?


 まあ、わかるよ

 ある種の無邪気な残酷さが

 勇者には必須


 前々回の勇者は散々だったからな


 そういう意味では適任なのかもしれん


おれ「おの、れ……」


 とりあえず

 断末魔って

 おれ退場しとく


 おつかれ


 結果だけ見れば

 目標達成したし

 幸先のいいスタートだな!


 お前ら

 ありがとう!



三五八、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 おう。おつかれ


 おれも

 あんまり長い間

 担当地区を離れると

 祖国の騎士団の方々が

 迷子になるから

 いったん戻るわ



三五九、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 おれは、どうするかな


 今日のスケジュールは

 丸々一日

 空けておいたし


 地道に祖国の街道沿いで

 ライフワークに励むとするか


 おつかれ!



三六0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 おつかれ


 子狸、お前

 可愛いな


 今度

 おれの家に

 遊びに来いよ



三六一、管理人だよ


 行きます



三六二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ


 海のひと

 お願いだから

 子狸に妙なこと吹き込まないで下さい……


 子狸さんが

 死んじゃう



三六三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おつかれ


 追伸


 聖☆剣を宙に散らした勇者さんが

 お馬さんと子狸に歩み寄る


勇者「無駄な時間を過ごしたわ。行きましょ」


子狸「うん。あ、でも、おれ馬に乗ったことないんだけど……」


 相乗りする気

 満々の子狸を

 勇者さんが切って捨てる


勇者「じゃあ、あなたは野宿ね。日が暮れる前に街につかないと、門の中に入れてもらえないわよ」


子狸「それは慣れてるから大丈夫なんだけど……。街で合流するの?」


勇者「……それだと意味がないでしょ」


 子狸に皮肉は通用しない


勇者「仕方ないわね……。後ろに乗りなさい。変なところさわったら、首だからね」


子狸「はい」


 下心を悟られないよう

 子狸は表情を引き締めた!


子狸「あ、そうだ。これ」


 自分が座るスペースを確保するために

 子狸はお馬さんの荷物から剣を取り出して

 勇者さんに手渡す


 受け取った剣を

 勇者さんは慣れた仕草で鞘に収納する


勇者「ありがと。それとね、わたしが勇者って、他の人には内緒だから」


子狸「え、そうなの? じゃあ、君のこと、なんて呼べばいい?」


 一向にタメ口を改めない子狸に

 勇者さんは一計を案じる


勇者「……あなたの名前は?」


子狸「? おれはノロ。ノロ・バウマフ」


勇者「わたしは、アレイシアン・アジェステ・アリア。お嬢さまと呼びなさい。いいわね?」


子狸「うん! わかった」


勇者「だめだ、こいつ……」


 こうして

 旅の一行に

 まんまと加わった

 子狸


 お前の明日が

 不安でならない



 注釈


・詠唱


 魔法には原始的な意思があり、術者が「こうして下さい」と指示を出すことで、はじめて魔法が発動する。

 その意思表示にあたるのが、魔法使いの「詠唱」である。

 攻撃魔法などは叫ぶことで威力が上がるとされているが、それは誤り。

 イメージに偏りがあるから結果的にそうなるだけで、イメージさえ完璧であれば叫ぶ必要はまったくない。

 ただし、完璧なイメージを構築できる人間はめったにいないので、あながち嘘とも言い切れない。

 これまでに度々登場した「詠唱破棄」というのは魔法の一種で、文字通り「詠唱を捨て去る」ことができる。

 本来ならば必須の詠唱を「なかったことにする」高度な魔法である。

 人間の開放レベルが3に対して、詠唱破棄はレベル4にあたるため、魔物の助力なくして人間が詠唱を破棄することは不可能だ。



・首


 おそらく失職という意味ではない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ