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【狂愛注意】ただ、ひたすら俺と君の物語を紡いでるだけ…  作者: ChaCha


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職務質問

深夜の、人気のない通り。


規則正しく響いていた君の足音が、

ピタリと止まる。


「こんばんは。少し、よろしいですか?」


警察官の制服。

そして、突然の職務質問。


君の肩が、ビクッと跳ねた。


振り返ったその顔は、

ひどく緊張して、強張っている。


「え、あ……はい……」


「ご協力ありがとうございます。そんなに怯えなくて大丈夫ですよ。

……免許証か保険証、持ってますか?」


「あ、えっと……」


震える手で、君が鞄を漁る。


カチャカチャと、鍵の鳴る音。


焦る君の姿を、俺は上からじっと見下ろしている。


……あぁ、可愛い。


怯えた小動物みたいだ。


「……これ、で……」


差し出された、小さなカード。


俺はそれを指先で受け取り、

街灯の光に透かすようにして見つめる。


年齢。

住所。

そして、名前。


(……やっと、知れた)


喉の奥が、熱く鳴る。


ずっと、ずっと遠くから見ていた君の、確かな情報。


それが今、俺の手の中にある。


「ありがとうございます。……うん、確認しました」


カードを返しながら、

俺はわざと、君の冷たい指先に触れた。


君が息を呑む気配がする。


「いくつか、簡単な質問に答えてもらえるかな?」


「は、はい……」


「お勤め先は、どちらですか?」


「〇〇駅の、近くの……」


「なるほど。こんな時間までお疲れ様です。

……この辺りってことは、一人暮らし?」


「……はい」


「そうなんだ。心細くないですか?」


警察官という、絶対的な『正義』の皮を被って。


俺は、君のプライベートに

ずかずかと踏み込んでいく。


警戒心でいっぱいのくせに、

権力に逆らえず、素直に答えてしまう君。


「……彼氏は?

こんな時間まで、迎えに来てくれないの?」


「……え?」


君が、戸惑ったように顔を上げる。


職務質問には関係のない、個人的な問い。


それでも、君は怯えた瞳を揺らしながら、

小さく首を横に振った。


「……いません」


(……よし)


心の中で、どす黒い歓喜が弾ける。


口角が上がりそうになるのを、

必死に噛み殺す。


「じゃあ、夜も遅いし、家まで送りますよ」


「えっ、あ、でも……そんな、申し訳ないです……」


「遠慮しないで?

……実は最近、この辺りで『通り魔』が出たばかりなんですよ」


ひゅっ、と。


君が短く息を吸い込む音がした。


「若い女性が狙われているんです。

一人で歩かせるわけにはいきませんから」


……嘘だけど。


君を脅して、俺に依存させるための、

ただの作り話だけどね。


「あ……あの、じゃあ……お願いします……」


「はい。任せてください」


静かな夜道を、二人で歩く。


俺の一歩後ろを、

君が縮こまるようにしてついてくる。


すぅ、はぁ、と。


君の甘い匂いが、夜風に乗って

俺の鼻腔をくすぐる。


(……たまらない)


君の歩幅に合わせて、ゆっくりと。


二人だけの、特別な時間。


やがて、古びたアパートの前で足が止まる。


君の部屋。

君の、帰る場所。


カチャッ、と。


君が鍵穴にキーを差し込み、ドアを開ける。


隙間から、生活感のある部屋の匂いが漏れ出した。


ドアノブを握ったまま、

君が振り返る。


少しだけ安堵したような、柔らかい表情。


「あの……夜遅くに、送っていただいて……

本当に、ありがとうございました」


深く、頭を下げる君。


俺を、自分を守ってくれた『いい人』だと

信じ切っている、その無防備な姿。


俺は、ゆっくりと一歩、君に近づく。


「……ふふっ」


「え……?」


「お礼を言うのは……」


君の背後にあるドアを、

バンッ! と手で押さえる。


退路を断たれ、

君の瞳が大きく見開かれた。


「俺の方だよ」


ここまで案内してくれて。

俺を、君のテリトリーに招き入れてくれて。


ありがとう。


そのまま、俺は君の華奢な体を

暗い部屋の中へと押し込んだ。


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