永遠に、俺のものになる瞬間。
君が、息をしている。
すぅ、はぁ、と。
その音が聞こえなくなるのが、怖かった。
俺の存在が、君の世界から消えてしまうのが、何よりも恐ろしかった。
だから、生かしておいたのに。
俺の腕の中で、大事に、大事に。
あの日の誓いを、覚えているだろう?
俺以外のぬくもりは、いらないって。
……なのに。
君の瞳は、どこを見ていたの?
俺の知らない、君の顔。
俺の知らない、君の声。
夜の静寂の中で、君は誰を想っていたんだ。
その細い指先は、誰の熱に触れたんだ。
ダメだよ。
それはもう、俺の知っている君じゃない。
君を汚す、すべての記憶。
君の視線を奪う、すべての存在。
俺以外のものになるくらいなら。
この世界ごと、壊してあげる。
冷たい部屋。
逃げ道なんて、最初からどこにもない。
壁に押し付けた君の首筋に、そっと両手を這わせる。
トクン、トクン、と。
ひどく速い、君の鼓動。
「……誰かのものになるくらいなら」
指先に、ゆっくりと力を込める。
「いっそ、この手で……っ」
ぎゅうっ、と。
「……っ、ぁ……!」
君の喉から、掠れた音が漏れる。
酸素を求めて、俺の腕を掻き毟る小さな手。
「泣かないで。……怖がらないで」
零れ落ちる涙を、唇で掬い取る。
しょっぱい。君の、絶望の味。
「よそ見してる暇なんて、ないんだ。……ほら、俺を見て」
俺が、どんなに愛しても。
君の心は、俺の届かない場所へ行こうとした。
俺の声は、もう届かないの?
俺の愛じゃ、もう足りなかったの?
なら、もう、心なんていらない。
狂おしいほど、愛してる。
死ぬほど、愛してる。
誰にも渡さない。
絶対に、離さない。
君の最後の吐息。
甘く、掠れたその息を、俺が全部、吸い込んであげる。
「……さよならは、言わせないから」
次第に、抵抗する力が弱まっていく。
君の瞳から、光がこぼれ落ちていく。
俺だけを映したまま。
永遠に、俺のものになる瞬間。
……あぁ、綺麗だ。
君のすべてを、俺が解体してあげる。
誰にも触れられたくない。
君の血も、肉も、骨も。
俺以外の熱を知ったその身体ごと、全部。
逃げられないよ。
ずっと、俺の記憶の中で、俺だけのものになるんだ。
完全に、力が抜けた君。
重くなった身体を、深く、深く抱きしめる。
もう、君はどこへも行かない。
もう、誰にも触れさせない。
見つけた。
俺たちの、最後の居場所。
冷たくなっていく君の頬に、そっとキスを落とす。
「……おやすみ。俺の、愛しい人」
ずっと、ずっと。
この冷たい部屋で。
俺の腕の中で。




