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【狂愛】ただ、ひたすら俺と君の物語を紡いでるだけ…  作者: ChaCha


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12/13

婚活アプリで知り合った君。

最初は、少しだけ不安だった。


画面越しの記号のような言葉が、どこまで本当なのか。


けれど、重なる体温と、君の穏やかな微笑みに触れるたび、俺は確信していったんだ。


――この人となら、ちゃんと生きていける、と。


将来を誓い合うようになってからも、俺たちの時間は、驚くほど静かに、清らかに流れていた。


指先を絡めるだけ。

唇を重ねることさえ、あえて避けてきた。


それで、よかったんだ。


君という存在を、心から、大切な人として守りたかったから。


壊さないように。

汚さないように。


まるで壊れやすい硝子細工を扱うように、

慎重に、慎重に触れていた。


久しぶりのデートの日。


最近、何かが、決定的に「違って」いた。


返信の文字に混じる空白。

デートに誘うたび、滑り落ちるように逸らされる時間。


けれど、俺はそれを「忙しさ」という都合のいい皮で包み隠した。


目の前の君は笑っていたし、俺の前では、いつだって無垢に、可愛らしく微笑んでいたから。


居酒屋からの帰り道。


夜の空気は、肌を刺すように冷え込んでいた。


君が俺の袖を、小さく引いた。


「ねぇ――◯◯」


俺は、足を止めた。


心臓が、鼓動を忘れ、嫌な跳ね方をした。


……違う。


それは、俺の名前じゃない。


俺は何も言わなかった。


……喉の奥が固まって、何も言えなかったんだ。


君も、自分のしでかした間違いに気づかない。


何事もなかったかのように、隣で無邪気に笑い続けている。


そのあとの帰り道、君の唇から、

俺の名前が零れ落ちることは、二度となかった。


それからだった。


君のスマートフォンが、

俺を狂わせる心臓みたいに、気になり始めて仕方がなくなったのは。


眠れなくなった。


夜中に何度も、跳ね起きる。


暗闇の中、耳の奥で、あの瞬間がノイズのように繰り返される。


別の男の名前。


俺を呼ぶのと同じ、甘ったるい君の声。


間違いにすら気づかない、あの、残酷なまでに無関心な笑顔。


耐えきれなくなって、病院へ行った。


不眠の相談をして処方されたのは、一時の安らぎを与える睡眠薬。


指先で転がる、無機質な「白」。


その白さが、今の俺には、

嘘と虚飾で塗り固められた、君の「偽りの純潔」に見えた。


……次のデートの日。


個室の居酒屋。


君が、席を立った。


「ちょっと、お手洗い」


数秒。


それだけで、運命を書き換えるには十分だった。


俺はポケットから薬を取り出し、君のグラスの中へ落とした。


しゅわり、と。


透明な酒の中で、白い粉がゆっくり溶けていく。


静かに。


跡形もなく。


戻ってきた君は、俺の視線も知らず、それを一息に飲み干した。


「なんか……急に、眠くなってきちゃった……」


呂律の回らない声。


焦点の合わない瞳が、頼りなく揺れる。


俺は、笑った。


「大丈夫。送るよ」


タクシーを呼び、行き先を告げる。


その場所は、俺の部屋。


君を大切にしたいからと、一度も招き入れることのなかった、俺だけのテリトリー。


君は、ベッドの上で横たわっている。


静かな、規則正しい寝息。


その横で、俺は君のスマートフォンを手に取った。


顔認証。


眠っている君の顔に、冷たい液晶をそっと向ける。


一瞬。


画面が、呼吸をするように静かに開いた。


あっけないほど簡単に、

俺は君の「中身」に侵入した。


……あぁ。


やっぱり、まだ消していなかったんだね。


俺たちの出会いの場所、あの婚活アプリ。


もう必要ないよね、なんて思いながら、

俺の指は、吸い込まれるようにアイコンを叩いた。


通知マーク。


一つ。二つ。三つ。


『次はいつ会える?』

『昨日の君、最高だったよ』

『まだ抱き足りない……はやく会いたい』


……は?


文字が網膜に焼き付き、理解するまでに数秒の空白があった。


メッセージアプリを開けば、そこには――。


複数の男の名前。


同時進行。


俺に送ってきたのと同じ、甘い、毒のような言葉の数々。


俺には、手を繋ぐことさえ躊躇わせていた君が。


「大切にしてほしい」と、清純を演じていた君が。


別の男たちの前では、こんなにも安っぽく、自分を切り売りしていたんだ。


「……あははっ」


乾いた笑いが、喉の奥からせり上がった。


暗い部屋で、スマホの青白い光だけが、俺の顔を幽霊のように照らしている。


俺の何がダメだった?


優しすぎたか?

慎重すぎたか?


違う。


……「自由」という名の毒を、与えすぎていたんだ。


俺は、その場でアプリを削除した。


男たちの連絡先を、一人ずつ、丁寧に、ブロックしていく。


全部。


消去。


君の世界から、俺以外の不純物を、

指先一つで「掃除」してあげる。


「……ダメだよ」


眠っている君の耳元で、熱い吐息とともに囁く。


「これは、アウトだ」


俺は君を選んだ。


この命を、将来を、すべて懸けるほど、君だけを選んだんだ。


だから――


君も、俺を選ばなきゃいけない。


君の首筋に、指先を這わせる。


震えるような、熱い体温。


眠っているだけなのに、俺をこれほどまでに狂わせる。


この部屋には、縄もない。

君を縛る物理的な鎖もない。


でも、そんなもの、もう必要ない。


精神を。

記憶を。


俺という存在なしでは、一秒の呼吸さえままならないという依存を。


逃げられない鎖にすればいい。


俺は、君の財布から身分証を抜き取った。


そのまま、重厚な金庫の中へ放り込み、無機質な金属音とともに鍵をかける。


明日、目を覚ましたとき。


君が最初に見るのは、俺だけだ。


……


君を証明できるのも、この世界で俺だけなんだよ。


「困ったな……」


ベッドの横に腰掛け、君の寝顔をじっと見つめる。


裏切りを知ってもなお、狂おしいほどに愛おしい。


「どうしてやろうか……」


君の耳元に顔を寄せ、空気さえ震わせる低い声で、小さく笑った。


「もう、普通の愛し方じゃ、君を繋ぎ止められないよね」


少しだけ、間を置く。


俺の心臓の音が、君の耳に届くほど近く。


そして――。


「これから教えてあげる」


君の世界が、俺という色だけで満たされる方法を。


ゆっくりと。


逃げ場がなくなるまで。


一生をかけて。


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