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【狂愛注意】ただ、ひたすら俺と君の物語を紡いでるだけ…  作者: ChaCha


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1/13

酔った君に、ひとめぼれしたんだ。

静かなホテルの部屋。

シーツの擦れる微かな音と、君の規則正しい寝息だけが響いている。


……可愛い。


アルコールで熱を帯びた、ほんのり赤い頬。

無防備に開かれた唇。


あんなに酔い潰れて、見ず知らずの俺にすんなり着いてくるなんて。


ひとめぼれ、だったんだ。

こんなにも甘くて、柔らかくて、俺を狂わせる熱。

さっきまで俺の下で泣いて、喘いで、俺の全部を受け入れてくれた君。


でも、俺はまだ、君の何ひとつ知らない。


名前は?

どこに住んでいるの?

普段は、どんな声で笑うの?

知りたい。

君の、全部を。


サイドテーブルに置かれた、君のスマートフォン。

そっと手に取って、真っ暗な画面を向ける。

すぅ、すぅ、と心地よさそうに眠る君の顔の前に。


……カチッ。


あっけなく開錠されるホーム画面。


顔認証、なんだね。

無防備すぎるよ、君は。

俺みたいな男に捕まったら、どうするつもりだったの?


……ああ、もう、捕まってるか。


仄暗い部屋の中で、液晶の光が俺の顔だけを青白く照らす。

まずは、プロフィール。


……ふふっ。


家、近いね。

俺の部屋から、歩いていける距離だ。

誕生日も、俺とひと月しか違わない。

運命、ってやつかな。

それに……すごく、可愛い名前。


何度も、声に出して呼びたくなる。

俺の連絡先、勝手に入れておくよ。


これでいつでも、繋がるね。


次は、アルバム。

君の日常。君の視界。君の、生きてきた世界。


あ……。

ははは!

可愛い猫、飼ってるんだね。


君が撫でてる動画、すごく優しくて、とろけるような甘い声が出てる。


……ちょっと妬けるけど。


でも、いいよ。

今日から俺も、犬派から猫派に変わるから。

君の好きなものは、全部、俺の好きなものになるんだ。


……ん?


画面をスクロールする親指が、ピタリと止まる。


こいつ、誰。


写真の中で、君の肩に腕を回してる男。


サークルの飲み会?

職場の同僚?


それとも……。


……邪魔、だな。


ブロック、して。

消去。


あ、この着信履歴の男も。

これも、これも、これも……。


ピ、ピ、と無機質なタップ音が響く。


君の視界に映る必要のないゴミは、俺が全部、綺麗に掃除してあげるからね。


君の時間は、もう全部、俺のものなんだから。

これで、君のスマホから、不快な虫の羽音は消えた。


液晶を伏せて、薄明かりの中、もう一度君の寝顔を見下ろす。


そっと前髪を撫でると、

君は「ん……」と小さく身じろぎをして、俺の手に擦り寄ってきた。


……あぁ、可愛い。


どうしようもなく、愛おしい。


俺が好きになった、君。

俺が見つけた、俺だけの、君。


もう、誰にも、絶対に見つからないようにしてあげる。



――……んっ。

微かな声。


シーツが大きく擦れる音と共に、君が、目を覚ました。

焦点の合わない瞳が、ゆっくりと俺を捉える。


そして、昨夜の記憶が繋がったのか……

君の華奢な肩が、ビクッと大きく跳ねた。


怯えたように、毛布を胸元に引き寄せる。


「……あ……、」


震える君。

潤んだ瞳が、部屋を見回して、戸惑って、

そして慌ててベッドから逃げ出そうとする。


ガシッ。


細い腕を、強めに掴む。


「どこへ行くんだ?」


「……っ、帰ら、なきゃ……」


「ダメだよ」


力任せに引き寄せて、再びベッドに押さえつける。


「俺のそばにいてよ」


「……っ、は、なして……!」


「足りない。……全然、まだ足りない」


抵抗する君の首筋に顔を埋めて、深く、その匂いを吸い込む。


「まだ、君を抱き足りないんだ」


「……こんな、そんなつもりじゃ、なかったのに……っ」


泣きそうな声で、君が首を振る。


俺は、ゆっくりと顔を上げて、君の怯えた瞳を真っ直ぐに見つめ返した。


「そんなつもりじゃなかった?」


ふっ、と笑みがこぼれる。


「じゃあ、どんなつもりで……あんなに俺に抱かれて、悦んでたの?」


「……っ!?」


「声、枯れるくらい鳴いて。俺の背中に爪立てて……もっと、って強請ったのは、君だよね?」


図星を突かれて、君の唇がわななく。


その熱い頬を、指先でゆっくりと撫でた。


「俺さ……初めてなんだよね。こんな風に、ひとめぼれしたの」


そう、初めて。

君の全部が欲しくて、頭がおかしくなりそうなくらい。


「……だから、責任、とってくれるよね?」


「……かえ、して……私の、スマホ……」


震える声で懇願する君の視線が、空っぽのサイドテーブルを彷徨う。


「ん? ああ」


俺は自分のボストンバッグを顎でしゃくった。


「君のスマホも、財布も……全部、俺の鞄の中」


さぁっ、と君の顔から血の気が引く。


「俺が持ってるから。……もう、どこにも逃げられないよ」


壁掛けの時計を見る。


「ああ、時間だね」


怯えて固まる君の身体を、毛布ごと抱き上げる。


「一緒にシャワーしようか? ほら、行こう」

「や……っ、いやっ、離し……っ」


暴れる君の耳たぶを甘く噛んで、バスルームへと歩き出す。


――そして、タクシーの車内。

行き先は、俺の家。


君の家からも歩いていける距離にある、俺のテリトリー。

俺の腕の中に無理やり閉じ込められたまま、君はずっと俯いて、小刻みに震えている。


「……いいの?」


頭上から、そっと囁きかける。


「返して欲しくないの?

 スマホも、財布も……元の、君の日常も」


ビクッ、と君の肩が揺れる。


怯えきった君の頭を、いい子だねって撫でてあげる。


でも、もう遅いよ。

まぁ、俺の部屋のドアを開けて、中に入った瞬間――


荷物どころか、もう……

君のすべてを含めて、二度と返すつもりはないんだけどね。




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