9.母襲来
結局、折角旅行に出かけたにもかかわらず、ユーフェミアはその大半の時間を部屋の寝床で過ごした。初日以外は海にも行かず、街歩きもせず、食事の時以外はひたすらに寝て過ごした様なものである。こいつは本当に何をしに来たんだ? とトーリは思った。
尤も、ユーフェミアは元々そういう風に寝ているのが好きな娘だから、場所が変わったところで張り切って何かをしようという気概はあまりないのかも知れない。
ユーフェミアがそうだったからといって、トーリや使い魔も同じ様に過ごしていたわけではない。銘々に遊びに出たり、買い物をしたりした。一応ユーフェミア的には福利厚生がどうのこうのという建前だったから、ある意味では間違っていない。
そんな風に瞬く間に三日目になり、昼前に宿を引き払って、町で昼食をとって帰って来た。転移魔法で一瞬だから旅情というものはない。
「やれやれ、何か変な旅行だったな」
大荷物を抱えたトーリはひとまず屋敷に入って買って来たものを整理した。食材や調味料、香辛料など、面白そうなものをあれこれと買い込んだ。生鮮品も多いから、数日の間は食卓が華やぐ事だろう。
「はー、やっぱりここが落ち着くわい」
「我が家のにおいだー」
とシノヅキとスバルはソファに腰を下ろして伸びをしている。すっかり地上に馴染んでいる幻獣たちに、トーリはやや呆れた。
ユーフェミアは食卓について、べたっとテーブルに顎を載せた。
「お茶飲みたい」
「ああ、じゃあお湯沸かすからちょっと待ってろ」
「トーリちゃん、お姉さんにもくれるぅ?」
「お、おらもお願いしてもええだか?」
「いいよ。スバル、暖炉に火ぃ入れて」
「ふぇーい」
気の抜けた返事をしながらも、スバルは指先から火を飛ばして暖炉に火を入れた。トーリがそこに薬缶をかけた。
「紅茶? ハーブティー?」
「紅茶」
「ハーブティー」
トーリはポットにそれぞれの茶葉を入れて、カップを出して並べた。
お湯が沸くまでまだ時間がある。トーリは外に出て、大騒ぎしている鶏やアヒルたちに餌をやり、畑に水をまいた。期待した夕立はなかった様で、やや乾燥気味である。尤も一日放置しただけだから、枯れたものはない様だった。
シノヅキの毛やスバルの羽根を柵にぶら下げておいたおかげか、留守中にも野生動物は近づかなかった様で、鶏もアヒルも無事だし、畑も荒らされていない。出かける前と同じである。
「ま、これでまた日常に戻って来たって事だな」
と井戸から水を汲み上げていると、庭先で急に魔法陣が光った。複雑な幾何学模様が宙に幾重にもなり、それがぐりぐりと動いて回るのである。
「え、なんだこりゃ……」
トーリがバケツを持ったまま呆然としていると、不意に魔法陣が弾けた様に消え、女性が一人すとんと地面に降り立った。目深にかぶった茶色い三角帽の下から燃える様な深紅の髪の毛がなびき、夏だというのに帽子と同じ茶色の分厚いローブを着こんでもこもこに膨れている。
女性はやれやれと肩を回した。手には酒瓶が握られている。
「あー、地上久しぶりだから演算をミスったわ……迷いまくっちゃった」
と言いながらトーリに目を留めて首を傾げる。
「どなた?」
「え? いや……トーリ、ですが。あなたは?」
「わたし? 元気だよ?」
「あ、そうですか……えぇと……」
何だか掴みどころのない女性は手に持った酒瓶をぐっとあおり、屋敷を見、庭を見、その向こうに広がる畑や鶏小屋、池を見た。怪訝そうに首を傾げる。
「おっかしいなあ。ここ、ユーフェの家じゃなかったかしら? 何だか小奇麗になってる様な……それともまた演算をミスった?」
「い、いや、ここはユーフェの家ですが……あの、あなたはユーフェとはどういった」
とトーリが言いかけた時、屋敷の扉が開いて、ユーフェミアがひょこっと顔を出した。
「何、今の魔力」
と言いかけて固まった。女性がぱあっと顔を輝かした。
「ユーフェ!」
と駆け寄って、ユーフェミアが何か言う前に、扉から引っ張り出す様にユーフェミアを抱き寄せた。分厚いローブに顔がうずまって、ユーフェミアはむぎゅむぎゅ言った。
後から出て来たシシリアが「あらあら」と言いながら頬に手を当てる。
「エルネスティーネじゃないの」
「あらシシリア。あなたも地上にいたのね。ここ、どうしちゃったの? 前に来たのは随分前だけど、すっかり綺麗になっちゃって」
抱きしめられていたユーフェミアが、もそもそと顔を上げてふうと息をついた。
「母様、何の用なの?」
「……え? 母様?」
トーリは思わず間抜けな声を出した。
エルネスティーネはむふんと鼻を鳴らし、よしよしとユーフェミアを撫でて、顔に頬ずりした。
「うふふふ、娘に会いに来るのに理由が必要?」
ユーフェミアは嫌そうに顔をそむけた。
「お酒臭い。いつも飲んでばっかり」
「だっておいしいんだもん。ユーフェも飲む?」
「いらない。お酒嫌い。暑い。はなして」
「もー、反抗期なのー? 母様悲しいわー」
「うにゃにゃ」
ぐりぐりと頬ずりされ、ユーフェミアは身をよじらして抵抗した。しかしエルネスティーネはちっとも意に介さない。ユーフェミアを抱きしめたまま、酔っ払いの足取りでそこいらをふらふらと動き回っている。
親子の対面の蚊帳の外で、トーリはシシリアに話しかけた。
「あの……お母さん、なの? あの人。ユーフェの?」
「ええ、そうよぉ。“赤剣の魔女”エルネスティーネ。昔は有名人だったみたいだけど、今は飲んだくれの引きこもりねぇ」
とシシリアはくすくす笑う。トーリは呆気に取られて、逃げようとするユーフェミアを捕まえ続けているエルネスティーネを見た。
どうやら本当に親子らしい。
成る程、確かにそう言われて見てみると、顔立ちなどは実に似通っている。
ユーフェミアの透き通る様な白髪に対し、エルネスティーネは燃え立つ様な赤髪だが、どちらもつやつやとして手触りがよさそうだ。
目元は、ユーフェミアがやや垂れ目がちなのに対し、エルネスティーネは勝気にやや吊り上がっている。しかし鼻筋や口元などはそっくりだ。そうしてユーフェミアの母親であるにしては異様に若かった。せいぜい二十代後半くらいにしか見えない。
「……お、お若いですね」
と間の抜けた事をトーリが言うと、シシリアがけらけら笑った。
「大魔法使いですもの。人間でも魔法を極めると肉体の年齢くらいどうにでもなっちゃうものねぇ。でもお酒ばっか飲んで不摂生だから、もっと若くできる筈だけどあれくらいなのよ」
「は、ははあ……」
娘が天才なら母親も相応の天才の様だ。ジャンの様に、魔法の事故で年を取らなくなる事はあっても、自らの魔法で加齢を止めるというのは、やはり大魔法使いや賢者といった領域に入って来る事柄らしい。
(……あれ? もしかしてユーフェも実年齢は……?)
と考えかけたが、そんな事を気にしても仕方がないとトーリは頭を振った。
そこに騒ぎを聞きつけたのか屋敷の中からシノヅキとスバルが出て来た。二人ともエルネスティーネを見て目を丸くする。
「なんじゃい、妙な気配じゃと思うたらエルネスティーネか。飲んだくれの引きこもりが何でこんな所におるんじゃ?」
「さては家を追い出されたんでしょー? ぷぷー、ださー」
「わたしが追い出されるわけないでしょうが! こっちから逃げ出して来てやったのよ。エセルバートの奴が慌てる様が目に浮かぶわ」
とエルネスティーネは手に持っていた瓶をぐいとあおった。仕草が豪快で、口端から酒が筋になって垂れた。ようやく解放されたユーフェミアは逃げる様にトーリの方に駆けて来た。
「トーリ」
「お、おう……お母さん、なんだよな?」
「うん」
と言ってトーリの後ろに隠れる様に逃げ込んだ。エルネスティーネが怪訝そうな顔をしてトーリを見た。
「それで、あなたは何者? ユーフェ、説明しなさい。母様その子知らないわよ」
ユーフェミアはこそこそとトーリの陰から顔だけ出した。
「わたしのお婿さん」
「え! ずるい!」
「え? ずるい?」
「あ、間違えた! いつの間に!」
シノヅキが呆れた様に口を開いた。
「もう一年ばかり前からじゃ。おぬし、外界と没交渉過ぎじゃ」
「引きこもり過ぎでしょー。娘の状況全然知らないとか、ざこざこお母さんじゃーん」
「あー、うるさいうるさい……チョージ君」
「トーリです」
「トーリ君。ふーん、なるほど……」
とエルネスティーネはずいとトーリに顔を近づけて、覗き込む様にして上へ下へまじまじと見た。酒臭い。トーリは気まずそうに視線を逸らし口をもごもごさせた。
「ふふん、初心な反応ね。こらユーフェ、母様から隠れるんじゃないの」
「にゃ」
引っ張り出されたユーフェミアは抵抗する様にトーリの腕に抱き付いた。それでもエルネスティーネがぐいぐい引っ張るから、トーリまでよろめく羽目になる。咄嗟にユーフェミアを支える様に足を突っ張った。
「ちょちょ、そんな力任せに……」
「トーリ、助けて」
「待て、抱き付くな! まとめてコケるぞ!」
「もー、見せつけてくれちゃって! この! 若人どもめ!」
エルネスティーネはへらへら笑いながらユーフェミアをくすぐる様に引っ付いた。ユーフェミアはトーリに縋り付いたたまま暴れるから、三人でもつれあう様になる。このままでは全員で転びそうだ。
「駄目ですってば! ちょっとタンマ!」
「シノ、母様何とかして……」
「へいへい」
面白そうに眺めていたシノヅキがひょいとやって来て、エルネスティーネの首根っこを引っ掴んで、事もなげに引っぺがした。そうしてそのまま肩に担いでしまった。エルネスティーネは手足をばたつかした。
「うおおっ、何すんのよシノ!」
「ったく、うるせえ酔っ払いじゃわい。おいユーフェ、どうするんじゃ。縛り上げて穴にでも埋めるか?」
「井戸に放り込もうよ」とスバルが言った。
「駄目よ、汚い。池にしましょうよ」とシシリアが言った。
「やめろーっ! そんな事されたら酔いが醒めちゃうでしょーが!」
そういう問題じゃないだろ、とトーリは額に手をやった。癖の強い御母堂である。
シノヅキはエルネスティーネを担ぎ直して、ぽんと一っ飛びに池のほとりに行った。
「頭を冷やすのじゃ」
そう言って土嚢袋でも放り投げる様にエルネスティーネを池に放り込んだ。
盛大に水しぶきが跳ね散らかって、驚いたアヒルたちが羽をばたつかして騒いでいる。
○
「えぇーっ! なにこれ! なんでこんなに片付いてるの!?」
屋敷に入ったエルネスティーネの第一声がこれであった。
食卓に向かって何か細工物をやっていたらしいセニノマが驚いて椅子から転げ落ちた。そうして全身から水をぼたぼた垂らすエルネスティーネを見て悲鳴を上げた。
「ぎょええっ! エルネスティーネでねぇか!」
「あらら、セニノマがいるじゃない。根暗の引きこもりが何してるのよ」
「おぬしが言える台詞じゃねえわ」
と言って、シノヅキがエルネスティーネを小突いた。
「うっさいわねー、偉そうに」
「あのー、服大丈夫ですか?」
遠慮がちにトーリが言うと、エルネスティーネはからからと笑った。
「夏だもの、涼しいくらいよ。まあ、ぐちょぐちょでちょっと気持ち悪いわね。脱いじゃおっと」
そう言って躊躇なくローブを脱ぎ捨てた。ローブの下は肌着である。トーリは慌てて目を逸らし、水を吸って重くなったローブを拾い上げた。
「えーと、洗っちゃってもいいですか?」
「あらー、嬉しい。よろしくよろしく」
エルネスティーネは機嫌よく笑いながら三角帽子を放り投げた。帽子はくるくると飛んで行って壁の帽子掛けに引っかかる。そうして下着姿のまま食卓の椅子を引き出して腰を下ろした。
「いやー、気が利くお婿さん捕まえたわねー」
「うん。トーリがここも片付けてくれたんだよ」
「なるほどね。ユーフェ、ちゃんと母様の言った事を守ったわね。感心感心」
「うにゃ」
ぐりぐりと撫で繰り回されて、ユーフェミアはよろめいた。風呂場に洗い物を放り込んだトーリは、エルネスティーネにタオルを手渡した。
「どうぞ」
「わあ、ありがとう」
「あとこれ羽織ってください」
とバスローブを手渡したが、エルネスティーネはけらけら笑いながら押し戻した。
「別にいいわ。いつも家じゃこの恰好だったもの。動きやすくていいわよ?」
この母にしてこの娘ありか、とトーリは嘆息した。
「……まあ、お茶でも淹れるわ」
煮立っている薬缶を下ろして、トーリはお茶の支度を始めた。ユーフェミアは椅子に腰を下ろして、向かいのエルネスティーネをジトっとした目で見た。
「それで母様、何しに来たの」
「だからぁ、愛娘に会いに来たの。しばらく世話になるからよろしくねー」
とエルネスティーネは髪の毛を束ね揚げながら言った。ユーフェミアはちょっと眉をひそめたが、母親が泊まる事には特に異論はないらしい。
「どうやって地上に来たの」
「新しい転移陣を試してみたのよ。うふふふ、まだ演算が不完全だったけど、とうとう大門や召喚アストラルゲート以外に安定して次元の壁を超える方法に辿り着けそうだわ」
とエルネスティーネはにやにやしながら、池に放り込まれても頑なに放さなかった酒瓶をあおった。そうして顔をしかめて瓶を振る。
「くそう、量が増えたラッキーと思ったら池の水の味しかしない……ユーフェ、お酒」
「ない。母様、お酒禁止」
「ぶー! セニノマ、お酒持って来なさい」
「ええ! おらが!?」
「セニノマ、駄目。母様の言う事聞かないで」
「はうぅ!」
「こらセニノマ。言う事を聞かないと後でひどいわよ」
「ひいぃ!」
セニノマは母と娘に板挟みにされて涙目になっている。そこにトーリがティーポットとカップを持って割り込んだ。
「お茶どうぞ」
「あら、どうも。ねえトーリ君。紅茶に垂らすブランデーとかあるでしょ」
「ありませんよ。うちじゃ誰も酒飲まないんで」
「ふーん、あなたも?」
「俺、下戸なんです」
「……ねえ、ユーフェ。トーリ君は料理も上手なの?」
「うん。トーリのお料理おいしい。だからシノたちもずっと地上に居座ってる」
「ははあ、なるほどねえ」
と言いながら、エルネスティーネはふらふらと立ち上がって台所に入って行った。嫌な予感がしたトーリは慌ててその後を追った。
「ちょ、ちょっとエルネスティーネさん?」
「やっほー、ブランデーみっけ! あ、ワインもあるー」
「それ料理用!」
「でしょー? あると思ったのよー、料理上手がお酒使わない筈ないもんねー」
「駄目ですよ!」
「いいからいいから。お、つまみによさそうなのもあるじゃないの」
エルネスティーネは愉快そうに笑いながら酒瓶を両手に持ってくるくる回っている。
下着姿の女性を組み伏せるわけにもいかないから、トーリは手を出しあぐねて右往左往した。そうして居間に取って返す。
「だ、誰かエルネスティーネさんを止めろ! 晩飯に差し支えるぞ!」
「なんじゃと。それは困る」
お茶をすすっていたシノヅキが立ち上がって台所に入った。
セニノマがユーフェミアにすがり付く様にしてぎゃんぎゃん喚いている。
「おらもう帰るぅ! エルネスティーネはおらをいじめるから嫌だぁ!」
「晩御飯食べないの?」
「た、た、食べたいだぁ……」
と言ってセニノマは床にへたり込んだ。何だかよくわからない。
台所の方は少しどたばたしていたが、やがて静かになった。どちらも全然出て来ないので、変だなと思ってトーリが台所を覗き込むと、二人して乾燥腸詰をつまんでいた。
「おいしいわね、これ。ピリッと辛くて」
「海で買って来た奴じゃ」
「なにやっとんじゃい!」
トーリは怒鳴った。二人は「むぐっ」と言って、ごまかす様に笑った。
「ほれ、おぬしも食うか?」
「シノさんコノヤロー。盗み食いするなら晩飯抜きだ!」
「なあぁ!? んな殺生な! 勘弁! 勘弁じゃ!」
「だったらさっさとエルネスティーネさんを連れてけ!」
「おう!」
シノヅキはエルネスティーネをひょいと担ぎ上げると、すたこらと台所から逃げて行った。
「……あっ、酒!」
エルネスティーネだけ連れて行かれても、それはそれで困る。トーリは慌てて居間に戻ったが、エルネスティーネは酒瓶を抱え込んで丸くなっていた。トーリが憤然と近づくと、涙目になっていやいやと首を振る。単なる酔っ払いの強情なのだが、妙に哀れを誘うのでトーリは脱力してしまった。
「……わかりました、ブランデーはあげますから、ワインは返してください。料理に使うんで」
「わーい、トーリ君話がわかるぅ」
「ただしラッパ飲みは駄目です。コップあげるからそれで」
「りょうかいでありまーす」
コロッと機嫌がよくなった。現金だなあ、とトーリは嘆息して、コップをエルネスティーネに渡してやった。
シノヅキとスバルがこそこそとささやき合っている。
「七面倒くせえババアじゃの」
「外面が若くても中身が耄碌してるんじゃ駄目だよねー」
「聞こえてるわよ、あんたたちー」
とエルネスティーネはにやにやしながらブランデーをなみなみとコップに注いでいる。
シシリアはとっくに相手するのをやめて読みかけの本を開いている。セニノマは部屋の隅の方に逃げていて、そこで壁に向かっている。細工物の続きをしているらしい。
やれやれと思っていると、ユーフェミアがトーリに抱き付いた。
「トーリ、あんまり母様を甘やかさないで」
「それはお前が頑張れよ。お前のお母さんに俺が厳しく当たれるわけないだろ」
「そうなの?」
「そうだよ。姑みたいなもんだろ」
「……えへ」
ユーフェミアは急に機嫌よくトーリの胸に顔を埋めた。はてと首をかしげていたトーリだが、ふと思い当たってハッとした。
(俺、やっぱりこいつと結婚する事考えてるじゃねーか……)
見えない包囲網どころの話ではない。こんな事では嫉妬心を起こすのもむべなるかなというところである。ここまで自覚的になりつつも、現実世界での行動の一歩が踏み出せない。何とも情けない話である。
何だか急に恥ずかしくなって、トーリは何ともなしにユーフェミアの頭をぐりぐりと撫でた。
ユーフェミアは嬉しそうにむきゅむきゅ言った。