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12.魔界と地上と


「倒れるだよーっ」

「はいはいはい」


 セニノマが押してぐらりと傾いた木の柱が、ごとんと音を立てて地面に転がった。虫が食ってぼろぼろになったそれは、倒れると同時にあちこちが崩れて、とてもではないが建材としては使えまい。

 額の汗を拭ってセニノマがからからと笑った。


「よーし、これで崩すのは全部崩しただよ」

「この辺は燃しちまうかな……」


 トーリは腐って崩れた木材を足でつついた。

 廃屋がなくなると、何だか随分広くなった様に見える。トーリは腰に手を当てて、どういうデザインにしようかと思案した。

 納屋を立て直す計画である。折角セニノマがいるのであるし、この機会を逃す手はない。

 これから回復薬の材料が増えて来れば、倉庫や作業場の様に使えるスペースは絶対に必要になって来る。早めに着工するに越した事はない。

 家の前の柵に腰かけて解体作業を眺めていたユーフェミアが、ぴょんと降りて駆け寄って来た。


「おっきなのがいい」

「ん? ああ、納屋ね。下屋も張り出して、その下で色々やれる様になると便利だよな」


 大きめの素材は家の中に運び込むのも難しい。屋根だけあるスペースがあれば、そこで作業ができる。

 セニノマが巻き尺を片手にうろつき回り、あちこちを計測していた。


「土台の石がこんだけで……屋根材はどうすっかなあ……瓦にするか、それとも草屋根もおもしれぇかも知れねえだなぁ」


 ぶつぶつ言っている。流石に魔界の職工キュクロプス族である。建築仕事が楽しくて仕方がないらしい。

 シノヅキたちは一向に戻って来ない。ユーフェミアが呼ばないわけではなく、まだ地上に来られないらしい。そのせいでここ数日はユーフェミアとセニノマとの三人での生活になっている。尤もセニノマは夜に帰って朝にまた来るから、夜はユーフェミアと二人きりなのだが。

 薬の材料も足りているから、さして使い魔を呼ぶ必要もなく、ユーフェミアは毎日のほんと暮らしており、トーリがその世話をしつつ、セニノマと一緒になって廃屋になっていた納屋をぶち壊した。そうしてようやく再建の目途が立ちつつある。

 屋敷の食卓に図面を広げて、セニノマが鼻息も荒くペンを走らせた。


「土台から腰辺りまで石を積むだよ。間から柱を立ち上げて、どうせなら二階も造るだ。階段をここに据えるか、もしくは梯子をかけるんでもいいかも知んねえだ。床は汚れ作業ができる土間部分と、物置用に綺麗にしておく上げ床部分をわけて」

「お、おう……」

「土間にはおっきな作業台欲しい。大型の素材を切り分けたりできるやつ」


 とユーフェミアが図面の一角を指さした。


「んじゃ、こっち側の扉を大扉にして、開け放すと下屋も含めて広く使える様にするだよ。ふひひっ、の、乗って来ただよ! 材の削り出しが楽しみだぁ……ふひっ」


 健全な話しかしていない筈なのに、セニノマが非常に怪しい。

 トーリは玉ねぎと葉野菜を細かく刻み、同じく小さめに切った肉と一緒に炒めた。香草と塩、スパイスで味を整え、少量のスープストックと乳、トマトペーストを加えて水分が飛ぶまで煮込んだそれを、パイ生地に包んでオーブンに入れる。


 先日完成して、もう使える様になった新型のキッチンストーブは、オーブン部分が広めに作られており、窯焼き料理が非常にやりやすくなった。煮炊きの方の熱がオーブンに回せる様に設計されているから、燃料の消費も抑えられて非常に便利である。

 ミート・パイを焼いている間に、茸と燻製肉でスープをこしらえ、茹でて皮を剥いた芋を、スパイスを絡ませる様に炒めた。仕上げに刻んだ香草を振りかける。

 大食いの使い魔どもがいないせいで、食事の量が随分減っているので楽である。ただ大量の飯をこしらえる事に慣れ切っていたトーリは、なぜだか物足りなさを感じた。


「飯できたぞ、運んでくれ」

「はぁい」

「わー」


 焼き立てのミート・パイはとても熱い。しかもかじると中の具がこぼれて来る。

 ユーフェミアもセニノマも、あちあち言いながら皿を添えてうまそうにパイを頬張った。


「んふふふ、今日のご飯もうんめぇだぁ……おら、こんなに幸せでいいんだべなぁ?」

「トーリ、スープおかわり」

「はいはい……って何やってんだよ、お前は……」


 トーリは手を延ばし、盛大にソースで汚れたユーフェミアの口元をハンカチでぬぐってやった。

 そんな風に午餐を終えて、セニノマは納屋予定地に繰り出し、トーリは食卓の片付けをし、風呂場の大掃除を始めた。

 それを横目に見つつ、食休みを口実にいつも通りソファでごろごろしていたユーフェミアの所に小さな魔法陣が浮かび上がった。


『おう、ユーフェ。わしじゃ』

「シノ? どうしたの?」


 ユーフェミアはころんと寝返って、上に浮かぶ魔法陣の方を見た。


『ちと面倒な事になってな。おぬしにも手伝ってもらいたいのじゃ』

「なんで。魔界の事なんかわたし知らないよ」


 とユーフェミアは素っ気ない。


『まあそう言うな。このまま放っておくと地上にも影響が出そうなんじゃ。すでにでっかいのが行っちまっとる様じゃし、逆に地上から来たモンスターが瘴気で凶暴化して、元から魔界にいるのより厄介な変異種になっとるんじゃ』

「シノたちには関係ないでしょ」

『そうじゃ、モンスターは問題ない。じゃがその穴が塞げないんじゃ』

「時空関係なの? そんなのシシリアがやればいいでしょ」

『それが駄目なのよぉ、ユーフェちゃん』


 とシシリアの声がした。


『昔魔界に来て、ずっと隠れ住んでた人間の魔法使いがいてねえ、そいつが一人で地上と行き来できる様に魔法を組んでたみたいなの。結局完成間近でその魔法使いは死んじゃったみたいなんだけど、残った術式が生きててね、何かの拍子で起動しちゃったのよ』

「それがどうしてわたしがやる理由になるの」

『その魔法使いが魔族を信用してなくてね、術式に魔族不干渉の防衛結界を何重にも張り巡らせてるの。これが結構強くて、わたしじゃ無理なのよ。ユーフェちゃんは半魔族だけど、そこまでの想定はしてなかったみたいで、ユーフェちゃんなら行けそうなの』


 魔界に何年も潜伏できるような人間だから、地上では賢者クラスの魔法使いだったのだろう、とシシリアは言った。

 ユーフェミアは面倒くさそうにクッションを抱いた。


「知らない。大体、人間じゃなきゃダメなら、母様を呼んで」

『エルネスティーネは駄目じゃ。酒瓶抱えて部屋に籠って出て来んのじゃ』

『無理やり引っ張り出そうとしたエセルバートが吹っ飛ばされて全治三日だってさ。だっさいよね、にしし』


 とスバルの笑う声がした。


『ああなったら梃子でも動かないもの。ユーフェちゃん、おねがぁい。これ終わらせないとわたしたちも地上に行けないのよう』


 ユーフェミアは口を尖らしてひょいと指を振った。魔法陣が消えて静かになった。

 風呂場から風呂桶をこする音がする。外からはセニノマの工具が木を削る音が聞こえている。

 ユーフェミアはしばらく仰向けに転がっていたが、やがて諦めた様に体を起こした。風呂場に行って中を覗き込む。


「トーリ」

「あー?」


 風呂桶を洗っていたトーリが振り向いた。


「どした?」

「ちょっと魔界に行って来るね。多分今日は帰らないかも」

「マジか。急用か?」

「呼び出し。何か手伝って欲しいんだって」


 と言いながらユーフェミアはローブを羽織り、帽子をかぶって杖を持つ。トーリは手を拭きながら出て来た。


「急ぐのか?」

「そうでもないけど、さっさと終わらせたいから」

「ちょっとだけ待ってろ」


 トーリは足早に台所に入り、冷蔵魔法庫(フリッジ)から冷肉と酢漬けの野菜、オイル煮にした小魚などを出した。パンにソースを塗り、具材を挟んだものをいくつもこしらえ、それをバスケット一杯に詰め込んだ。


「これ、弁当。夕飯にでも食え」

「わあ……」


 ユーフェミアは嬉しそうにトーリに抱き付いた。


「ありがと」

「お、おう……気をつけてな」


 トーリはぎこちなくユーフェミアの頭を撫でた。

 ユーフェミアは顔を上げてトーリを見、その胸元にぶら下がっていた転移装置兼通信装置をつまんだ。


「これでお話しようね」

「ああ、これがあったな……魔界と地上でもつながるのか?」

「うん。大丈夫」

「そっか。夕方連絡するから帰れるかどうか、教えろよな」

「うん」



  ○



 それでユーフェミアが行ってしまって、残されたトーリは風呂場の掃除を仕上げ、暖炉の灰を出して周りを片付け、灰を畑にまくついでに洗濯物を取り込み、鶏たちを小屋に戻して餌をやった。

 家に戻って洗濯物を畳み、床掃除をして、それから風呂桶に水を張り、沸かす。そうして夕飯の支度にかかる。ユーフェミアたちが戻って来るのかどうか、それはまだ判然としない。

 やがて日が傾き、西の空が赤くなる頃には暖炉の火も赤赤と燃え上がる。

 暗くなり出す頃にはセニノマが作業をやめて、道具をまとめて家に戻って来た。


「はー、今日も働いただよ。あれ、ユーフェはどうしただ?」

「なんか魔界に行ったよ」


 暖炉にかけたシチューを混ぜながら、トーリは答えた。


「あれま。夕飯に間に合うだべか?」

「さあ? ちょっと聞いてみるか」


 トーリはペンダントを手に持ってつまみをひねった。青い魔石が光る。


「おい、ユーフェ。聞こえるか?」


 少しして返事が来た。


『聞こえるよ』

「どうだ、用事は終わりそうか?」

『ううん。今夜は帰れなさそう。あ、お弁当おいしかったよ。シノたちも大喜びだった』

「もう食ったのか……」


 しばらく魔界の食事ばかりだったせいで、使い魔たちはトーリの作る食事に飢えていたらしかった。


『思ったよりも術式が複雑で、わたし一人でやらなきゃいけないから、時間がかかりそうなの。もしかしたら明日も帰れないかも』

「うーん、そうか。まあ、わかった」


 本当に忙しいらしく、それで通信が切れた。


「今日は帰れないってさ」

「はー、そうだか……んにゃっ!? そ、それじゃあ、おらとトーリさんの二人きりだか!?」

「まあ、そうなるな」


 セニノマは耳まで赤くなってやんやんと頭を振った。


「おおお、男の人と一つ屋根の下で二人っきりだなんて、おら、恥ずかしいべさ!」

「いや、セニノマさんも夜は帰るじゃんよ……」

「ユーフェがいないのに、どうやって帰ればええだか?」

「あ……いや、でも魔界にユーフェに呼んでもらえば?」

「おら、仮契約だからシノたちみたいにどこでもいいわけじゃねえだよ」

「えっ、仮とかそんなのがあんの?」


 曰く、基本的に使い魔は契約した主によって呼び出されたり送り返されたりする。しかしセニノマはシノヅキたちと違って本契約した使い魔ではない仮契約だから、召喚や送還にも制限がかかっている。

 つまり地上に来るには自分の工房の魔法陣を通じてユーフェミアに呼んでもらい、地上から魔界に戻るにはユーフェミアに直接ゲートを開いてもらわなければいけない。他三匹の様に、どこでも自在にユーフェミアのいる所に呼び出せるわけではないそうだ。

 そういうわけでユーフェミアが魔界にいる今、セニノマだけでは召喚用のアストラルゲートは開けないのだった。

 そういえば初めて来た時もシノヅキが半ば無理やりに引っ張って来たんだったな、とトーリは思い出した。


 盲点だったなあ、とトーリは額に手をやった。

 しかしここでの生活に慣れ過ぎて、今更セニノマごときにドキドキするトーリではない。いつも通りにすごせばいいだけの話である。寝室を指さした。


「ユーフェの寝床使いなよ。寝室は一応鍵もかかるし」

「うう……わ、わかっただ……はうぅ、喪女にこのシチュエーションは酷だぁ……ドキドキしちゃうだよ。ふ、ふひひっ」


 セニノマは赤くなりながらも、なぜだかにやにやしている。嫌がっているのかはしゃいでいるのかよくわからない。このシチュエーションに一人で勝手に興奮しているのかも知れない。

 トーリはげんなりしながらシチューを火からおろし、台所に入った。セニノマは落ちつかなげにうろうろしている。


「お、おらも何か手伝うだか?」

「じゃあ風呂の温度見て来て。ぬるけりゃほっといて、熱かったら外の炉から薪を引っ張り出して。ちょうどよかったら入っちゃっていいよ」

「わ、わかっただよ!」


 とセニノマは風呂場に駆け込んだ。

 魚の切り身を多めの油で揚げ焼きにし、刻んだ酢漬けの野菜とスパイス、油を混ぜたソースをかける。昼はパンだったし、明日の朝の分も残しておかねばならないから、今夜はパスタだ。昼のうちに練っておいた生地を延ばして切って茹で上げ、冷蔵魔法庫(フリッジ)に作り置きしておいたソースと和える。

 風呂の方はいい温度だったらしく、水音がしている。トーリが料理を並べる頃には、全身からほこほこ湯気を立てたセニノマが出て来た。眼帯はそのままだが、ぼさぼさの髪の毛を結っていて、持ち込んだ部屋着を着ている様は、中々可愛らしい。


「さ、先にいただいただよ。気持ちよかっただ」

「そりゃよかった。飯にしよう」


 それで夕飯になった。セニノマがちらちらと見て来るのが何となく気になるけれど、トーリは努めて気にしない様にした。


(……男慣れしてないんだろうな)


 トーリの事が好き、というよりは男と二人きりというシチュエーション自体にのぼせているだけなのだろう。

 かくいうトーリも別に女慣れしているわけではないのだが、ここで暮らすうちに免疫がついてしまった。喜ぶべきか悲しむべきか、それはわからない。


 果たして何事もなく夜が明けた。

 セニノマは職工らしく早起きで、トーリとほぼ同じくらいの時間に起き出して来た。夜が明ければ別段変わった所もない、キュクロプス族の職人セニノマである。


「お、おはようございますだよ」

「おはよう。セニノマさん早起きだなあ」


 暖炉の火を起こしながらトーリが言うと、セニノマは体操する様に体を動かしながら笑った。


「朝早くから動いた方がいい仕事ができるだよ」

「ユーフェたちにも聞かせてやりたいセリフだな」


 とトーリは笑いながら暖炉に鍋をかけ、昨夜の残りのシチューを温める。そうして台所に入って燻製肉と卵をフライパンで焼いた。

 それで朝食を食べていると、窓をこつこつと叩く音がした。見ると、ユーフェミアの使い魔である黒い小鳥がいる。トーリが窓を開けて入れてやると、ぱたぱたと中に入って来て、食卓の上に手紙を落として出て行った。


「ユーフェにお手紙だか?」

「ギルドからだ。しかも緊急の印が押してあるな……」


 開封したものかどうか、とトーリは少し迷ったが、ふと思い出してペンダントを手に取った。つまみをひねって話しかける。


「ユーフェ。おいユーフェ、起きてるか?」


 しばらくして通信はつながったが、向うからはごそごそという衣擦れの音だの、むにゃむにゃ言うわけのわからない声がするばかりであった。


「おいコラ、ユーフェ!」


 トーリがペンダントに向けて怒鳴ると、少ししてユーフェミアの寝ぼけ声がした。


『トーリの声がする……好きぃ……』


 すりすりとペンダントに頬ずりする音がした。


「のっ……! 寝ぼけるな、おい、起きろ」

『んにゃ……あれ、トーリだ。どうしたの?』


 ようやく覚醒したらしい声が返って来る。トーリはホッとした。


「ギルドから手紙が来たぞ。何か緊急の印が入ってるんだが、お前いつ帰れるんだ?」

『んー、わかんない。まだ術式の解析が半分も終わってないの。すっごく入り組んだ術式組まれてて、下手に弄ると防衛回路が動き出しそうだし、慎重にやらなきゃ駄目そうだし』

「ま、待て、魔法の事は俺にはわからんが……じゃあ手紙はどうする?」

『開けて。読んで』


 では、とトーリは手紙の封を破って開けた。


「えー、と何々、前略“白の魔女”様、早春の爽やかな風吹き抜ける今日この頃、いかがお過ごしで御座いましょうか。アズラクの町は変わらぬ賑わいにて」

『前置きとかはいい。要点だけ教えて』

「あ、はい」


 トーリはひとまず手紙全体に目を走らせて、みるみるうちに青くなった。


「や、や、やばいぞ、ユーフェ! 見ろ!」

『見えない』

「あ、そうだった……いや、前になんか魔界産のコンゴウヨコバサミの討伐戦ってのがあっただろ? あれに白金級のクランがいくつも行って……」

『負けたの?』

「い、いや、勝った事は勝ったらしいんだが、なぜだか討伐に行ったクランが行方不明になっちまったらしいんだ。『蒼の懐剣』も……」

『スザンナたち?』

「ああ、現場にはモンスターの残骸ばっかりで、攻撃に参加しないで野営地を守ってた連中だけが残ってたって。だからその捜索をして欲しいって依頼なんだが……」


 コンゴウヨコバサミの討伐戦には、『蒼の懐剣』をはじめ、『破邪の光竜団』、『覇道剣団』、『憂愁の編み手』、『落月と白光』などの名のある白金級クランがこぞって参加した。その名は伊達ではなく、数日様子を見る様にしていた以降は激烈な攻勢に出、コンゴウヨコバサミも、それに寄生して来たモンスターもせん滅してしまったそうである。

 しかし、それで一夜明けて見ると、クランがみんないなくなっていた。

 野営地に残っていた連中が、いつまでも戻って来ない仲間たちが心配になって行ったところ、モンスターの残骸ばかりが残されていたそうである。


 ユーフェミアは考えているのか、少し返事がなくなった。トーリはドギマギしながら返事を待つ。セニノマはもぐもぐとパンを頬張りながらトーリを見ている。


『……かなり大型って言ったよね?』

「あ、ああ。どれくらいかはわからんが」

『多分ね、魔界産のコンゴウヨコバサミは、成長の過程で魔石もかなり殻に巻き込むの。それが変な風に配置されてて、戦って殻を壊した時に魔石同士で何かしらの反応をしたんだと思う』


 トーリは息を呑んだ。


「あ、あ、跡形もなく吹っ飛ばす、とか?」

『ううん、それだったら殻も野営地も吹き飛んでる。多分、空間を捻じれさせる現象が起きたんだと思う。それに巻き込まれて、どこか別の所に転移しちゃったのかも』

「じゃあ、無事なのか?」

『それはわかんないけど』


 ひとまず粉々になったのではないらしいので、トーリは息をついた。


「で、どうなんだ? 帰って来られそうなのか?」

『……ちょっとまだ行けない』

「そ、そうか……」

『トーリ、行って』

「……えっ?」



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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに紙で読みたい小説他有りますか?くらい表現力素晴らしい。 主人公が戦い以外で活躍して、こんなに面白くなるなんて今までに無かった新ジャンルですよね。 料理の描写とかも総じて旨そうだし、…
[一言] これ、まとめて魔界に飛ばされてません?
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