急接近①
「一体、私は何をすれば⋯⋯⋯⋯!?」
マリアンヌはノアに問いかけるが、彼は無言で歩を進めるだけであった。
予想だにしなかった急展開に困惑するマリアンヌは、助けを求めるようにこの場で唯一の協力者であるアスモデウスを見やる。しかし、彼は親指をグッと上に突き出す動作をし、キメ顔でパチリとウインクをしてみせるだけだった。
(頼みのアスモデウスにまで裏切られるだなんて⋯⋯っ!!)
マリアンヌの顔は絶望に染まる。しかし、マリアンヌの意思はお構いなしというように事態は待ってはくれない。
ノアに連れられたマリアンヌはとうとう、3人の女性たちが待つ騒ぎの中心地に辿り着いてしまった。
周囲の野次馬たちよりも鋭利な視線がグサリとマリアンヌに突き刺さる。
(この状況で一体私にどうしろっていうのよ⋯⋯!?)
マリアンヌが困惑していると、ノアは深く息を吸って、ゆっくりと全て吐き出してから口を開いた。
「⋯⋯みんな、ごめん。この人が僕の本命の彼女なんだ」
「⋯⋯っ!?」
マリアンヌはこれ以上ない程に目を見開き、突然突拍子もない発言をし出したノアの顔を凝視する。
「「「えっ!?!?」」」
そして、ノアの言葉に驚きを隠せなかったのは、マリアンヌだけではなく先程まで言い争っていた3人の町娘たちも同様であった。皆一様に動きを止めてポカンと口を開けてノアを見つめている。
しかし、先程ノアに掴みかからんばかりの勢いで迫っていた女性がわなわなと震え出し、納得できないと抗議をし始めた。そして、残りの女性たちもそれに続く。
「ノア!! 私たちはみんな遊びだったってこと!?」
「酷いわ⋯⋯! そんな女のどこが良いのよっ!!」
「そうよ! そんな女の一体、どこが————」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
初めは顔を真っ赤にして怒り狂っていた彼女たちだったが、マリアンヌの姿を見るなり、次第に落ち着きを取り戻していく。
マリアンヌは自身の顔を穴が開くくらいに凝視する3人の視線に耐えきれず、無遠慮に注がれ続ける6つの色とりどりの瞳から逃れるように俯いた。
「⋯⋯ねえ、アンタ」
じっくりとマリアンヌの姿を堪能した後、不意に、腕組みをした見るからに気の強そうな女性がマリアンヌに声を掛けてきた。
「⋯⋯アンタみたいな女が、なんでこんなロクでもない浮気男と付き合ってんのよ」
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この度、有難いことにWEB小説大賞様の一次選考を通過しました!
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