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トラブルメーカー





「ノアったら、どこに行っちゃったのかしら⋯⋯」


 屋敷のメイドにノアの居場所を聞いたマリアンヌは、アスモデウスを連れて彼を探しに街までやって来ていた。

 すると、マリアンヌは彼を探すうちに、石畳が敷き詰められた広場で何やらガヤガヤと騒がしい一角を見つける。


 耳を澄ますと、複数人の女性が言い争う声と、それを困った様に宥める男性の声が聞こえてきた。


(この声は⋯⋯もしかして⋯⋯⋯⋯ノア?)


 マリアンヌは聞き覚えのある声にピタリとその場で立ち止まる。

 アスモデウスも騒ぎの中心にいるのがノアだということに気付いたようで、マリアンヌの背中をグイグイと押した。


「ご主人さまっ、ノアに接近するチャンスだよ! 彼を助けてあげて!」

「え⋯⋯ええ!? あの中に私が入っていくの!?」


 しかし、極力目立ちたくないマリアンヌは、アスモデウスの言葉に難色を示した。


「も〜っ! そんなことじゃ、ノアの攻略なんて夢のまた夢だよっ!? いままでご主人さまがやってきたこと、ぜ〜んぶオリヴァーくんの為なんでしょ? ここで辞めたら全て水の泡になっちゃうと思うけどなぁ〜⋯⋯」


 アスモデウスがオリヴァーの名前を出した途端、それまで躊躇していたマリアンヌがピクリと眉を上げて反応する。


(アスモデウスったら、あの子の名前を出すのは狡いわ! でも、これがオリヴァーを守ることにも繋がるのよね⋯⋯気が進まないけれど、仕方ない⋯⋯覚悟を決めるのよ、マリアンヌ⋯⋯!!)



 マリアンヌは自身を奮い立たせるために、パチンと両頬を叩いた。そして、隣でそのようすを見守っていたアスモデウスに声をかける。


「分かったわ⋯⋯。アスモデウス、サポートよろしくね」

「もっちろん! 僕に任せてっ!」


 パチンと可愛らしくウインクをきめるアスモデウス。




(もう、行くしかないわ⋯⋯!!)


 アスモデウスの言葉に押されるようにして心を決めたマリアンヌは、ノアに向かって人混みの中をズンズンと一直線に歩いて行く。

 群がる野次馬たちを掻き分けて、騒ぎの中心までたどり着くと、そこで見たものにマリアンヌはギョッと目を見開いた。


(これは⋯⋯どういう状況なのかしら⋯⋯?)



 マリアンヌが見た光景は、3人の女性に囲まれるノアの姿だった。しかも、ノアを囲む女性たちは皆一様に顔を真っ赤にして怒り狂っており、その鬼のような形相にノアもタジタジなようすである。


「ちょっと、ノア! これはどういうことなの!? あんた、好きなのは私だけって言ったじゃない!!」

「はぁ!? それならあたしだって言われましたけどぉ~?」

「ブスは引っ込んでなさいよっ!!」

「何よっ! ガキは黙ってなさいよ!!」


 ノアに掴みかからんばかりの勢いで捲し立てる女性に、掴みかかろうとする女性を挑発する女性。そして、ただただその場に立ちすくんでわんわんと泣き喚く女性。

 ギャアギャアと人目も憚らず騒ぎ立てる3人の町娘たちを目の前にして、マリアンヌは思わず後退る。


(こ、これはまさに絵に描いたような修羅場だわ⋯⋯)



「ま、まぁ⋯⋯みんな落ち着いて」


 どんどん大きくなる騒ぎと人だかりに、さすがにまずいと思ったノアがいよいよ口を挟んだ。

 

「私たちを止めたいなら誰か一人を選びなさいよっ!!」

「そうよ! 元はと言えばあんたのせいじゃないの!!」

「⋯⋯⋯⋯のっ、ノアは誰が一番好きなのよおぉ⋯⋯!?」

「え!? え~っと⋯⋯それ、は⋯⋯⋯⋯」


 突如として重大な決断を迫られたノアは、助けを求めるように周囲をキョロキョロと見回す。

 しかし、騒ぎは気になるが巻き込まれたく無い野次馬たちは皆一様にサッと視線を逸らした。


「っ⋯⋯!!」



 しかし、マリアンヌだけは遠巻きながらも視線を逸らすことなくノアたちのようすを見守っていたため、ほどなくして彼に見つかってしまう。

 ノアはマリアンヌの姿を人だかりの中から見つけた途端、パァッと顔を輝かせてマリアンヌの名前を呼んだ。


「義姉さ⋯⋯っ⋯⋯⋯⋯マリア!!」

「え⋯⋯っ!?」


 突如として名前を呼ばれたマリアンヌは狼狽える。

 しかし、そんなマリアンヌに構うことなく、ノアは一直線にマリアンヌ目掛けてズンズンと歩いてくる。

 そして、目の前まで来ると何も言わずにマリアンヌの細い手首を掴んで、3人の女性たちが待つ騒ぎの中心へと再び戻っていく。



「ちょ、ちょっと⋯⋯ノア!?」

「ごめん、義姉さん。僕を助けると思って、ここは話を合わせて欲しいんだ」


 マリアンヌが突然のことに驚いてノアに抗議すると、彼は申し訳なさそうな顔を作り小声で懇願してきた。



 騒ぎの中心人物であるノアが連れている新たな4人目の女性————。

 マリアンヌに刺さる視線はチクチクを通り越してグサグサと激しく痛いものであった。


(覚悟は決めていたけれど⋯⋯それにしても⋯⋯私には荷が重すぎるわよっ⋯⋯!!)







貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

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