国王は友人を思いやる
※『真実の愛』シリーズ3本目です。
俺は友人と飲み終わった後、城に戻ってきた。
「ただいま〜、と」
「国王様、お帰りなさい」
「妻と子供達は寝てるか?」
「えぇ、ぐっすりと寝ております」
秘書官からの報告に俺はホッとした。
「ご友人からは何か言われませんでしたか?」
「多少は文句は言われたさ、でもアイツに任せて良かったよ」
「経験者が語るほどリアルな物はございませんからね」
俺がアイツと再会したのは偶然だった。
今日みたいに俺はたまにお忍びで街に出る事がある。
勿論、変装してだが。
ある時、公園のベンチにボロボロの姿になったアイツを見かけたんだ。
髪もボサボサ不精髭を生やし服も所々破れていた。
なんと言っても印象深かったのは目だ。
どんよりとした正気が無い淀んだ目は俺は見た事無かった。
すぐに声をかけた俺にアイツは驚いたがすぐに俺と気づき涙を流していた。
勿論アイツがしくじった事は知っていて追放されたのも知っていた。
追放後、他国の王太子仲間を頼り色んな国を回ったのだがどこも相手にされず門前払いをくらったらしい。
そこで初めてアイツは『自分は王太子という価値しか無かった』事に気づいたらしい。
ポツリポツリと今までの事を話すアイツは軽はずみの行為を深く反省し後悔をしていた。
反省も後悔もしている人間にチャンスを与えないほど俺は冷たくない。
まぁ『ホント馬鹿だなぁ』とか笑ったりしたのは過去の事を吹っ切ってもらう為の俺なりの優しさみたいなもんだ。
俺はアイツを騎士団の雑用係として採用した。
大臣達からは反対の声もあがったが何とか説得した。
アイツは文句も言わずに働いてくれた。
最初は好機な目で見ていた騎士団の連中も徐々にだが打ち解けていった。
今では縁の下の力持ちだ、採用した俺の目に狂いは無かった訳だ。
「息子の様子はどうだ?」
「魅了の効果が薄かったせいと魅了防止薬のおかげで症状はほぼ出ておりません」
「そうか、男爵家は?」
「やはり男爵は魅了にかかっておりました。かなりの重症です。夫人と娘は魅了防止の目隠しをさせております」
「そうか、残念だが男爵家は取り潰しだ。男爵には施設に入ってもらおう。夫人と娘は尋問の末に毒を飲んでもらおう」
「かしこまりました」
未遂とはいえ王太子に近づく事自体が王族に対して良くない事を企んでいると思われても仕方が無い事だ。
俺は王太子から話を聞いた後、すぐに兵に命令し男爵一家を拘束し地下牢にぶち込ませた。
これからその身で事の重大さを知ってもらう事にしよう。