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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

光の小噺

白い恋人

作者: 山の人

「小話ークルザスにて」


 そんなに怒るとは思わなかったんだよ、本当に。


 先日、彼女がとうとうクルザスに足を踏み入れたと聞いて、手伝えることはないかと久々に雪国へ降り立った。白銀の視界の中、紅い彼女はよく目立つ。近づけばちょうど地図を見ているところだった。何やら頼まれごとをされたけれど、チョコボで向かうにもだいぶ距離があるらしい。ちょうどいいのでチョコボキャリッジに乗せて向かおうかと提案しようと思ったら、1人の子供が近寄ってきた。


 「雪合戦しよう!」


 どうやらその子も最近、親の仕事の都合でこちらにやってきたらしく、現地の子と雪合戦を楽しんでいたところ、ちょうどよく自分たちがいたので遊び相手として声をかけたようだ。

 自分の国はまだ少し雪が降る地方だったので慣れ親しんでいるが、彼女は雪自体初めてらしい。寒さには強いが、元の国では雨があまり降らないため、雪自体ほとんど親しみがないとのこと。依頼も急がないようで、すでに彼女は雪で遊ぶことに興味がわいたようだ。


 いざ雪合戦に参加すると、雪玉をいい具合にまとめるのが意外と難しかったようで、雪玉作りに苦戦していた。その後ろ姿にようしゃなく白い玉をぶつけている子供たち。負けじとせっせとつくるものの、投げてる途中で崩れてしまって思うように反撃ができないようだ。彼女が一方的に木人のようにされている姿が珍しかったので眺めていたら、参加していないことに不満を抱いた少年少女から背中を押されて雪玉制作徴兵を求められた。大人の力で固めた雪玉をつくると嬉しそうではあるが、だんだん白くなっていく背中はかわいそうだったので自分が相手になるからやめるように伝えた。


 ちょっとした、いらずら心だった。


 子供たちのために山盛りとなった弾丸があるので、それで遊べばいいと思って、彼女にそれを知らせたかったんだ。普通に声を掛ければいいのだが、ちょうど手元に手頃な雪玉があったのでそれを彼女に投げてこっちを向いてもらおう、そんな程度の気持ちだったんだ。そして、えいと投げた雪玉が弧を描いて・・・。


 まさかそれがちょうど振り向いた彼女の顔面に直撃するだなんて思ってなかった。


 子供からの雪玉であれば、彼女も大人だ。相応の態度でちょっと小言を言うくらいだろう。しかし残念ながら子供ではないわたしからの雪玉が当たってしまった。しかも、顔面に。さらには雪で彼女が好んで使っている今エオルゼアで流行っているという紅いリップがよれてしまったのを、無駄にいい視力が捉えてしまった。


 「海は好きだけど、化粧が崩れるから潜るのは嫌い。」


 夏のコスタ・デル・ソルでそう言っていたことを思い出す。顔が真っ青になる。そして一瞬のうちに彼女は石塊・・・・いや、雪だ。”雪塊”を抱えてこっちに寄って来ていた。忘れてはいけないが彼女は腕の立つ冒険者だ。子供用に適度な雪玉を作ることに苦戦していただけで、容赦がいらない大人相手なら、それは冒険者としての本領がでてくるだろう。まるでブリザガのような塊を身体で受け止め、彼女の背中に積もった雪とは比較にならないほど真っ白になったわたしを見て、高笑いしながら化粧を直しに行くであろう足音だけ聞こえる。いや、本当に。呪術師ギルドの門を彼女があけていなくてよかった。


 子供たちは雪の塊の一部となった自分の上に丸めた大きな雪玉をのせるのはどうだ、なんて話をしているけれど、雪だるまにするより、可能であれば助けてはくれないだろうか。


オルシュファン・・・彼女は、非常に”イイ”笑顔でクルザスを闊歩しているよ・・・。わたしは、そうだな。ちょっとしばらくは雪は”いい”かな。

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