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人類の天敵

 国民に明かされていない人類の天敵がいたら?と思って書きました。

 すごく誰かほかの人が書いてそうな話ですが、1500字程度ですのでよければご覧ください。

ある日、それは突然世界中に現れた。

 甲殻類に似た非常に低重量かつ頑強な皮膚、雀蜂にも勝る獰猛さ、地上のどんな金属よりも堅固な牙をもつそれは、地球上の食物連鎖の頂点といえる人類を誘拐し、その数を増加していった。

 結果として、社会問題に発展し混乱を引き起こす前に解決すべしと判断したわが国は、この人類の天敵を「X」とし、Xの捕獲、管理、また必要に応じた殲滅を目的とした対策チームを秘密裏に設立した。

 私はその対策チームの最高責任者である。いまは、私の直属の上司である、農林水産省の大臣とチームの活動についての年末報告の最中である。この得体のしれない怪物Xについて、捕獲個体数と殲滅個体数を報告し、それ以外に報告することがなくお叱りをうけることが、ここ数年私の年末の恒例行事となっている。

「チーム長、Xについての報告を始めたまえ」

「はい、今年度の活動におけるXの捕獲数が12体、そして殲滅が35体です。」

「そうか、やつらの生態について新たに分かったことはあるか?」

「いえ、残念ながら今のところ分かっている生態はありません。どの個体も捕獲したのち与えた動物性たんぱく質に興味を示さず数日で餓死し、死骸や生体から切り離した組織片も霧散するため、遺伝子構造も把握できません。」

「クソッ、毎年同じ報告ではないか、これからも行方不明者として突き通すには無理がある。このままでは国中に広がりパニックになるのも時間の問題だ。人類のみが捕食対象であるというところから、早急な国内の全個体の捕獲と管理が必要とされる。わかっているな?」

捕獲と管理ねぇ。簡単に言ってくれる、獰猛な生物を殲滅でなく捕獲することがどれだけ大変な事か。今年はこの鬱憤を抑えきれず、つい口に出してしまった。

「はい。ですが一つ質問よろしいでしょうか。」

「なんだね?」

「何故Xの捕獲と管理にこだわられるのでしょうか?パニックを防ぐという目的と、その実施の難易度からも殲滅のほうが最適かと存じます。」

「ふん、そんなこともわからんのかね。一応建前上は絶滅危惧種である動物の保護及び管理が必要であるからとなっているが、最も必要とされる理由はそんなことではなく、もっと他にある。」

「といいますと?」

「軍をもつことのできない我が国には簡易かつ証拠の残らない生物兵器として扱いやすいからだ。数日ほどで餓死するため、他国に送り込んでも我々の地域に来ることはなく、餓死すれば霧散するため証拠も残らん。そうか、君は知らなかったな。君たちが4年前に捕獲した15体のうち10体を防衛省の管轄に回しただろ、あれどうなったと思う?」

「まさか」

「そう、そのまさかだ、輸出商品に偽装し我が国と不仲なA国とC連邦に5体ずつ解き放ったのだ。実験として送り込んだのだが、結果としては大成功だったようだ。徐々に年間の行方不明者は増加しているらしい。このまま人口が減れば、あいつらに不当占拠されている領土に関する交渉しやすくなるだろうな、ハハハ…」

私はめまいがした。私はこの醜悪な計画に何年も手を貸していたと思うと吐き気がする。が、私はこれによって来年の我が国の行方不明者数を大幅に減少させることができた。

「なるほど、承知しました大臣。ですが、たった今入った情報によりますと、Xの巣として非常に可能性が高い場所が明らかになりました。」

「ほう、巣か。それはよかった、大規模捕獲作戦になるだろう。それでいったいどこにあるんだ?」

「ええ、おそらく近隣諸国からの輸送船及び旅客機の内部でしょう。」


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