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社畜は今日も仕方なく仕事に行く

作者: ナナシ

 目覚ましとして設定している曲が耳元に置いてあるスマホから鳴り響いて目を覚ます。

そして、対して役に立たない裸眼視力を強制的に向上させる為にベッドボードに置いてあるメガネケースから眼鏡を取り出して装着する。

人並みに良くなった視界が今日の天気を映し清々しい青空を見て、思わず深い溜息が溢れ出た。

 「めっちゃ天気いいのに仕事とかマジ萎えるわ………」

とはいえ、今日は残念なことに作業やら何やらがフィーバーしているので休む事もできず、やれやれと思いながら仕方がなく寝巻きから白っぽい灰色の作業着へと着替える。

 所々油汚れや土汚れが目立つのでそろそろ替え時かなぁと思いながらもついつい汚い作業着を着てしまう。だって新しい作業着汚したくないんだもの。

 着替え終わってリビングに降りて行けば、ソファ前のテーブルに一つの写真立てとほかほかと湯気を登らせる自分のマグカップが置かれているのが目に入った。

ソファに腰掛けて程よい温度にぬるくなった墨汁色のそれを啜ると口の中に程よい苦味が広がり、寝ぼけていた頭を少しだけクリアにする。

 「相変わらず眠そうな顔ね」

「はは、これは眠いんじゃなくて怠いんだよ」

母の言葉にそう返しながらふぁあと欠伸を凝らす。

今日が休みだったらなぁと思いながらしかし、作業があるしなぁという自分の責任感がジクジクと良心を突き刺してくるので眠くて仕方がないが諦めて仕事に行く事にする。

 珈琲を飲み終わったところで洗面所へと赴き歯を磨き顔を洗って髪の毛を整えていく。

しかし、いくら櫛を通しても自己主張が激しい頭髪は纏まらず仕方がないので諦めて後ろで一つに括った。

 身嗜みを整えたところで出発の時間になったので母が拵えてくれた弁当を持とうとしたのだが、今日は弁当を作るのを忘れてしまったのかダイニングテーブルには兄の弁当しかなかったので今日はコンビニ飯だなぁと思いながら家を出る。

「行きたくないけど行ってきまーす、行きたくないけど」

昔は素直に行ってきまーすと言えていたのに大人になってからは素直にそれすらも言えなくなってしまったので心が汚れたなぁと自嘲する。

外に出ればやはり非常に天気が良くて、こんな日に仕事しなきゃならないなんてと悲しくなった。

しかし、そう嘆いたところで仕事がなくなる訳ではないので大人しくとぼとぼと歩いて会社へと向かうのであった。


 自宅から歩いて30分ほどの会社に着いたら普段賑わっている事務所がなんだかとても静かで気味が悪かった。

おまけに自分の書類だらけのデスクに盛り塩が置かれていてなんかの嫌がらせかなぁと少ししょんぼりする。

 「あ、野田さんおはよーっす」

隣の席の無口な野田さんに挨拶をするが相変わらず挨拶は返って来なかった。

まぁ、こればかりは仕方がないと思うのでパソコンを起動したのだが、野田さんが「うわぁ!!」と叫ぶと徐に立ち上がって青ざめた顔をしながらどこかに行ってしまった。

お腹が痛かったのだろうか?少し心配になる。

 そして、やけに白けた事務所内が途端に騒がしくなって事務所にいた人達は全員野田さんと同じくどこかに行ってしまった。

今日は災害訓練でもやる予定が入っていただろうかと思って卓上のスケジュールカレンダーを見てみたが特に予定はなかった。

自分だけ知らされていないみたいだからこれはパワハラに値するなぁと少しだけ悲しくなった。事務所の人達と仲良くしてたと思ったのに……。

 1人事務所でしょんぼりしていると黒い袈裟を着たお坊さんが入ってきた。

ご来客かな?と思って事務員さん達も皆出て行ってしまったから対応しようと席を離れる。

「おはようございます!今日はどの様なご用件でしょうか?」

「あぁ………貴方、まだ分かっていないのですね………」

「え?」

突然意味のわからない事を言われて面食らった。

そして、懐から取り出されたその新聞記事を見て漸く………漸く理解する事が出来たのであった。



 私に一つお願い事を託して天へと昇っていった佐伯さんに手を合わせ、私はお願い事を叶えるべく沢山の書類が積み上げられた佐伯さんのデスクに向かいました。

そして、その引き出しの中からあるものを取り出して事務所を後にしました。

 事務所の外には従業員の方々がおられ、私に連絡を取ってきた社長さんもおりました。

 「黒川さん、佐伯は……佐伯は無事に成仏出来ましたか!?」

「えぇ、浅井社長。佐伯さんは成仏しましたよ」

「ほ、本当ですか……よかったです」

そう安堵の息を漏らす浅井社長でしたが私がある物を取り出してそれを起動すると表情が一変した。

そう、私が取り出したのは社長が数々の暴言を吐く音が録音されたボイスレコーダー。

 自殺した佐伯さんは最後にこれを社員全員に聞かせて欲しいと願って天へと旅立ったのでした。

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