37話新規五人到着~
レルム達が王都に到着した頃、エステラルス王国王都に存在する違法組織のアジトの一つ。
その地下にレルムからの通達を受けたものが集まっていた。
漆黒の鎧を着た暗黒騎士のウラノス
白銀の鎧を着た聖騎士のアイン
シルクハットに紳士服の怪盗のジル
口元まで黒一色の服装で統一した忍のコタロウ
テーブルを囲むように四人が座っている。
「私が最後っすか?だとしたらずいぶん派手に暴れたっすね」
地下室に入ってきたのは記者のホノカ。ベレー帽をかぶった少女だ。
「遅かったな」
「いやー。ちょっとトラブルが起きちゃって。地球にいるメンバー関連で」
「何があった?」
「いやー。ちょっとした苦情っす。ちゃんと捌いてきたんで大丈夫っす。・・・ところで今はどういう状況っすか?一階の惨状を見れば大体想像つくっすけど」
「見ての通り休憩中だ。上は急ぐことでもない」
四人はこうしてくつろいでいるが違法組織の人間がアジトに関係のない人間は入れない。四人は一時的な拠点確保のため、能力の検証のため、アジトの人間を皆殺しにして制圧したのである。
アジトの仲間に見つかったとしても何も問題はないため証拠隠滅は後にして休憩をしている。
「これで全員そろったか。あとは馬車の方だが今日に到着する予定だがもう着いたのか?」
「もうついてるっす。そのうちこっちに来ると思うっすよ」
「久しぶりに会うことになるのである」
「久しぶりに会うけどその前に。直にこっちに来るから来る前に上の掃除をする」
「うむ。ではゆくとしよう。掃除ついでにこの建物の改装も行おう」
「俺は周囲の調査をしてこよう。アジトの一つを潰したことだし。騒ぎにはしなかったが別の場所から誰か来ないとも限らないからな」
上の掃除のためアインに連れられてウラノス、情報収集のため、コタロウはそろって地下から出て行った。
「フム。我々は何をしましょうか。お三方は職務、いや騎士組は職務というより後始末ですが残った私たちは如何いたしますか?」
「そうっすねぇ。私は外で聞き込みでもやってこようと思うっすけどジルさんはどうします?」
「私も行きましょう。ここにいてもやることもないですし観光がてら街を見て回るのも良いでしょう」
「じゃいくっすよ。ついでに仕事現場も見に行くっす。偵察は大事っすから」
残りの二人も地下から出て行った。
「流石王都、活気があるっすね!」
ジルとホノカは王城へ向かうついでに大通りを歩いている。
「屋台で何か買っていきましょうか。まだ昼食も食べてませんから」
「あれ?ジルさんこの世界のお金なんか持ってたっすか?」
「持ってる訳ないじゃないですか。先ほどのアジトのお金を少々拝借させていたました。それなりに貯めこんでいたようで食料品を買うぐらいなら十分に足ります」
「ラッキーっすね。たまたま襲撃したアジトに資金があったなんて」
「そうですね。とてもラッキーでした。ところで・・・」
ジルは突然立ち止まった。
「ホノカさん。先ほどから尾けてきているのは知り合いですかな?」
「んなわけないっすよーまだ来て一日も経ってないのに知り合いなんか作れないっす。ジルさんの服装があまりにも浮いているから不審に思われたんじゃないっすか」
「ふぅむ。この服装が一番落ち着くのですがやはり悪目立ちしてますか。執事服、いやそれだとノア殿とと被る・・・ううむ」
「ジルさーん。考えてないでさっさと撒いちゃうっすよ」
「おっとそうですね。ホノカさん手近な屋台で何か買って戻りましょう。」
「りょーかいっす!おじさーん!そのお肉くださーい!」
「おう!元気だな!お嬢ちゃん!どっちの肉にする?」
「両方くださいっす!」
(店主、それはお嬢ちゃんという歳ではないです)
ホノカと会話する店主に向けて心の中でジルは突っ込んだが誰にもその声は届かない。
少しして店主から肉を受け取ったホノカが戻ってきた。
「いやーおまけしてもらえたっす。ラッキーっすね!」
「よかったですね。では戻りましょうか。仕事現場はまたの機会という事で」
「りょーかいっす。ちゃっちゃと行くっすよ」
追手らしき人間を撒いたあと二人はアジトに戻ってきた。
アジトの中はジルたちが出る前は死体や血で汚れていたが掃除がされ元々の状態よりも綺麗になっていた。
現在はバーのような内装に改装されている。騎士二人の仕事の成果が表れている。
「もうここに決めた感じっすか。この内装にしたってことは」
「そうだな。この辺りは人があまり来ない場所のようでな。」
「いわゆるナワバリ、なんでしょうね。紅茶はありますか?」
「あるぞ。酒、ジュース、ポーション、茶、なんでもござれ。まぁフォルマ産ではないがな」
「そこはこれからの楽しみにしておきましょう。まだこの世界のでの未知の探求は始まったばかりなのですから」
「そうっすよ。とりあえず屋台で肉を買ってきたんで食うっす。この世界初の食事っすよ」
「・・・なんの肉だ?ぬしの買ってきたものだから外れではないだろうが」
「確かオークって言ってたっす。定番っちゃ定番っすね。あとカエルもあるっすよ」
「そうか。この世界は魔物も食す文化か。料理人連中が喜びそうだな。ああ両方くれ」
「やはり味付けは個性が出るな。同一の物というのは中々存在していないようだ」
「肉の性質も関係してるんじゃないっすか?魔素の含有量やとかで肉の旨味やらなんやらが変わってるかもしれない。なんて料理人たちが言ってた気がするっす」
「食事中に話すことでもないかもしれませんがコタロウ殿、追手はどうなってますか?」
「ああ、それはすでに始末した。どうやらお前たちがここを出た時に偶然見られていたようだ。存在には気づいていたが勘違いで始末しても面倒だったので確証が得られるまで様子見をさせてもらったが見立て通りここの連中とお仲間だったようだ」
「へー。見られてたってことはもっと人が来るってことっすか?」
「さぁな。報告をする頭があればぞろぞろ引き連れてくるだろ」
「来ていただいた方が楽でしょうねぇ。行く手間が省けますから」
「めんどくさがりっす」
「裏の拠点は確保したんだ。あとはクドウがやりたいようにやるだろ」
「コタロウ殿、ファンタジーの世界で彼はそちらの名前ではなくゴクドーですよ」
「そうっすよー。偽名のつもりっすけど聞く人が聞けば変だと感じると思うんすけどね。極道っすよ。日本から来た異世界人なんかすぐ反応するから余計な事考えず素直にクドウにしたほうがいいって言ってるのに」
「本人の自由だから口を出すことでもない。好きなようにさせてやれ」
「話しているのもいいがお客がきたのである」
「きれいにした建物が汚れるのも嫌。だから、外で掃除してきて」
二階から降りてきた騎士二人。手には工具箱を持っている。二階の改装をするために持ち出したものだ。
「じゃ、まだ戦ってない私が行くっす!」
「私も行きましょう。依頼された道具のテストが済んでませんので」
「俺は残る」
「私は上でお肉を食べる。テラスみたいな所があった」
「我も肉を食そう。少々空腹だ」
各々が自由に行動を始めた。
「九人・・・二人だけと聞いてこの人数かそれとも偵察か。どうせならまとめて来てくれた方が助かるのですが・・・まぁいいでしょう」
ジルは屋根の上に登っている。スナイパーライフルの運用テストの依頼をこなすためにだ。
「さぁ、味わってください」
ジルはスナイパーライフルを構え引き金を引いた。
パァン!!
銃撃音が鳴った瞬間手前の男の頭部に銃弾が命中、その勢いのまま後ろにいた二人の男の体も貫いた。
「ジルさーん。うるさいっすよー」
ホノカがベレー帽から飛び出た猫耳をぺたんと伏せながら文句を言う。
「おや失礼、これほど音が出るとは思わなかったもので。あとは好きにしてください」
ホノカに詫びを入れたジルは屋根の上でティーセットを用意し観戦の姿勢に移った。
「んー距離があるっすね。わざわざ見つかるのも出向くのも面倒なんでここから攻撃しちゃうっす。『エア・スラッシュ』」
ホノカは伸ばした爪を振りぬき真空の刃を飛ばした。
ジルの攻撃により混乱している男たちは真空の刃に気づくことなく体を切り裂かれ血しぶきをあげながら倒れた。
「やっぱりただの下っ端じゃこれも躱せないっすか。まぁ善良な一般人よりは強いんでしょうけど。いやそもそもただただ力だけに頼ってる人間に期待しても意味ないっすね」
「おー。派手にやってんな。道をこんなに血まみれにしちまって。後で掃除しろよ?誰も来ないとも限らねぇんだからよ」




