30話 無理やりな依頼
昨日の伝言通りギルドに向かった。時間は現在昼だ。特に時間指定も聞いていないのでのんびりとしていたらあっという間に昼になっていた。
「やっと来たか。朝から待ってたんだがな」
朝から待っていたらしい。それは悪いことをした。
「呼び出したのはだな。前の買戻しの後で姫様から依頼を持ち込まれたんでなそれの話をしたかったんだ」
「指名依頼というやつですか?」
「よくわかったな。そうなる。なるんだがまだEランクのうちから指名依頼ってのは余計な邪推を受けるかもしれんから保留ってことにしてもらった」
「断ってもいいですか?」
「おいおい、王族からの依頼を即答で断ろうとするやつ初めて見たぞ」
でしょうね。普通の人は王侯貴族からの依頼が来れば二つ返事で受けるでしょうし。冒険者からしてみれば顔を覚えてもらうこともでき報酬も良いと考えるだろうし。
「・・・まぁいい続けるぞ。指名依頼を受けてもらうためにもⅮランクに上げようと考えている。実力方面でいうならジョズを倒せているんだ問題ない。あとは護衛の依頼をしてくれりゃそれでいい」
「別にEランクのままで構わないのですが護衛の依頼など都合よくあるものですか?」
「都合よくあるんだなこれが。これも姫様からだな。冒険者ギルドは国から独立した組織だからそこらへんの木っ端貴族ならこんな依頼蹴ってもいいんだが流石に王族直々の依頼を断るのは難しい。よっぽど無茶な依頼でもなければな。だから受けてもらいてぇんだ。」
近所づきあいならぬ組織づきあいというやつでいいんでしょうか。王族の権限使ってまで依頼をねじ込んで来るとはホントに都合良いですね。
「姫様の護衛依頼をこなせば向こうの、王都の冒険者ギルドでランクアップしてもらえるはずだ。それで晴れてⅮランクになれる」
あの姫様の護衛ですか。要りますか?詳しくは知りませんが姫騎士なんて呼ばれているそうですし。彼女お付きの護衛騎士のレベル的に不要だと思うのですが。
「護衛要ります?姫騎士とおっしゃっていましたし腕は立つのでしょう?」
「・・・言うな。俺も無理やりだとは思っている。だがこれで向こうに貸しを作れることになった。観念して犠牲になってくれ」
犠牲っていっちゃいますか。帰るときにささやかなお礼でもしていきましょう。
「本来冒険者になって数日でランクアップなんてのはめったにないんだがな。何年も同じランクに居座り続けている奴もいるしよ。お前さんが気絶させたマークがそのいい例だ。B以上は貴族と関わる依頼もでてくる。素行不良な奴なんか出せばギルドにとっても依頼主にとっても不利益をもたらすからな」
マーク?ああ数日前気絶させた人ですね。人様の迷惑を考えない人でしたか。そういえばもう起きてきている頃だと思うのですが見てませんね。まいいか。
「そうだ薬草を提出しておきますので買取お願いしますね。あとで取りに来るので」
帰る前に思い出したかのように言い、取り出して机に置く。ライルさんは置かれた物が何なのかを理解したのか驚きの表情を浮かべた。
「おま、おまえどこでこれを手に入れてきたんだ」
「秘密です。言っておきますが出所は言わないでくださいね」
提出した薬草類は現在入手が困難とされるものである。それを大量に出されたライルはレルムが出て行った後頭を抱えた。貴重な薬の材料を持ち込まれたことにより仕事が増えてしまうことにつながってしまうと考えてしまったからだ。
「明日領主の館に行ってくれ、そこで詳しい説明がされるはずだ」
ということでやってきました領主の館。三階建てのテラス付きの建物で庭もあるようです。
門番にも情報と教育が行き届いているようですんなり通していただきました。ひどいところだと冒険者というだけで見下される?ようなところもあるそうですがここは違ったようだ。
案内の人に従い依頼人もとい姫様が待っている部屋まで連れられる。木製の軽い金の装飾がついた部屋で対談専用の部屋だそうだ。
「私はこれで」
案内が終わったことで役目を終えた使用人はそう言い去っていった。
ノックをし入室の許可を確認したのち部屋に入る。
「うん?」
部屋に入った途端私めがけてドアごと切り裂く斬撃が来たが刃の部分を指でつまみ止めた。お相手は以前買戻しの場にいたジェシカさんのようだ。危ないですねぇ怪我でもしたらどうするんですか。
パキッ
つまんだ箇所から刃をへし折った。静かな空間に刃が折れた音と破片が落ちた音が響いた。
今気づきましたが折ったの魔剣でした。弁償しなくちゃいけませんかねぇ、一応被害者なんですが。
次に帯剣していた二本目の剣を抜くかと思いましたが抜かずに戦闘態勢を解いたようだ。
「ん?終わりですか?」
「そうね。終わりね」
終わりなのか問いかけてみると部屋の奥に座っていた姫様から終了の返事が返ってきた。どうやらあっさりと襲撃は終わったらしい。




