22話 肉塊の正体は勇者でした
シェイラさんを寝かせている部屋に入る。
やはり起きていたらしく上体だけ起こしてこちらに顔を向けた。
「やぁ、キミが呪いをといてくれたのかな?いや~助かったよ、ボクでも解けなかった呪いをよくといてくれた。これで自由の身だ」
お礼を言われた後事情を聞くと肉塊の状態でも外界の様子を把握していたようで。詳しく過去の事を聞くと彼女は勇者らしい。数十年前魔王を倒したはいいが魔王の呪いによってあの姿にされていたという。命を代償とした呪いには流石にレジストできなかったようで苦労していたようだ。
仲間からは放置され動くこともしゃべることもできないおかげで助けを求めることもできない状態だったが最近魔王が誕生するとのことで魔王城からつまみだされたそうだ。
「その辺に捨てられたら魔物として討伐されそうだったから残ってた魔力を使って運んでいた魔物の制御を乗っ取ってなんとかあの街にたどり着いたわけ」
魔法生物のガーゴイルで運ばれていたらしくそのおかげで制御を奪えたと、その後は魔王城からできる限り離れることに。
奴隷商への地下には最後の力で転移したようでそこで魔力が尽きたと。その後は手を出されないように色々工夫をしたようだ。脈動、悪臭、と。
悪臭は女性としては苦肉の策だったらしい。肉塊とはいえ臭いと思われるのは堪えたようだ。
「ま、呪いにかかったのはむしろ幸運だったのかもね。討伐した後は王子と結婚することになってたみたいだったし」
王子は典型的な選民思想だったらしく自分が平民と結婚などと難色を示してそんな相手と仲良くする気も起きなかったようで国から逃げることも視野に入れていたらしい。
勇者の力があれば逃げることも可能だったかもしれない。
「勇者の力は強大だからね。当時の他国にとっても欲しい力だったと思うよ。過去の事はほとんどおぼえてないけどね」
これで自由だーと伸びながら立ち上がる。裸ではなく服を着た状態で。
「裸だと思った?残念でした。収納箱から服はとりだしてあるのだよ」
得意げに言い放った。
「期待するような反応はできませんよ」
「あれ~?男性ってこういう時二通りの反応するものじゃないの?」
すねた口調でそう言うシェイラ。
それは襲うか慌てて目をそらすかの二択のことをおっしゃっているのでしょうか。期待していた反応をした方がよかったでしょうか。ん~まぁいいか。
「とりあえず軽い食事でも持ってきます。もう少しゆっくりしていてください」
「お願いするよ」
適当に軽食を用意している最中に念話がかかってきた。
(もしもし)
(レルム様今よろしいでしょうか)
レイブンからのようだ、わざわざ念話をかけてくるとは何かあったのでしょうか。
(構いませんよ、何か問題でも?)
(ゴブリンが街に向けて進撃を始めました)
あ~、ライルさんは午後に討伐に行くといっていた気もしますが先に来てしまいましたか。もう少しゆっくりしたかったのですが。
(ライル殿が街にいる冒険者に招集をかけて防衛体制を整えている最中です)
元々冒険者には準備を指示していましたからその辺りは迅速に事が運びそうですね。
まだ時間はあるでしょうしのんびり行きましょうかね。