20.5話 奴隷商 裏面
レルム達が奴隷商に行っている間
ゴクドーもまた奴隷商に行っていた。
裏通りにある違法の奴隷商にだが。
今回のゴクドーの任務は違法奴隷商の壊滅である。
壊滅といっても物理的に店を潰し
奴隷取引に関わっている人物の証拠と誘拐された奴隷の救出、保護だ。
保護した後は元居た場所に帰らせるか、居場所がなければ迎え入れ
人材確保と共に強化をすることになる。
今までの世界を巡った結果一万人規模にまで膨れている。
もちろん全員が魔改造ずみである。
その気になれば一人で国一つ滅ぼせるほどに。
一万人では数が多すぎるのでその世界出身者はその世界に留めているが
組織のホームである機械龍に集まって動いている。
定員は空間拡張などで常に広がっているので余裕があるので
今回の奴隷たちはほとぼりが冷めるまでここに置かれる。
その間に魔改造されるのだが。
「~♪」
ゴクドーは鼻歌交じりに裏通りを進む。
明るい時間には似合わない黒い外套と仮面をつけながら。
裏通りにも住人は居るが彼らは自分より格上の者にはかかわろうとしない。
素人の目にもわかるようにゴクドーが生物の生存本能に
訴える殺気を放っていることもあり、近づくことすら許さない。
あまり強くしすぎると発狂するので加減はしているが。
「おっ、ここか」
目的地には屋敷があった。
入り口付近に門番の姿はない。
だが【生体感知】によって屋敷に何人いるかは簡単に確認できる。
「屋敷の外に三、屋敷内、というか地下に二十一か、
後はどいつが奴隷かを判別するだけだな」
ゴクドーは【状態鑑定】を使い
屋敷にいる全員の状態を視た。
アドグロ <健康>
ピッゾ <健康>
ワイデル <健康>
以下十三名<健康>
リゼル <魔力欠乏>
ファイ <麻痺>
イルマ <衰弱>
グローリア <衰弱>
健康な奴らは奴隷商側の人間でいいだろ。
奴隷っぽいのが四人だな。
どうすっかね。一人ひとり相手してもいいが
早めにケリつけて治療した方がいいか。
おれぁ専門家じゃねぇしいつまで持つかわかったもんじゃねぇし。
まずは魔力欠乏症のリゼルって奴からいくか。
屋敷へ侵入したぜ。
ザルだ、あまりにもザルで入ったこっちが不安になったぜ。
地下への入り口に二人、中に三人、よっぽど出したくないほど
重要な奴隷かもしれねぇな。
だが
ゴクドーは巨体に見合わない速度で見張りに近づき両手で
見張り二人の頭を掴み壁に叩き付けた。
壁にたたきつけた音は【消音】で対処済みである。
「ワリィな、あんちゃん達、お勤めはここまでだ」
仮面の下で笑いながら言う。
見張りを始末した次はドアを豪快に蹴破り中の三人を
地面、壁、天井に吹き飛ばし、気絶させた。
見張りの中にアドグロの側近でLV48のピッゾがいたが
まったく相手になることもなく他の見張りと同列に扱われた。
「よぉ、元気か?ってなわきゃねぇわな」
牢の中にいた桃髪の少女の腕には腕輪がつけられている。
この腕輪には装着者の魔力を奪う効果があり
無理に取り外そうとすれば装着者の命を奪うものだ。
「桃色の髪か、ウチにそんなにいねぇやつだな」
どうでもいいことを考えながらゴクドーは牢を壊し
少女の腕輪に手をかけた。
「こいつは【無限倉庫】へしまうか」
キールの喜ぶものである研究サンプルである。
奴隷の首輪と奴隷魔術の資料もすでに転送済みだ。
「魔力欠乏症だと立つこともままならなかったんだっけか
マナポーション飲ませて、ゴーレムにここを守らせておくか
起きたら適当に世話頼むわ」
ゴーレムに世話係を頼み
ゴクドーは地下室をあとにした。
「次の奴はあの部屋だな」
次にゴクドーが向かうのは屋敷の一階奥の地下室だ。
ここには三人の奴隷と三人の見張りがいた。
ドアを開け見張りAにアッパーをかまし
見張りB、Ⅽには壁にキスをさせ眠ってもらった。
「ここも制圧完了っと
ここはイルマ、グローリア、ファイ、か」
この三人も先ほどの地下室へ連れていき治療を施した。
騒がれても面倒なので『睡眠』をかけ眠らせている。
眠らせている間に【次元世界】へ送り込む。
「うし、救出完了っと、あとはここの破壊だけだな」
ゴクドーは建物の中心部分あたりに魔法陣を仕込んだ。
それもこの建物がある敷地内にしか影響を及ぼさないものを。
この魔法陣は魔術師が見れば誰もが弟子入りを願うほどの術式だった。
「範囲指定、威力制御、魔力制御、術式良好、
んじゃ、派手に爆破しちまうか」
建物が見える範囲で距離をとり術式を発動させる。
『遅延爆発』
爆発へのカウントダウンが始まる
カウントダウンの間に念のため消音や隠蔽結界も施しておく。
3・・・2・・・1・・・
建物が爆炎に包まれた。
結界内からの音の遮断に成功したのを確認した
ゴクドーは【次元世界】に消えていった。
爆炎が消えた後には焼け焦げた大地だけが残り、
違法奴隷売買の一切の痕跡は闇に、爆炎の中に消えた。
この現場は以降謎の災害が起きたとして少しだけ有名になるのであった。




