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19話 この世界初の貴族はまともでした

 部屋に入るとそこにいたのはこの国のお姫様と思われる人物と領主と思われる初老の男性、そして護衛の騎士が四人で男性と女性で二人ずつだ。


 彼らの向かいの席に座ることに。ライルさんはお互いの間に座った。

「彼がカラルド=ルックル、この街の領主であり伯爵だ」

「辺境の街の、ですがな」

「んでこちらが」

「ルクシア=エステラルス、この国の王女だ。姫騎士とも呼ばれている。ルクシアと呼んでくれ」

「ご丁寧にどうも、私はレルム、後ろの二人はゴクドー、ノアといいます」

「よろしく」「ペコリ」

 この世界初接触の王侯貴族はまともなようだ。

「「・・・」」

「どうかしましたか?」

 なぜか二人とも黙ってしまった。なにか不味いことをしてしまったでしょうか。

「貴殿は貴族の出身ですかな?」

「いえ、違いますが、なぜそのようなことを?」

「いえ、冒険者の方にしては丁寧なしゃべり方をなさるもので気になりましてな」

 カラルドさんにいわれてみればそうですね、慣れているのも不自然でしょうか?

 いや、やってしまったものは仕方がない。

「友人から少しマナーについて習いましてね、それでかと」

「おお、そうですか、良い友人をお持ちのようで」

 友人というより嫁やら部下なんですけどね。

 

「挨拶が済んだなら買戻しに移りたいんだが」

「そうだな」

「品を出してくれるか」

 短剣二本、指輪を机の上へだす。

「ああ、スマンが指輪は持ち主が現れなかったんでそのまま持っていていいぞ」

 指輪の持ち主はいなかったのか他の街にいるのかそのうち調べてもいいかもしれません。

「この二本で間違いないか」

「間違いなくこれですぞ取り返してくれて感謝しますして、金額はいかほどかな?」

「二本で800万ゴールドでいかがでしょう」

「む」

 ん?これはどういう反応でしょうか。提示金額が高過ぎるのか低いのか。おそらく素材や意匠からこれぐらいだと思うのですが。

 

「わかった、用意しよう」

「ありがとうございます」

 この金額で通ったようだ。臨時収入ゲットです。

 

「これで買戻しは終了でいいな」

「うむ」

「はい」

 


「じゃ、買戻しも終わったんで解散でよろしいでしょうか?」

「その前にライル殿、一つ聞きたいのだが」

「何でございましょうかルクシア様」


 ライルさんのボロはいつでますかねぇ。

 相当無理している気がするのですが。


「昨日私たちはワイバーンの群れの討伐に向かったのだがワイバーンの群れがいなかった、なぜだ?」

「いなかった?報告では確かに12体の目撃がされていたはずなんだが」

 ワイバーン?12体?昨日12体ほど経験値にしましたね。

 獲物の横取りをしていまいましたか。あれ?これって言った方がいいのか?

 いや、黙っておこう、何を言われるかわかったもんじゃないですし。知らないことにしておきましょう。

「いないとなるとどこかに移ったか?いやそれだと誰かが目撃しているはずだなら誰かが討伐したのか?」

「この街でワイバーン12体を討伐できる人物は?」

「俺以外だとカラルドか今いる竜の剣のパーティメンバーだな。だが竜の剣は西じゃなくて南に向かわせている。ゴブリンの大量発生の件でな」

「そうか、だとしたらいったい誰が」

 ライルさんがこっちを見てきた。

「そういえば、お前ら西に行ってなかったか?」

 それを聞いてしまいますか。

「確かに行きましたが薬草採取だけして帰りましたしワイバーンにも遭遇してませんよ」

 顔には一切出さずに言った。ポーカーフェイスってこういう時大事ですね。

「そうか、誰が狩ったのか分かればゴブリン討伐に協力してもらおうと思ったんだがな」

 紛らわしいことをしてしまった。心の中で謝罪しておく。

 

 ん?さっきから視線を感じますね。姫騎士さんの後ろの緑髪の女騎士からか。

 これは鑑定されている・・・のか?

 隠蔽してますしばれても偽のステータスなので大丈夫でしょうが。

 見るならあなたのも見せてもらいましょう。

ジェシカ

人間

LV92

<鑑定>

<剣術LV8>

<風属性魔法LV7>

<土属性魔法LV3>

<属性付与LV7>

<身体強化LV8>

<風の加護>

<守護者>

 おお~92ですか、この世界での強者の立ち位置にいそうなレベルですね。これを見るとミアさんがまだ大人になっていない年齢で異常に強くなってしまったのがわかりますね。

 魔法系は超えてしまってますし。強化したのは我々ですが。

 やってしまったものは仕方がない。


「そろそろ、宿に戻ってもよろしいでしょうか」

「ああ、いいぞ、スマンな戻ってきたところを呼んじまってすまなかった。それから明日ゴブリン共の討伐に向かうことになった午後からの予定だから午前中に準備しておいてくれくれ」

「わかりました、それでは失礼します」

 部屋を出てすぐにキールさんに連絡をする。

「キールさん奴隷商の位置をピックアップしておいてください」

「いきなりどうしたんだい?」

「臨時収入が入ったので奴隷を購入します」

「御意」

 明日の午前は奴隷商巡りにしましょう。新しい強化候補を探したいですし。



ー------

 三人が退出した後の応接室。

「ふむ、吹っ掛けられるかと思いましたがこの短剣の価値を知っていたのかでしょうかライル、彼らは何者で?」

「最近この街にきた奴らです詳しくは知りません」

「ジェシカ、鑑定の結果はどうだった?」

「それが・・・」

 ジェシカは言いにくそうに結果を報告した。

 

「見ることができなかった?」

「おそらく私よりもレベルが高いのか隠蔽等のスキルを持っているものと思われます」

 

 ジェシカの予想は当たっている。

 当たっているが加減状態の隠蔽を見破れないことをレルムたちは想像していなかったのである。

 そのせいで過大評価をされ巻き込まれることになるとは買戻しの席についていた三人は思っていなかった。

 

 もしも隠蔽を見破られていたなら偽装されたステータスが現れ過大評価されることはなかったかもしれない。


 護衛でもあり右腕でもあるジェシカのレベルは92。冒険者でいうSランククラスの強さであり

 その彼女が鑑定に失敗したというなら先ほどの冒険者達は格上の存在になる。

 

「ライル殿、依頼をしたいのだが」

 ルクシアは自分の直感を信じて動き出す。協力者を得るために。



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