始めてのパーティ参加!(なお全滅)
なんか続きました。
実家に戻ったら、血まみれの私を見てお母さまがぶっ倒れた。お父様は、もうすぐ嫁に行く身なんだから危険な事はするなとかぬかしやがる。
うっせーー!誰のせいでこんな目にあってると思ってんだボケェ!!私の渾身の右フックがお父様のレバーに突き刺さり、10割吹っ飛んでお父様は崩れ落ちた。ウィナーーーインゲーニッツ!!
じゃ、あとは任せたぞセバスチャン。お風呂に入ってごはん食べて歯をみがいて寝る。おやすみー。
明けて翌日、今日も今日とてダンジョンアタックである。でもその前に、さすがにソロはあれなんでちゃんとパーティーを組む事にした。ギルドのおねーさんの横で、頭の横に色付きの風船をぶっ刺してパーティー参加希望を出し、球出し放置する。いまいち理解しかねるがこういうルールらしい。
しばらくぼーっとしてたら「パーティーいかがですか?こちら戦、シの2名です。」と声をかけられたので早速パーティーインする。集まったメンバーはみんな駆け出し冒険者で、戦士のデオチ、シーフのクッコロ、そしてこの私、シロッコ・フォン・サビーネ伯爵令嬢である。気軽にシロちゃんって呼んでね。
「初めまして。デオチです。」
「クッコロでーす!シロちゃんよろしくねー!」
打ち合わせもそこそこに、さっそくダンジョンに出発。ちなみにギルドから邪神のダンジョンまでは徒歩5分である。家賃高そう。
駆け出しとはいえさすがにみんな冒険者である。昨日の私とは違って、松明を持ち慎重にダンジョンを進んでいく。おお、なんか冒険者っぽいぞ、やるじゃないかデオチ。
最初の曲がり角を曲がった瞬間、大きな棍棒が振るわれて、デオチの首がへし折れて吹き飛んだ。どう見ても即死である。
おいいいいい!デオチ!それは私の芸風だ!!っていうか天丼じゃねーか!!出落ちしてんじゃねーぞデオチィ!!
「きゃあああああああああああっ!!」
今度はなんだよ!!慌てて振り向くと、クッコロがでっかい鬼っぽいやつに捕まって、暗がりへ引きずられていく。
「やめてっ!やめてぇっ!!私に酷い事する気でしょう!?春画本みたいに!春画本みたいにぃ!!くっ!殺せぇえええええ!!」
ジタバタと暴れるクッコロは、抵抗むなしくそのまま闇の中に消えてしまった。オーケイ、ノルマ達成である。何のだよ。
さて、こちらはそれどころでは無い、私の前にはさっき棍棒の一撃でデオチを出落ちさせた犯人が居やがるのだ。バカでかい棍棒を弄び、口からはだらだらと涎を垂らしていやらしい目つきでこっちを見ている、なんかでっかい奴。
鬼っぽいからオーガかと思ったが、鑑定したらホブゴブリンと出た。先日のゴブリンの上位種か。よかろう、先日はゴブリン相手に無双したのだ。相手にとって不足は無い。すちゃっと剣を構えると、それに呼応して、ホブゴブリンの股間の剣がもりもりと怒張し始めた。空気読め。
そういえば私もピチピチ15歳お嬢様であった。ここで負けたらクッコロされてしまう。負けるものか、女の子には負けられない戦いがあるのだ!気合を入れ、雄叫びをあげようと思ったら、ぶーんと棍棒が振るわれて私の頭が叩き潰された。
頭蓋骨がひしゃげ、首の骨がへし折れたのが感覚で伝わる。なんか首がぷらんぷらんしているのはわかるのだが、神経が切れているのか首から下が動かない。脳みそからの命令が伝わらない感じ。うーん。どうすっべか、これ。
続けて棍棒が振るわれ、私の頭がべっしんべっしんと左右に張り倒されて、だんだん筋と関節が伸びてしまって首がだらりと垂れさがっていく。いや、キモいんだけど、これ。そのうちに、身体がかくんと崩れ落ちてその場に倒れてしまった。ホブの奴が私の身体をひょいと持ち上げる。いやちょっと待てや。私の身体をどうする気だ。
冗談では無い。このままではクッコロどころでは無いひっでー事になってしまう。なんとかして身体が動かないものか。ええい、動け!動け!うごいてよっ!!ここで動いてくれなきゃいつ動くっていうのさ!いつかって今さ!!ささやき、えいしょう、いのり、ねんじろ!!
相変わらず体の感覚は無いが、私の腕がぴくっと動いた。お、いけんじゃね。これいけんじゃね。おい。がっしと剣を握り直し、ホブの奴の顔面に突き立てる。ッシャオラ!!
ホブの奴は余程驚いたのか、その場で私の身体を放り出そうとするが、そうはさせてなるものかと、握りしめた剣に万力のごとく力を籠める。ぐぬぬぬぬぬ!あれ、っていうか私の視点変じゃね。私の剣がホブの顔面に突き立って、目ん玉抉り出そうとぐりぐりしてる様子がなんかこう全体図で見える、なんだこれ。
もげてた。落ちてた。地面に落ちてた。なにがって首だよ。私の首。
ええええええええええええっ!!思わず絶叫をあげる。ぐおおおおおおおおおっ!?とホブの奴も絶叫をあげた。そりゃ驚くわ。なんじゃこれ。超速再生があるから平気だもんってレベルじゃねーぞ。どうなってんだ私の身体。
まあええわ。死んでないしええわ。今私にとって重要なのはこのホブの野郎をぶち殺し、デオチとクッコロの仇を取ることである。一人死んでないかもしれんけど。
ごっすんごっすんと剣を押し込む。私の頭が地面からそれを応援する。ホブが狂乱して、眼窩から血を流しながら狂い叫び、私の胴体を力任せにむしり取り、引き剥がそうとするが、もはや私の身体は頭部からの遠隔自動操縦だ。脳みそのリミッターが解除された美少女ボディーはすさまじい怪力を発揮してホブの野郎に食らいつく。あ、でもちょっと力み過ぎて自壊し始めてるかも。やっべ、早く死ねよおらぁん!?
ブヂブヂブヂブヂッブギュッっとキモイ音を立てて、私の剣がホブの眼窩にすっぽり埋まった。とたん、ビクンと体を跳ねさせて、ホブが動かなくなったかと思うと、その場で崩れ落ちる。どうやら脳みそまでイッたらしい。やったぜ。
さーってどうすっべか。これ、くっ付くんかな。頭。私のボデーがとことこと近づいてきて、私の頭をひょいと拾い上げる。頭の上に乗っけてみた。くっついた。いけるやん。お嬢様!新しい顔よ!!
まあ、なにはともあれ大勝利である。ホブって売れるんだろうか。よくわからんけどせっかくぶっ殺したんだから持って帰ることにする。素材扱いで売れるかもしれんし。ホブの足をひっつかんでズリズリ引きずる。重い。ついでにデオチの足もひっつかんでズリズリ引きずる。同じパーティーメンバーなのだ。せめてギルドに連れて帰って弔ってやろう。パーティー組んでたの5分だけど。クッコロ?いや、私も満身創痍だからね。ちょっときつい。まあ、生きてはいると思う。クッコロされてるかもしれんけど。
相変わらず血まみれ泥まみれケチョンケチョンになってギルドに帰還。ホブの死体とデオチの遺体をカウンターに乗っける。おねーさんに気は確かか?って言われた。いや、売りたいのはホブだけだよ。デオチは売らないよ。
素材代を期待したのだが、ホブは精々潰して畑の肥料にするくらいしか使い道が無いらしい。ただの産業廃棄物だったわ。ファッキューホブ。二束三文で買い取ってもらい、デオチの遺体をおねーさんに引き渡してギルドを後にする。ただいろんなものを失っただけだった。初めてのパーティーメンバーを、そして私の頭部を・・・。むなしい。
次の日、ギルドに顔を出したらクッコロがパーティー参加希望を出してボーっとしてた。無事だったんかお前。
「あーーーっ!!シロちゃん酷いじゃないですかぁ!私あの後もうひっどい目にあったんですよぉ!!」
うん、知ってる。元気そうでよかったね。
「聞いてくださいよお!あのゴブリン共ったら酷いんですよ!やたら乱暴な癖に短小ばっかでクソザコナメジク共しかいなかったんですぅ!!さいってーー!!」
知らんがな。っていうかタフだな。お前。まあ見捨てた私も悪かったよ。ごめんな。聞けば、結局あの後クッコロされてる最中に、他の冒険者パーティーに助け出されたらしい。そのまま手当をされた後でお持ち帰りされて、ご飯とベッドを奢ってもらったそうだ。いや、私15歳だからね。そんなちょっとオトナーンな刺激の強い話をお子様にされても困る。
ぺらぺらりとしゃべり続けるクッコロを適当に流しつつ、そういやレベルアップとかしたかなと思い自分を鑑定してみると、「念動」ってスキルが生えてた。頭がもげても身体を動かせたのはこのおかげだろうか。不死とかアンデッドとか超魔ゾンビとか変なのが生えて無くて良かった。
昨日散々な目にあったばかりだったので、その日はダンジョンに潜る気にもなれず、クッコロと一緒にぐてりとだべって一日を過ごしたのであった。
あ、デオチの奴にお焼香しとこ。
【現在の所持スキル】
・鑑定
・超速再生
・痛覚耐性
・念動 ← NEW!
・邪神の加護
【装備】
・実家に飾ってあった鎧が持ってた剣(折れそう)
・倉庫でほこり被ってた皮鎧(半壊)
・愛用のブーツ(血まみれ)