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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第七章 合宿、開始!
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勇正の本音

 何処まで走ってきたんだろう?

 今の僕にはそれすら分からなかった。


「はぁ……はぁ……!」


 けれど、これだけは分かる。

 僕は逃げ出したんだ。

 何もかも辛くなって友達からも……自分からも逃げ出したんだ。


『——正! 勇——!』


 僕は最低だ。

 約束した事ですら守れずに逃げ出したんだ。

 僕は……僕は……。


『勇正!』


 最低な人間だ。


「ッ!」

『UNITE OFF』


 アルジャに名前を呼ばれた事に気付いた僕は体勢を崩しその場にうつ伏せで倒れる。

 それと同時にラットとの融合が解除され、スマホも自分の近くに落ちる。


「はぁ……はぁ……」

『勇正……』


 倒れた僕は少し落ち着いたのかうつ伏せから仰向けに変えて周りを見始める。

 耳を澄まさなくても聞こえてくる波音。それに倒れた時に汗でくっ付いたと思われる砂。

 どうやら僕はまだ何処かの海岸に居るんですね……。


『少しは落ち着いたか?』


 近くに落ちていたスマホからアルジャがホログラムを使いながら僕の視界へと入ってくる。


「……はい」

『……そうか』


 僕は質問に対して素直に答えた。

 そして、アルジャはそれ以上何も言わずに自分の方を見ていた。


「……アルジャ、僕は何処に行っても役立たずだったんです」

『……』

「昔からどんな事をしても人より劣っていて役立たずとか言われてきたんです」


 不意に僕は昔の事を語り出す。

 その話をアルジャは空気を読んでか黙って聞いてくれた。


「その言葉を聞く度に僕自身も自分の不甲斐なさに苛立ちが止まりませんでした」

『……』

「そんな自分を変えたかったです。何も出来ない自分を何でも出来る自分に……!」


 それに甘えて僕は昔の事を淡々と語っていく。


「陽太君たちとなら何かが変われると思いました。こんな僕でも信頼してくれる人たちとなら絶対に変われるって」

『……』

「でも、ここでも同じだった。結局、僕は変われなかった……」


 僕はそう語った後、頬を何か流れている事に気付く。

 それを隠そうと右腕で目元を覆う。


「こんな思いをするなら僕は関わらない方が良かった……」

『勇正……』


 そう言いながら僕は涙を拭いていく。

 けれど、何度拭いても涙は止まらず溢れ出していた。


『ッ!? 何だ!?』

「えっ……」


 僕が涙を拭き続けていると突然、静寂を保っていたアルジャが声を荒げる。

 その声を聞いた僕は何が起きたのか確かめる為に目元を隠した右腕を退ける。

 すると……。


「これは……霧?」


 いつの間にか自分の周りが霧に覆われていた。


「何で……? さっきまであんなに晴れていたのに……」


 霧が出ている事に不審に思った僕はすぐに落ちてるスマホを取りながらその場に立った。

 そして、周りを確認しながら臨戦態勢を整えていく。


『勇正……気を付けろ。この霧……何か変だ』

「はい……」


 お互いに張り詰めた空気をただ寄せていると……。


「なっ、何だ!?」


 突然、霧が僕の体を覆っていく。


『勇正!』

「うわわわあぁああ!」


 アルジャの呼ぶ声を聞きながら僕は霧に覆われていった。


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