二人の戦い
「さぁ、どうしますかね……」
砂浜と海の境目に居る僕は真正面に居る美鈴さんが立っていた。
本来なら陽太君と戦う筈でしたが彼女からの申し建てがあってこのような事になったのです。
しかし、まさか彼女が僕と同じ事を考えていたとは思いませんでした。
正直、僕たちは陽太君より弱くて役に立つ事が無かった。
まぁ、美鈴さんは僕より役に立つ事は多かったですけど……。
「勇正君、準備はいい?」
僕がそう考えていると美鈴さんがそう聞いてきました。
おっと、今は美鈴さんと戦う事に集中しないといけませんね。
じゃあ、そろそろ……。
「いつでも大丈夫です!」
「じゃあ、いっくよ!」
僕はそう勢いよく叫んだ後、美鈴さんは背中にある翼を羽ばたかせながら自分の方へと飛んでくる。
やはりこの地形だと空を飛んだ方が有利と考えてきましたか。
美鈴さんの持っているモンスターはエメラ、スネーク、ラット、ゴート。
どのモンスターも機動力が高い。
その中でこの砂浜に対応できて機動力を生かせるのが空を飛べるエメラだけです。
ですが……。
「甘いです! 美鈴さん!」
僕はそう叫びながら光に包まれていく。
「何!? ここで姿を変えるのか!?」
その事に対して遠くで見ていた陽太君が驚きを隠せなかった。
『UNITE CHANGE! REFRESH CRICKET!』
スマホの電子音声が聞こえてきたともに僕の姿が露になる。
全体的に緑の衣装に包まれており頭には帽子。顔は黒いマスクに覆われていて、まるでRPGに出て来る吟遊詩人のような姿をしていた。そして、両手には吟遊詩人らしくシタールが持たれていた。
クリケットの数値は……十三%。
アルジャの時より十%も下がっているのは気になりますがやむを得ないです。
「行きます!」
僕はそう言った後、普段なら弾けない筈のシタールを鳴らしていく。
ここら辺もモンスターが僕に合わせてくれているのでしょう。
『美鈴、危ない!』
「えっ、何? うわっ!?」
僕が演奏をし始めるとエメラが危険を察知したのか美鈴さんにそう呼びかける。
彼女は何を言っているのかすぐに分からなかったが地面から五線譜のような線が生えてきたのに気が付き、感覚的に避ける。
「危なかった……」
『また来ます!』
美鈴さんが安心しているのも束の間、五線譜のような線は次々と地面から出て来る。
それを察知した彼女は次々と避けながら僕から遠ざかっていく。
『このままじゃ駄目です』
「仕方ない! このまま突っ込むしかない!」
そう言った後、美鈴さんは僕の攻撃を避けながら少しずつ近づいてくる。
よし、予定通りです。
『……! 美鈴、駄目です!』
「えっ……」
美鈴さんの突進が僕に当たりそうになった直前、エメラが何かに感づいたのかそう叫んだ。
けれど……。
「もう遅いです!」
僕はそう言いながらシタールを大きく鳴らしていく。
すると、自分の手前に五線譜のような線を地面から出て突進してきた美鈴さんを捕まえる。
「しま……った」
やっと美鈴さんも気が付いたけど、すでに動ける状態では無かった。
『UNITE CHANGE! CROSS KNIGHT!』
美鈴さんが動ける状態じゃないのを確認した後、僕は光に包まれていく。
そして、アルジャの姿になっていく。
ちなみにクリケットの攻撃は融合を変えた後でも三分は解けない。
「これで終わりです。美鈴さん。降参してください」
僕はそう言いながら右手の剣を美鈴さんに向ける。
「降参……?」
「この状況を見れば分かりますよね? 美鈴さんが圧倒的に不利な事を……」
僕はそう言いながら美鈴さんの首元に剣を近付ける。
彼女も僕の方を見ながら何かを考えていた。
「降参……」
「ん……?」
「しないよ!」
『UNITE CHANGE! SLEEP GOTH!』
美鈴さんはそう意思を表明しながら体が光に包まれていく。
そして光に包まれてた後、彼女の姿が露になった。
頭には羊らしい角が生えていて、全体的に露出の多いもこもこした白い衣装を着ていた。
ちなみに美鈴さんとゴートの数値は十五%。
けれど……。
「今更、融合を変えた所でこの状況は変わりませんよ!」
「それはどうかな?」
「えっ……?」
美鈴さんはそう言った後、白い衣装のもこもこした部分が膨らんでいく。
そして、段々と大きく膨らんでいき五線譜の線は切れていった。
「うっそ!?」
『勇正、離れろ! それに触れたら寝てしまう!』
「分かってます!」
僕はアルジャの忠告を聞いた後、後ろへと下がる。
ある程度、下がった後も美鈴さんのもこもこした部分は膨らみ続けいつの間にか彼女さえも呑み込んだ大きな白い毛玉が自分の目の前で出来た。
『勇正、どうする?』
「どうするって言われても……」
アルジャがどうすると言われて僕は焦り始める。
これは想定外です。
まさかこうゆう方法で僕の捕縛攻撃を無効化してくるとは思いませんでした。
しかも、迂闊に近付けないのも問題です。
あれに触れたら眠って僕の負けになります。
もうどうしたらいいんだ……。
『UNITE CHANGE! WIND PHOENIX!』
「えっ!?」
僕が焦っていると突然、白い毛玉が光り出してスマホの電子音声が聞えてくる。
どうやら美鈴さんがエメラに融合を戻したようだ。
それでも白い毛玉は自分の捕縛攻撃のように残っていた。
「エメラ、行くよ!」
『はい!』
美鈴さんたちがそう叫んだ後、また翡翠色に光り始める。
その光を見た瞬間、僕の頭はある結論が過ってしまう。
「まさか……これって……」
「勇正君、いっくよ!」
美鈴さんが僕に向かって叫んだ後、強い突風が起き始める。
その突風は白い毛玉や僕を巻き込んで小さい嵐のようになっていく。
「うっわわわわわぁあぁ!」
嵐に巻き込まれて飛ばされた僕は霞んでいく視線の中、翡翠色に輝く光が見えた。
その光の正体はこんな状況でも理解出来てしまった。
なぜなら……。
『STRIKE BURST!』
僕の結論通り、美鈴さんが翡翠色に輝く鳥になって必殺技を放ったからだ。
(あぁ……また駄目だった。結局、僕は……何をやっても駄目な奴なんだ……)
僕はそう思いながら段々と意識を失っていった。
※※※
『見たか……ヨウタ……』
「あぁ……」
美鈴たちの戦いを見た後、俺とグレンは驚きを隠せなかった。
なぜなら……。
「美鈴とエメラの数値が……一気に上がった」




