納得いかない理由
「あぁ、俺がやりたかったのに……」
俺はそう嘆きながら遠くから美鈴たちを座って見ていた。
ちなみにこれから戦闘する二人は海と砂浜の境目でお互いに見合っていた。
『まぁ、ヨウタ。そう言うなよ。さっき聞いてミスズの考えを聞いて認めただろ』
「……」
グレンにそう言われた俺は口ごもる。
俺が渋々、認めた理由は時をちょっと前に遡る。
※※※
「美鈴、何でだよ。俺にやらせてくれよ」
やっと美鈴が戦うって言った事を理解した俺はそう反論しながら近づいていた。
「陽太君、待ってください。恐らく美鈴さんも何か考えがあって言ったんだと思います。ですよね、美鈴さん?」
「うん、そうだよ」
俺を止めながら勇正が同意を求めると美鈴は素直に認めた。
「考え?」
「そう。陽太君、この数値で分かる通り一番高いのは君だね」
「あぁ……」
確かにこの中で一番数値が高いのは俺だ。
だけど、それと美鈴が戦うって事が関係しているのか?
「この数値は強さに比例するという事は陽太君が一番、強いという事になるね」
「確かにそうだけど……それだけじゃ強さは決まらないと思うぞ」
さっき、グレンは数値と強さは比例すると言っていた。
けれど、これだけで強さが決まるとは俺は思わない。
戦うモンスターによって相性とかも変わるし……。
「私もそう思う。けど、それ以上に私は陽太君との力の差を感じてるの」
「えっ……」
美鈴はひどく冷静に俺にそう言い放った。
その事を聞いた自分は驚きを隠せずにいた。
「それを思っている私だけじゃない。そうだよね、勇正君?」
「えっ……勇正?」
「……」
美鈴がそう言った後、俺を止めていた勇正が黙り始まる。
それと同時に二人が自分との力の差を感じていた事を段々と理解していった。
「本当、なのか……?」
「うん、私たちはそう感じている。だからこそ陽太君の足手まといにはなりたくない」
美鈴の一言一言が俺の心を貫いていった。
「その為には今の私たちの実力が何処までやれるのかを陽太君に見て欲しいの。それで見極めてほしい」
「……」
美鈴にそう言われた後、俺はさっきまであった反抗する気力が無くなっていた。
それを感じた勇正は自分を止めるのを辞める。
……まさか美鈴たちがそんな事を考えていたとはな。
……いや、違う。
二人がそう思っていたのは薄々感づいていた。
けれど、自分の中でそれは絶対に勘違いと思っていた。
持っているモンスターが多いから戦いやすいだけ。
グレンたちの能力に助けられているだけ。
そう考えて現実を直視しなかったのが今の俺だ。
しかし、それももう終わりだ。
何故なら美鈴が思っていた事を言ってしまったから。
「……分かった。見届けるよ」
こうして俺は美鈴と勇正の戦いを渋々認めた。
※※※
『しかし、ミスズたちがそう感じているとは思わなかったな』
「……グレンはどう思う? そんなに俺と美鈴たちの差があるか?」
『正直、あまり無い。けど、お前らの場合は特別かもしれない』
「特別?」
恐る恐る俺が尋ねるとグレンはそう答えた。
けれど、その意味は自分には分からなかった。
『ヨウタの場合、ほとんどの戦闘で活躍してきた。対してミスズたちは一部を除いてこれといった活躍が出来なかった。恐らくそこら辺で実力の差があると感じたんだろう』
「……」
グレンの説明を聞いた後、俺は下を見始める。
確かにほとんどの戦闘で俺が止めを刺してきた。
それを活躍だと言うならば美鈴たちはあまり出来なかったのかも知れない。
けど……。
「俺は美鈴たちの事を役立たずと思った事は無い」
俺はそう言いながら拳を握り締めた。
『……まぁ、とりあえずミスズたちの実力を見ようぜ。もちろん二人の数値を見ながらな』
「……あぁ」
そう言う会話をした後、俺は苛立ちを押さえながら美鈴たちの戦いを見守っていた。




