それぞれの準備
「えっと、タオルは持った。日焼け止めも持った。後は……」
『美鈴、ビーチサンダルは持ちましたか? 砂浜は意外と危ないですから』
「あっ、忘れてた。ありがとう、エメラ」
夏の西日が傾いてきた頃、私は合宿の為に自分の部屋で荷物を整えていた。
ホログラムを使ったエメラも手伝ってくれるお陰で準備はスムーズに進んでいく。
こうゆう時に周りに手伝ってくれる人がいると本当に助かる。
自分では気付けない部分も二人いれば気付ける。
まぁ、エメラは人じゃないけどね……。
『いえ、どういたしまして。それより美鈴、明日は何時ごろに駅に集合でしたっけ?』
「明日は六時に集合だよ。六時十一分発の電車に乗る予定」
『そうでしたね。遅れないように今日は早く眠らないといけませんね』
「そうだね」
荷物の整理をしながら私たちは明日の予定を話していた。
けれど、明日は本当に早いな……。
エメラの言う通り、今日は早めに寝ておかないと遅れそう。
『所で美鈴?』
「ん? どうしたの?」
『陽太様たちにあの事を伝えなくてよろしいのですか?』
「あの事? ……あぁ、あの事ね」
エメラが伝えようとしている事にすぐに察した私はそのまま荷物の整理を続けていく。
「確かにあの事は陽太君たちには伝えないといけないと思うよ。だけど、まだ内緒にしていたいんだ」
『どうしてですか?』
「それは……」
私は荷物の整理を辞めてエメラの方を向く。
そして、
「ちょっとだけ陽太君たちを脅かしたいんだ」
悪戯っぽく言い放った。
すると、発言を聞いていたエメラは呆れた表情を浮かべていた。
『全く貴方も貴方でいい趣味してますね……』
「それは誉め言葉として受け取っておくよ」
そうやり取りした後、私は荷物の整理を再開していくのであった。
※※※
「よし、これで準備は完了かな……?」
すっかり日が沈み東の方から月が出てきた頃、僕は自分の部屋で荷物の整理をしていた。
そして、ちょうど最後の荷物を入れ終わった所です。
『勇正、荷造りは終わったのか?』
鞄の近くに置いてあったスマホからホログラムを使いながらアルジャが出てくる。
「はい、終わりました! 後は明日を待つばかりです!」
アルジャの質問に答えながら僕は鞄のチャックを閉めていく。
『何やら気合が入っているようだがどうしたんだ?』
「当たり前です! 明日から合宿……強くなる為に頑張らないといけませんからね!」
『おぉ、それで気合が入っているのか! だったら勇正に負けないように我も気合を入れなければな!』
僕が合宿の抱負を叫んだ後、アルジャも負けじと気合を入れ始める。
そう……明日から合宿。
この機会に僕は皆より強くなるんです!
絶対に!
もしそれが出来なかったら僕は……。
『勇正、どうした? いきなり暗くなって?』
「はっ!?」
僕の様子を見ていたアルジャがそう言いながら近づいてきた。
駄目です……こんなんじゃ強くなれません。
「とにかく僕は強くならないといけません! この合宿で絶対に強くなるんです!」
『勇正、その意気だ! 我と共に強くなろうぞ!』
「はい!」
そうして僕たちはお互いに気合を入れ直しながら、合宿の前夜を過ごしていったのであった。




