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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第六章 夏休み前の出来事
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夜中の特訓

「あぁ、まじかよ……」


 俺は自分の部屋で電気を付けずに夜空に輝く星たちを見ながら愚痴を言っていた。

 あの後、俺と母さんを聞いていた美鈴が俺に提案をしてきた。

 その提案とは叔母さんの手伝いを美鈴と勇正もやるという事だった。

 しかも、泊りがけで。

 何故、美鈴がその提案をしてきたのかもちゃんとした理由があった。

 その理由とはグレンが言っていた事を叔母さんの手伝いがしながらやるというのだ。

 確かに叔母さんの手伝いは昼間の混んでいる時間帯のみ。

 グレンの言っていた事を十分に出来る可能性はある。

 だからといって、叔母さんが美鈴たちの手伝いを許してくれるかは別だ。

 その事を俺が美鈴たちに言うと、一度は諦めかけた。

 しかし、母さんが美鈴たちの姿を見かねたのか叔母さんに掛け合ってみると提案してきた。

 そして、母さんは自分のスマホでもう一度、叔母さんの所に電話を掛けて交渉をし始める。

 すると、あっさりと了承されて美鈴たちも叔母さんが経営している海の家で手伝う事になった。

 了承された事に美鈴たちは喜んでいる中、俺はまだ行くとも言ってないのにとんとん拍子で話が進んでいく事に呆れてしまった。

 その呆れが今でも残りながら星空を見ていた。


「まさかこんな事になるとは思わなかったな……」

『しかし、これで俺が言っていた事も出来そうだな』


 星を見ながら俺が独り言を言っているとグレンがホログラムの機能を使いながら飛んでくる。


「けど、俺としてはあまり乗り気でないんだよな……」

『ヨウタ、どうしてだ?』

「叔母さんと会うのがな……」

『苦手なのか?』

「まぁ、そうだな……」


 俺はグレンと星を見ながら他愛のない会話をしていく。

 最近、俺はこうしてグレンと話す機会が多くなった。

 グレンだけじゃない。

 これまで集めてきた仲間たちとも話す機械が多くなった。

 集めた仲間たちはどうやら地球の言語を大体理解しているらしく、俺の言った事に対して笑ったりする。

 しかし、俺の方は仲間たちが何を言っているかは未だに分からない。

 その時はグレンが通訳してくれるからいいがもう少しそこら辺を何とかしてほしい所だ。

 通訳する度にグレンが出てくるからスマホの電池の減りが速くなる。

 今みたいに充電している時は別にいいが……。


「まぁ、叔母さんが住んでいる所はここより星が見えて好きなんだよな……」

『ヨウタは本当に星が好きだな』

「まあな」


 俺はグレンの質問に答えながら夜空を見続ける。

 夜空はもうすっかり夏の星座で彩られていて、とても綺麗だった。


『そう言えばヨウタ。ヨウタの夢って何だ?』

「えっ?」


 突然の質問に対して俺は戸惑いながらグレンの方を向く。

 えっ、何?

 俺の夢?


「どうしてそんな事を聞くんだ?」

『さっきミスズやユウセイは自分の夢の事を話していたけど、ヨウタだけ何も話してなかったからどうなんだろうって』


 なるほど。

 このドラゴンは単純に俺の夢に興味があって聞いたんだな……。


『んで、どうなんだ?』


 グレンはそう言いながら期待の眼差しで俺の事を見てくる。

 俺はため息をついた後、また星空を見る。


「……俺も美鈴と同じく夢が無いんだ」

『そうなのか?』

「あぁ。だけど、美鈴と違って夢を探そうと思わないんだ」

『……何でだ?』

「さぁ、何でだろうな……」


 星空を見ながら俺はグレンの質問に答える。

 すると……。


『嘘だな』

「えっ……?」

『ヨウタは自分で原因を知っている筈なのに動こうとしない。つまり怖がっているんだ』


 グレンはそう言い放ちながら、俺の目の前に来た。

 そう。グレンの言う通り俺は夢を持つ事を恐れているのだ。

 夢を持っている人や探している人は輝いていると思う。

 けれど俺は夢を持ちたくないし、自分から探そうとしない。

 何故、自分が夢を持ちたくないのか分かっている。

 夢は希望を持つ事と同じ。

 それ自体はいい事だと思う。

 しかし、その希望を壊されるのが俺は怖いんだ。

 もしその夢が叶わずに終わっていくのだったら、最初から持たない方がいい。

 俺はそう思っている。

 それでもやはり夢を持っている人とか探している人を見ていると自分がどれだけつまらない人間だって気付いてしまう。

 気付いても俺は怖くて動けない。

 つまり俺は臆病な人間なんだ。

 臆病な人間だからこそ夢の話をされると嫌になる時があるのだ。


「……全くお前はいつも変な所で俺の核心をついてくるな」

『ヨウタは嘘つくのが下手なだけだ。それよりヨウタ……』

「ん?」

『今はそのままでいい。迷う時間も必要な事だと思う。けど、その問題をそのままだけするな。絶対、後悔するからな』

「グレン……」


 いつもだったら家族や親戚に夢の話をされると誤魔化しながら話題を変えてきた俺。

 けど、グレンの語っていく夢の話はすんなりと俺の耳へと入っていった。


『さてと、難しい話はこのぐらいするか。ヨウタ、融合だ』

「えっ? いきなり何だよ?」

『言っただろ。俺たちの本来の力にも使いこなせるぐらいに強くするって。だから、今日からその特訓を行うんだ。合宿まで時間もあるしこの期間を有効的に使わないとな』


 グレンはそう説明した後、充電のスマホの方へと飛んでいく。


「ちょっと待った! 特訓をやるって言っても何処でやるんだよ?」


 グレンの飛んでいく姿を見ながら俺はそう尋ねる。

 いくら真夜中とはいえモンスターと融合した姿で外に出るのは誰かに見られる可能性がある。

 今までは騒ぎや場所のお陰で見つからずに済んだ。

 けれど、今はそのどちらの条件も悪い。

 騒ぎは起きているが俺たちの町で起きている事ではないし、場所も俺が住んでいる所は住宅街だ。

 そんな悪条件の中で特訓なんてやったら見られるどころか俺たちが噂になる可能性もある。


『そこら辺は大丈夫だ。特訓は電脳(サイバー・)空間(スペース)で行う』

「あぁ、なるほどな……」


 スマホの方へ飛んでいくグレンは俺の方を向かずにそう答える。

 確かに電脳空間なら誰かに見られる可能性は無いから安心して特訓できる。


『んで、ヨウタ……やらないのか?』


 スマホの元にたどり着いたグレンが俺の方を向きながらそう尋ねる。

 そんなのもう決まっているだろ。


「やるに決まっている」


 俺はそう答えた後、充電していたスマホの方へと行く。

 そして、充電器をスマホから取り外してアプリを開きながらUNITE ONの文字を押した。

 押した後、俺の体は光に覆われていつも通りのグレンと融合した姿へと変わっていく。


「んで、グレン。何処の電脳空間で特訓するんだ?」

『そうだな……机に置いてある携帯ゲーム機の電脳空間で特訓するか』


 質問に対してグレンがそう答えた後、俺は机にある携帯ゲーム機に狙いを定める。

 すると俺の体は光の塊へと変わり、そのまま携帯ゲーム機に突っ込んでいく。


「ここが携帯ゲーム機の電脳空間か……」


 グレンと融合した姿に戻っていく中で俺は辺りを見回す。

 博物館の電脳空間より狭いが特訓できるスペースぐらいはあった。


『さて、皆! 頼んだぞ!』

「えっ?」


 グレンがそう叫んだ後、俺の体から小さな光の塊が複数飛び出す。


「なっ、何だぁ!?」


 俺がそう叫んだ後、複数の小さな光の塊が段々と大きくなっていく。

 複数の光の塊はそれぞれある程度の大きさになった後、様々な姿形を変えていく。


「えっ? えええええぇぇぇ!?」


 その光景を見ていた俺は驚きを隠せなかった。

 何故なら今まで集めてきた仲間たちが俺の目の前で実体化(リアライズ)しているからだ。


「グレン、これはどうゆう事だ!?」

『ホログラムの機能のお陰だ。あの機能はただ単に半透明になって、現実世界に出られるだけじゃなかったんだ。こんな風に電脳空間の中でホログラムの機能を使うと実体化できるんだ。しかも、この実体化はスマホの電池には影響はない』

「まじか……」

『但し、制約もあって実体化した電脳空間の中ならどこでも行けるが他の電脳空間には行けないみたいだ』


 グレンの説明の後、俺は改めて集めてきた仲間たちを見る。

 やはり夢で会うより現実で会った方が集めてきたという実感が出来るな……。


「所でグレン、何で仲間たちを実体化させたんだ?」

『それはヨウタの相手をしてもらうためだ』

「えっ、俺の?」

『あぁ、そうだ。ヨウタには本来の力を出しながら仲間たちと戦ってもらう』

「えっ、いいのか? そんな事して?」

『心配いらない。仲間たちの了承もしているからな』


 グレンがそう言った後、集めてきた仲間たちは一斉に頷く。

 その行動から察するにどうやらグレンの声は仲間に聞こえているみたいだ。


『ちなみにミスズたちも今頃、この特訓をやっている筈だ』

「美鈴たちも……!?」

『エメラたちに伝えておいたから恐らくな』


 美鈴たちもこの特訓をやっている……。


「だったら、俺も負けてられないな!」

『おっ、ヨウタ! やる気満々だな!』


 当たり前だ。

 そんな話を聞かされたら、やる気を出さない方がおかしい。


『じゃあ、始めるぞ! ヨウタ!』

「あぁ!」


 グレンの言葉に返事をした後、仲間たちが一斉に動き出した。

 それと同時に俺は臨戦態勢を整えつつ仲間たちの動きを目で追っていく。

 これから先、何が待っているかなんて分からない。

 けど、俺は強くなる。

 仲間たちとともに。

 今はその事だけを考えて前に進むだけだ。

 そう考えながら俺は特訓を始めるのであった。


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