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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第六章 夏休み前の出来事
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放課後の勉強会 前編

「んで、何でこうなっているんだ?」


 俺は自分の家のリビングで勉強している美鈴と小西を見ながらそう呟いていた。

 放課後、俺たちはグレンたちの仲間探しをやらずに再試験を受ける勇正の為に勉強会を開くことにした。

 しかし、そこでケチをつけてるわけではない。

 許可なしに美鈴たちが勝手に俺の家に決めてリビングで勉強している事にケチをつけているのだ。


「陽太君、仕方ないよ。学校だとグレンたちが見つかる可能性だってあるし……」


 確かに美鈴の言う通り、学校だとグレンたちが見つかるかもしれない。

 しかし……。


「俺の家だって母さんたちに見つかる可能性があるだろ」


 そう。当然、俺の家だって安全とは言い切れない。

 俺の家には母さんたちが居る。

 特に美紅にばれたら危ない。

 あいつにばれたら色々と大変だからな……。

 まぁ、この時間帯は母さんと美紅は夕飯の買い物に出かけているから大丈夫だけど……。


『ヨウタ、大丈夫だ。ばれたら何とか誤魔化すから』

「誤魔化すって……」


 空を優雅に飛んでいるグレンが言った言葉に俺は更に呆れてしまった。

 一体どうやって誤魔化すのか俺に説明してもらいたい。


「それより陽太君も休んだ分の勉強をやらないと駄目だよ」

「分かったよ……」


 美鈴にそう言われた後、俺はリビングのテーブルに開かれている問題集と参考書を見ながらノートに答えを書いていく。

 俺も俺で休んだ分の勉強をしなければいけない。

 それなのに期末テストで赤点を取らなかったのは奇跡としか言いようがない。

 しかし、パソコンとかご時世なのにノートに答えを書いていくっていうのも変なものだ。

 他の高校ではパソコンとかを支給されて勉強している時代なのに……。


「所でグレン、合宿って何をやるんですか?」


 淡々と勉強をしていくと勇正がグレンに尋ねる。

 そう言えば合宿をやるとは言っていたが何をどうするのか聞いてなかった。


『そう言えば説明してなかったな。よし、説明するか』


 グレンがそう言いながらテーブルの真ん中で降りる。

 そして、真剣な表情をしながら俺たちの事を見ていた。


『知っての通り、俺と融合したヨウタですらあの侵略者(サイバー)に歯が立たなかった。暴走してやっと倒せた』

「あぁ……」


 グレンの言う通り、俺はあの侵略者に歯が立たなかった。

 しかも、俺の持っているモンスターの中で戦闘能力が一番高い筈のグレンと融合していたのに勝てなかった。

 ちなみにモンスターたちのステータスはアプリが開いている時にある程度、表示される。

 暴走してやっと倒せたがあれは自分の力で倒したとは言い切れない。


『このまま仲間探しを続けるのもありだが侵略者と会った時、俺たちはまた逃げるしかない。だから、俺たち自身も強くなる必要がある』

「具体的には何をすればいいの?」

『ヨウタたちが俺たちの本来の力を使いこなせるように特訓するんだ』


 美鈴の質問に対してグレンはそう答えた。

 しかし、グレンが言う本来の力ってどうゆう事だ……?


「本来の力ってあの助けてくれた人が言っていた言葉ですよね?」

『あぁ、そうだ。今まで俺たちはヨウタたちに合わして戦っていたんだ』


 勇正の質問に対して素直に答えるグレン。

 しかし、あのハッキング野郎がそんな事を言っていたのか。


「だけど、グレン。何で俺たちと融合している時に本来の力を出していないんだ?」

『出さないんじゃない。出せないんだ』

「えっ?」

『今のヨウタたちじゃ俺たちの本来の力を制御できない。もし俺たちが本来の力を出したらヨウタたちの体が壊れてしまう可能性もあるんだ』


 俺が質問に対してグレンは無情にもそう言い放った。

 グレンたちの本来の力を出したら俺たちの力が壊れるだと……。


『しかし、このまま本来の力を出せないとあの侵略者には勝てない。だから、これからは少しずつ本来の力を使っていく。それでヨウタたちの体を徐々に慣らしていく』

「つまりその慣らしを多くやるために合宿をやるのね」

『ミスズ、その通りだ。後、仲間との連携を強くするために行うのも目的の一つだ』


 どうやら美鈴の考えが当たっていたらしくグレンは素直に認めながらそれに付け加えて答える。

 しかし、こんな漫画や小説みたいな展開が本当にあるとはな……。

 こいつ、もしかしてネットを通して漫画や小説を読んでいるんじゃないかな……。


「グレンの考えは分かった。けど、何処で合宿するんだ?」

『そこは今から考える』


 グレンは自信ありげにそう言い放った。

 それを見ていた俺たちは力が抜けてしまう。

 そうだよな。

 こうゆう所がグレンらしいよな……。


『全く貴方は何で無計画なのにそう自信ありげに言えるんですか?』

『まぁ、こうゆう所もグレン殿らしいですぞ』


 美鈴と勇正の鞄からエメラとアルジャがそう言いながら飛び出してくる。

 ちなみにエメラとアルジャもホログラムの機能を使っている。


『アルジャ、それはお前には言われたくない。お前も自信ありげに作戦が無いっていう所があるからな』

『何と! これは一本取られた!』


 グレンと合流するとアルジャは一緒に笑い始める。


『全く貴方たちは……』


 一方、エメラは合流した後、グレンたちの方を見ながら呆れていた。

 しかし、合宿か。

 出来るだけ金がかからない所がいいな……。


「……ん?」


 俺が合宿の事を考えていると勇正のノートと問題集が目に入った。


「勇正。そこの答え、間違っているぞ」

「えっ、何処ですか!?」


 俺の指摘に勇正は驚きながら自分のノートを見る。


「ほら、ここだよ。ここはこの公式を使うのは合っているけど計算をミスしている」

「あっ、本当だ」


 俺は勇正のノートに書いてある間違った答えを指差しながら指摘した。

 美鈴も俺が指している所を見ながら認める。


「陽太君、よく分かったね。この問題、結構難しいのに」

「俺、理数系の問題は得意なんだよ。だから、今回のテストも点数は下がったけど余裕だった」


 俺が美鈴とそう話していると……。


「いいな……僕ももう少し頭が良ければいい小説が書けるんだろうな」


 勇正がそう言いながら羨ましそうに俺たちの方を見ていた。


「勇正君は小説を書いているんだっけ?」

「はい……けど、毎日書いているんですがなかなか自分の思い通りに書けないんです……」


 美鈴が小説の事を尋ねると勇正は自分の不甲斐なさに落ち込んでしまった。


「だけど、俺は凄いと思うぞ」

「えっ?」

「俺だったら小説のしょの字も書けないと思う。それにそれだけ努力するって事はそれだけ好きだって事だろ」

「陽太君……」


 俺は思っている事をそのまま言うと勇正は少し気持ちが紛れたのか嬉しそうにしていた。


「ねぇ、勇正君は小説家になりたいの?」

「はい、一応は……」

「そうなんだ。私はまだ夢が無いからいいなぁ……」

「えっ? 嘘?」


 美鈴と勇正が夢の話を聞いていた俺は不覚にも驚いてしまった。


「陽太君、嘘って何よ? 嘘って?」

「だって、美鈴の事だからジャーナリストとかの夢を持っているんだと思っていた。噂好きだし」

「そんな単純じゃないの!」


 俺の発言に不満を感じた美鈴は少し強めにそう怒鳴った。

 その怒鳴り声に俺と勇正だけじゃなくグレンたちも驚いていた。

 ただエメラだけは驚かずにいた。


「夢って自分が本気になりたいものだと私は考えているの。確かに私は噂好きだけどそれを生かしたい夢が無いの……」

「美鈴……なんかごめん」


 段々と話す毎にくらくなっていく美鈴を見ていた俺は野暮な発言をした事に後悔し始めた。

 人を見た目で判断するのは良くないっていう事は俺が一番、分かっているのに……。


『大丈夫です。美鈴』

「えっ?」

『いつか美鈴が本気でなりたいものが来ると思います。だから、焦らずに探しましょう』

「エメラ……ありがとう!」


 エメラが美鈴に近づいていき、フォローを入れる。

 エメラのフォローを受けた美鈴は段々と笑顔を取り戻し、俺はほっとしていた。


『そういえば美鈴。夢と言えば気になる記事が『愚痴るんです』で書かれていました』

「えっ、本当! 見てみよう!」


 美鈴はそう言った後、鞄からスマホを取り出して俺たちにも見えるようにスマホをテーブルの上に置く。

 そして、美鈴はあるアプリを押す。


「美鈴さん、それは?」

「これは『愚痴るんです 小話』だよ。『愚痴るんです』のアプリ版でここから行けるんだ。後で二人も入れた方がいいよ」


 勇正の質問に答えた後、美鈴のスマホが『愚痴るんです』のページへと跳ぶ。


「エメラ、どの記事?」

『この記事です』


 エメラが美鈴のスマホに近づき、ある記事を指す。

 美鈴はエメラの指した記事を押す。

 そこに書かれていたのは突然、眠ってしまい誰もがいい夢を見てから起きるという妙な内容の記事だった。


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