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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第六章 夏休み前の出来事
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退院明けの憂鬱

 俺が病院を退院して普通に学校に行けるようになってから、一週間が経過した。

 退院してから三日ぐらいは体を動かす度に痛みが来たが今ではすっかり完治した。

 しかし、俺は今、頭を机に乗せながら項垂れていた。

 何故なら……。


「テストの順位、下がった……」


 そう。俺のテストの順位が下がったのだ。

 俺が退院して学校に行ってみるとその日から期末テストだったらしく、俺はその事に絶望した。

 どうやら美鈴たちも期末テストの事を言うのをすっかり忘れていたらしい。

 絶望しながらも俺は期末テストに臨んだが結果はこの有り様だった。

 ちなみにテスト期間中はグレンの仲間探しは中止していた。

 一学期の中間テストでは半分くらいの順位を取っていたが今回の期末テストは半分の順位より下回った。


「陽太君、仕方ないよ。今回、陽太君は意識不明だったんだし……」

「まぁ、そうだけどな……」


 隣に居る美鈴が机で項垂れている俺を宥めてくれる。

 ちなみに美鈴の順位は上位の方だ。

 美鈴は毎日、勉強の予習とかを怠らずにやっている。

 その日々の成果がテストに出ているので、ぐうの音も出ない。

 しかし美鈴の言う通り、俺は二週間も意識不明だったので勉強は出来なかった。

 しかも、期末テストの範囲ですら知らなかった。

 けど、それを言い訳にしたら駄目なのは自分でも分かる。

 もし俺があの時、無事に帰ってきたとしても勉強をやらなかったら今と同じ順位またはそれ以下の順位以下になったかもしれない。


「まぁ、赤点を取らなかったのは不幸中の幸いか……」


 俺はそう言いながら机にくっつけている顔を起こす。

 この学校はテストで赤点を取ると補習がある。

 中間テストなら放課後、長期休みが近い期末テストなら休み中の三日か四日を使って補習を行う。

 赤点一教科につき二時間の補習があり、その後に再試験がある。

 その再試験に合格しなければずっと合格するまで補習がある。

 最悪、休みが無くなる可能性があるのだ。


「そうだよ。前向きに行こうよ」

「あぁ、そうだな」


 俺と神崎がそう話していると……。


「陽太君……」

「ッ!?」


 明らかに元気が無い勇正が俺の後ろから現れる。

 勇正のその行動に俺は驚きを隠せなかった。


「勇正、どうしたんだよ? そんな顔して……」

「それがその……物理と数学のテストが赤点になってしまいました」

「えっ……マジか?」

「はい……」


 勇正は自分のテストの事を俺と神崎に言った後、酷く落ち込んでしまった。

 勇正が酷く落ち込むのも無理もない。

 誰だって休みを取られるのは嫌な事だからな。

 しかし、俺と違って勇正は勉強できる時間があったはずだ。

 それでも俺より点数が悪いという事は……。

 いや、勇正の事だ。

 きっとこの前の戦いの事を気にして勉強が出来なかったに違いない。

 そうだと信じたい。


『ユウセイ、どうしたんだ?』


 俺たちが話していると鞄から半透明状態のグレンがそう言いながら飛び出してくる。


「あっ、グレン! お前、また勝手に出てくるなよ」

『ヨウタ、大丈夫だ! 他の人が来たら消えるから!』


 俺がそう注意するがグレンはそう言い返して開き直る。

 MONSTER UNITEDの新しい機能であるホログラム。

 前にも説明をしたがこれはMONSTER UNITEDが開いている時に使えて、グレンたちの体を半透明化して俺たちが居る現実世界に出られるようにした機能である。

 しかし、それだけでは無かったのだ。

 グレンたちの意思で現実世界から消えて、スマホの中に戻れるのだ。

 そのお陰で誰かが来てもグレンたちが見られる心配もない。

 後、もう一つ分かった事がある。

 この機能はスマホから半径5m以上は出られない。

 半径5m以上出ると強制的に消えて、スマホの中に戻される仕組みになっている。

 モンスターたちが勝手に何処かに行こうとしてもこの仕組みがある限り半径5m以上は出られないのだ。

 だが、今はそこが問題ではない。


「その機能を使っているとスマホの電池が早く減るんだよ……」

『大丈夫だって! まだ電池は十分にある!』


 グレンはそう言いながら空中を優雅に泳いでいた。

 そう。MONSTER UNITEDの機能であるホログラムを使うとスマホの電池の減りが早いのだ。

 しかも、モンスターたちが出る度に電池が減るのが早い。

 そのせいでこの前、スマホを使おうとしたら電池が切れていて使えなかった。

 これが日常生活の支障程度ならまだいいが、もしモンスターと戦闘になった時にこんな事があったら本当にシャレにならない。

 それが起きないように何度もグレンたちに注意しているが今みたいに軽くあしらわれる。

 どうやらグレンたちもグレンたちでこの機能を気に入っているようだ。

 だから、俺がいくら注意してもグレンたちも辞めないでいる状態が続いているのだ。


『それよりユウセイの奴、どうしたんだ? なんか落ち込んでいるみたいだが……』


 グレンはそう言いながら勇正の方を見ていた。

 これはもう諦めて素直に勇正の話をした方がいいな……。


「実は勇正がテストで赤点を取ったんだ。そのせいで夏休みの何日かは学校に行かないといけないんだ」

『夏休み? 学生は長期の休みなのに対して大人はあまり休みが無いというあの休みか?』

「間違ってはいないがもう少し言い方を考えろよ……」


 グレンの言い分に俺は呆れながら突っ込みいれる。

 全く何処でそういうのを覚えてくるんだ……。


『しかし、困ったな』

「何でお前が困るんだ?」

『それはもちろん……』


 俺が何故困っているのか尋ねるとグレンは勿体ぶりながら言うのを躊躇っていた。

 どうせグレンの事だ。

 この夏休みを使って、徹底的に仲間探しをやると言い出すんだろうな。

 まぁ、俺たちも夏休みはそのつもりでいたが……。

 しかし、グレンは俺の予想を大きく裏切った。


『夏休みに合宿するからだ!』

「「「えっ?」」」


 グレンは貯めていた言葉を吐き出した。

 俺たちはグレンの言葉を理解出来ずにいたのであった。


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