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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第五章 それぞれの思い
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新たなる誓い

「はぁ、疲れた……」


 俺は病院のベットに横になりながら、独り言を言っていた。

 あの後、母さんが看護師を連れて俺の居る病室に帰って来た。

 その時に自分で呼吸が出来ているので呼吸器も外された。

 けれど、そこからが大変だった。

 医者の質問やら検査やらで俺は疲れてしまった。

 検査の間、痛みは結構あったが今は落ち着いている。


「しかし、明日退院か……」

『結構早いものだな……』


 俺が独り言を言っていると、机の上に置いてあるスマホからグレンの声が聞こえてくる。

 検査の結果、胸と左肩、腹の部分には痛みが残ってる筈なのに何処も異常なしと言われた。

 その後すぐに明日退院とか言われたから俺は驚きを隠せなかった。

 医者の話を聞いた後、母さんたちはそのまま家へと帰っていった。

 そして、ひと段落が付いた所で今に至る。


「異常なしならすぐに家に帰してほしいよな……」

『仕方ないさ……まぁ、今日はゆっくりと体を休めよう』


 グレンは落ち着いた声でそう言った。

 けれど、俺にはやらなければならない事がある。

 それを今すぐにでもやらないといけないんだ……。


『ヨウタ……もしかしてミスズたちの事を考えているのか?』

「!?」


 俺が考えている事をグレンが言い当てた。

 その事で俺は動揺を隠せなかった。


「どうして分かったんだ……?」

『ヨウタの考えている事は何となく分かるさ。まだ短い付き合いけどな』


 グレンの顔はここからじゃ見えないが笑って俺に話しかけているのはその声を聞いて何となく分かった。


『ヨウタ……ミスズたちに早く謝りたいんだろ』

「……あぁ」


 そう。グレンの言う通り、俺は早く神崎たちに会いたい。

 そして、謝りたい。

 自分が神崎たちを危険に巻き込んでしまった事を一刻も早く……。

 例えそれで嫌われても悔いはない。


『ヨウタ、大丈夫だ。さっき、メールを送っておいたから』

「えっ?」


 俺がグレンの話を聞いていると突然、扉を開く音が聞こえてくる。

 俺は誰が来たのか確認する為に上半身を起こして扉の方を見る。

 すると、そこに居たのは……。


「神崎に小西……!」


 今、会いたい二人が扉の所に居た。


「陽太君……!」「天道寺君……!」


 神崎と小西が俺の名前を呼びながら駆け足で駆けていく。

 そして、俺の元にたどり着いた瞬間……。


「「ごめんなさい」」


 神崎と小西はお辞儀をしながら俺に謝ってきた。


「えっ……何?」


 予想外の行動に俺は戸惑いながら尋ねた。

 すると、神崎と小西はお辞儀を辞める。

 そして、何も言わずに俺の方を見ていた。


「私たち……聞いたんだ。エメラたちの星の末路とこれからの起こりうる事を……」

「!?」


 この沈黙を先に破ったのは神崎だった。

 そして、その話を聞いて俺は驚きを隠せなかった。

 エメラたちはグレンが俺に夢で見せてくれた事を神崎たちに話したのか……。


「陽太君も知っているんでしょ? その話」

「あぁ……」


 俺は神崎の質問に素直に答える。


「それを聞いて私も勇正君も色々考えてたの……。あの時の戦いの事やこれからどうしたらいいのかを……」


 神崎は小西の方を少し見ながら俺に話していく。

 俺はそれをじっと聞いているしか出来なかった。


「私ね……!」


 神崎はいきなり、声を荒げる。

 そして神崎は俺の方を見るのをやめて、手を握りしめながら下を向く。


「あの時、あのロボットや陽太君の事が怖くて何も出来なかった……。その前に助けていれば陽太君が大怪我する事は無かった……」

「神崎……」


 神崎はあの時の戦闘を思い出しながら、自分の気持ちを語っていった。

 神崎……それは違う。

 お前は俺が暴走していた時、必死に止めようとしてくれた。

 俺はその事を覚えていないけど、夢の中で知った。

 そのお陰で俺は誰も殺さずに済んだ。


「僕も……」


 神崎が話を終わると次は黙っていた小西の口が開く。


「あの時、逃げたくてしょうがなかった……。仲間を置いても一人で逃げたかった……」

「小西……」


 小西もあの時の戦闘を思い出しながら、自分の気持ちを語っていった。

 小西……それは仕方ない。

 誰だってあの場に居たら逃げたくなる気持ちが出てくる。

 けど、それでもお前は俺の事を助けようと頑張っていたじゃないか。


「私……!」


 小西が語りを終わると神崎が突然、俺の方を向きながら叫ぶ。


「もう二度とあんな風に何も出来ずに居るのは嫌だ! だから、これからも私は仲間探しを続ける! そして、強くなる!」

「僕も……!」


 神崎が叫び終わると今度は小西が何かを言いかけてくる。


「僕ももう二度と逃げようとは考えたくない。だから、僕もこれからも仲間探しを続けていきます。そして、同じ事を繰り返さないように僕も強くなります」

「神崎、小西……」


 神崎と小西の覚悟を聞いた後、俺は呆然としていた。


「陽太君はどうするの?」

「えっ……?」

「これからの事」


 俺は神崎がこれからどうするのか尋ねられる。

 そんなのは決まっている。

 世界を救うとか未だにに分からない。

 それでも俺も仲間探しを続ける。

 そう決めたんだ。

 けれど、その前にやる事がある。


「……その前に俺も神崎たちに言わないといけない事がある」

「えっ?」


 俺はそう言った後、神崎と小西の方に目をつぶりながら頭を下げる。


「ごめんなさい! あの戦闘の時、神崎や小西……仲間の事を考えずに行動してた! その結果、暴走して神崎たちを殺そうとした! 謝って済む問題じゃないけど俺は謝りたい! だから、ごめんなさい!」


 俺は目をつぶったまま病室に響くぐらいの声で叫んだ。

 何故目をつぶっているかというと、神崎と小西の反応が見るのが怖かったからだ。

 叫び終わった今ですら目を開けるのが怖くてしょうがなかった。


「よっ、陽太君!」

「ちょっとやめてください!」


 どうやら神崎と小西の行動を見て驚いているようだ。

 それとも俺の行動を見て引いているのか……?


「謝るのはこっちだよ! 私たちは陽太君に悪い事したんだよ!」

「そうです! 僕たちは天道寺君を戦っているのに何も出来なかったんです!」


 神崎と小西は自分たちの方が悪いと反論する。


「いや、俺の方が悪いに決まっているだろ! 俺はお前らを殺そうとしたんだ!」


 俺は顔を上げずにそう反論しながら叫ぶ。

 しかし……。


「いや、私の方が悪い! 私は陽太君の暴走する前に止めていれば大怪我する事は無かった!」

「僕だって悪いですよ! 天道寺君が暴走しているのに一人で逃げる事しか考えてませんでした!」


 神崎と小西の反論も止まらなかった。

 それを聞いた俺は頭がカッとなり、顔を上げて神崎と小西の方を見る。


「俺の方が悪い!」

「私だよ!」

「僕です!」


 俺たちは顔を近づけながら口論していく。

 お互いに一歩も引かずにその後も続いた。

 そして、俺たちは息を切らしながらお互いに見ていた。


「私たち、何やっているんだろ……?」

「確かにな……」


 神崎の一言で自分たちがやっていた事を自覚した俺はそう言いながら二人を見ていた。

 そして、俺は自分たちがやっていた事に急に可笑しくなり笑い始める。

 それに釣られて神崎と小西も笑いだす。


「陽太君」


 笑い終わった後、神崎が俺の名前を呼ぶ。


「私たちはもうあの時の事は気にしていないと言えば嘘になる」


 神崎は俺の目を見ながら真剣に語っていく。

 俺は目をそらさずに話を聞いていた。


「だけど、それ以上に陽太君と一緒に居たい! 一緒に仲間探しを続けて強くなりたい!」

「……!」


 神崎がそう叫んだ後、小西も同じ考えなのか頷く。

 対して俺は神崎の話を聞いて心が少しだけ楽になったような感じがした。


「陽太君はどうなの? 私たちじゃ嫌……?」


 神崎が恐る恐る俺に尋ねてくる。

 そんなのはもう決まっている。


「嫌じゃない! 俺もお前らと強くなりたい! だから、一緒に仲間探しをしたい!」


 俺は思っている事を口に出した。

 神崎と小西は俺が言った事を理解していくと嬉しそうに笑う。

 すると、小西が右手を俺の方へ差し出す。


「これからもよろしくお願いします。天道寺君……いや、陽太君!」


 小西はそう言いながら握手を求めている。

 下の名前を呼ばれて少し驚いたが、それだけ小西が自分の事を仲間だと認識した証だと思った俺はすぐに笑顔になる。


「あぁ、これからもよろしくな! 勇正!」


 俺はそう言いながら力強く勇正の手を取った。

 すると、神崎がうらやましそうにこちらを見ている。


「か、神崎……?」

「ずるい! 私も名前で呼んでよ!」


 そう言いながら神崎は俺と小西が握手している手の所に両手を乗せる。

 俺と小西は神崎の事で少し笑った後、


「これからもよろしくな! 美鈴!」

「美鈴さん、よろしくです」


 美鈴の方を向きながら名前を呼んだ。

 その後、俺たちは笑いながらお互いの事を見ていた。

 すると……。


『ヨウタ、大変だ!』


 棚に置いてあったスマホからグレンの叫び声が聞こえてくる。


「グレン、どうした!?」


 俺たちは握手を辞め、スマホが置いてあるスマホを見る。


『アプリがまたアップデートした!』

「何っ!?」


 グレンの話を聞いた俺はすぐに棚に置いてあるスマホを取る。

 そして、アプリを開く。

 すると、スマホ画面が光りだした。


「うわっ! 眩しい!」


 俺は手で光を遮りながらスマホ画面を見る。

 すると、スマホ画面から何かが複数、飛び出した。

 俺は確認する為に恐る恐る飛び出した方を見ると……。


「グレン……皆……!」


 グレンと今まで集めた仲間たちが手乗りサイズになって、現実世界に実体化(リアライズ)した。

 しかし、体が少しだけ半透明になっていて飛べない奴も飛んでいる。


「これは一体……?」

『なるほど、理解した。これが新しい機能のホログラムか』

「ホログラム?」

『この機能はアプリが開いている時に俺たちの体を半透明にして現実世界に出られるみたいだ』


 グレンが自分の体を見ながら俺に新しい機能であるホログラムを大雑把に説明してくれた。


「凄い!」


 神崎の感激の声が聞こえてきて、俺はそちらを向く。

 すると、神崎と小西の周りにも集めた仲間たちが飛んでいた。


『これもあの白いあいつがやったのかな?』

「白いあいつ?」


 グレンの言葉に反応する俺。

 白いあいつってあの俺を助けてくれた奴だよな……。


『そう言えば言ってなかったな。夢の中で助けてくれたあいつがアプリをくれた張本人だ』

「えっ?」


 俺はグレンの話が一瞬、理解出来なかった。

 けれど、段々と理解していくと俺は頭が痛くなっていった。

 つまりあの白いあいつ=アプリをくれた人物という事は……。


「じゃあ、俺はあのハッキング野郎に助けられたのかよ……」


 俺は頭に手を乗せながら不満げにそう愚痴った。


『まぁ、そうだな。今度、いつ会えるかは分からないが後で助けてくれたお礼を言っとけよ。まぁ、今はそんな事を考えずに楽しもうぜ』

「……あぁ、そうだな」


 俺はグレンにそう言った後、改めて神崎と小西の方を見る。

 これから先、何が起きるかなんて分からない。

 けど、俺はこいつらと一緒に仲間探しを続ける。

 そして、一緒に強くなっていく。

 それだけ理解していれば今はいいと思う自分がここに居るのであった。


※※※


『どうやら大丈夫そうだな……』

「そうだな……」


 陽太たちが騒いでいる病室の前で立っている人が一人、誰かと話していた。


『全くお前があんな事を言うから仲間探しを辞めるかと思った』

「もしこれで辞めるんだったらそれだけの覚悟しか無いという事。そんな奴は辞めた方がマシだ」

『冷たいな』


 誰かとそう話した後、陽太の病室から離れていく。


『これからどうする?』

「侵略者の解析を続ける。それで侵略者の情報を手に入れる」

『なるほどな。しかし、新しいスマホを買ったのにまさか侵略者を隔離するためだけに使うとは思わなかったな』

「あれは予備用として買ったからいい。それより急ぐぞ」

『了解』


 誰かとの会話が終わった後、一人病院を去っていった。


※※※


 陽太たちが騒いでいる中、一人。

 雨に打たれながら陽太たちが侵略者と戦った場所に来ていた。


「あの屑鉄はやられたか……」


 ドラゴンが作った穴を見ながら誰かがそう言った。


「しかし、これからが楽しみだな……」


 そう言いながら雨の中で誰かが笑い始める。

 まるでおもちゃを見つけた時の子供のように嬉しそうに笑うのであった。


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