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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第五章 それぞれの思い
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混じり合う夢 後編

「嘘だろ……」

「……」


 未だに理解が追い付けてない俺がそう尋ねるとグレンは黙ったまま、目を閉じる。

 グレンの様子を見る限り、嘘をついているようには見えなかった。

 俺が神崎たちを殺そうとした……?


「どうやら君の様子を見る限り、自分の暴走の事は覚えていないみたいだな。じゃあ、真実を知らないとな……」


 グレンが目を開けながらそう言うと周りが徐々に変化していく。

 すると周りの景色はある場所に変わった。


「ここは……!」

「そう。ブラストカノンと戦った場所だ……」


 そう。グレンの言う通り、ここはあの半分機械のドラゴンと戦った場所だった。

 俺の後ろには爆発で出来た穴があった。

 するとその穴から……。


「きゃあああああっ!」

「うわわわわわっ!」

「!?」


 神崎たちの叫び声が聞こえてくる。

 その叫び声に俺は驚き、すぐに爆発で出来た穴の方を見る。

 すると、神崎たちは回っている何かに捕まりながら地上へと出た。


「なっ、何だ……?」

「きゃあっ!」

「いたっ!」


 俺が疑問を持ちながら回っている何かを見ていると神崎たちが投げ飛ばされる。

 神崎たちが投げ飛ばされた後、回っている何かは回転を止めて地上に降りる。

 その姿を見た俺は目を疑った。

 何せそこに居るのは……。


「えっ……俺……!?」


 そう。そこに居たのはグレンと融合した俺の姿だった。

 だが、いつもの姿と違い体中に黒い紋様に覆われていた。


「ヨウタ……あれが暴走した君の姿だ。君は侵略者を殺したいと気持ちで支配された姿でもある。それをミスズたちが止めようとしたんだ」


 グレンが俺の後ろでそう語っていく。

 すると、もう一人の俺は一歩。


「まさか……」


 俺がそう言うともう一人の俺はまた一歩、神崎たちに近づく。


「やめろ……」


 これは夢なのは分かっている。

 だが、それでも俺は声を出す。


「やめろ……」


 段々と神崎たちに近づくもう一人の俺。

 けれど、その様子がいつも神崎たちに向けているのとは違っているのは俺でも分かる。

 神崎たちももう一人の俺の行動に気が付いたのか身構える。

 なぜなら……。


「やめろぉ——!」


 殺意を持ちながら神崎たちに近づいているのだから。

 そして、俺が叫んだ後にもう一人の俺は神崎たちの方へと走り出したその時だった。


『UNITE ON! SAVOR LIGER!』


 スマホの電子音声が聞こえてきて、もう一人の俺の前に光に覆われた人が瞬時に現れる。

 もう一人の俺はそんな事を気にせずに光に覆われた人に殴り掛かるが片手で受け止められる。

 光に覆われていた謎の人物の体が段々と露になっていき、白い鎧の姿になる。

 そして、謎の人物はもう一人の俺と戦おうとしている。


「あれは……?」

「あいつがヨウタを助けてくれたんだ」


 グレンがそう言った後、もう一人の俺が謎の人物と戦い始める。


「戦いはヨウタが防戦一方だった。だが、暴走したヨウタは姿を変えながら戦いに挑んでいた。しかし、あの謎の人物も姿を変えながらヨウタに対処していった」


 グレンが語っていく毎にもう一人の俺は姿を変えながら戦っていく。

 グレンから恐竜の姿になったと思ったら次はネズミの姿になる。

 その光景はまるで道具のようを使うようにしか見えなかった。

 だがグレンの言う通り、謎の人物も融合を変えながらもう一人の俺に対処していく。

 そして、ネズミと融合した俺が爆発して決着がついたと思った瞬間……。


『UNITE CHANGE! BUBBLE TORTOISE!』


 スマホの電子音声が聞えてきて、もう一人の俺はウミガメと融合した姿になる。

 俺は信じられないものを見るようにもう一人の俺を見つめていた。

 そして、もう一人の俺は最後の一撃を謎の人物に与えて倒れた。


「これで分かっただろ。何で手伝ってほしくないのか……」


 グレンがそう冷たく囁いた後、俺は地面に跪く。

 そして、俺の体から冷汗が滝のように出る。


「俺は……俺は……」

「ヨウタ……君は暴走する前、自分の体がどうなってもいいから力が欲しいって願ったのは覚えているか?」


 グレンがそう言った後、俺はあの時の記憶を思い出す。

 確かに記憶が無くなる前にそう思った……。


「その結果が招いたのが暴走だ。そして、君はミスズたちを殺そうとした。挙句の果てには仲間たちを道具のように使って、傷付いたトータスですら——」

「違う!」


 俺はグレンの言う事を必死に否定しながら、拳で地面を叩く。

 だけど、体から冷汗が止まる事は無かった。


「あれは俺じゃない……! 俺は確かに殺す力が欲しいって願った……! けど、それは神崎たちを助けるためだった……! だからその、神崎たちやウミガメたちを傷付けるつもりは無か——」

「いい加減にしろぉ!」


 俺が子供のように必死に自分がやった事を否定しているとグレンがそう怒鳴り声を上げた。

 その怒鳴り声に恐怖を感じて、俺は否定するのをやめてしまう。


「ヨウタ……誰にだって間違いはある。けど、その間違いを否定したまま進むのも間違いだぁ!」


 グレンは怒り声のまま、地面に跪いている俺に向かってそう言い放った。

 俺はただその声を黙って聞いている事しか出来なかった。


「それに自分の体はどうでもいいだぁ? ふざけた事を言うなぁ! 自分の体を大切に出来ない奴に他の奴を守る資格は無い!」

「それはグレンだって言えた義理じゃないだろ……!」


 グレンの叫び声が終わった後、俺は勇気を振り絞ってそう反論した。

 グレンだって自分の体を考えずに行動しているだろ……。


「確かに俺もそんなに言えた義理ではないかもしれない。けど、これでも自分の体はちゃんと管理はしているつもりだ! その場が危険と判断した時は仲間と共に俺も一緒に逃げる!」


 グレンがそう叫んだ後、俺は暴走する前の記憶を思い出す。

 確かにドラゴンが死んだあの時も逃げるように促していた……。


「俺はこれでも戦場を生きてきたんだ。生きるためなら逃げる時は逃げる。それで助かる命があるなら尚更だ。死んだ仲間が居るんだったら、その死んだ仲間の為にも俺は生き続ける。それが俺の生き様だ!」


 グレンの一言一言が重くて俺の心に突き刺さる。

 それと同時にその言葉の一言一言が戦場で生き抜いてきた証なんだと思い知らされる。

 そうして、グレンが語り終わると俺は地面をじっと見ていた。

 すると、地面が濡れている事に気が付く。

 一瞬、冷汗だと思っていたがそれは違った。

 それは俺の目から流れている事に今更、気付いた。


「……んなさい」

「ん?」

「ごめんなさい……!」


 俺は泣きじゃくりながらそう口にしていた。

 本当は心の奥底では認めていた。

 俺のせいで神崎たちを危険に晒された事実を。

 だけど、どうしても認めたくなかった。

 認めたら俺は神崎たちを殺そうとした事になる。

 それだけじゃない。

 集めてきた仲間たちを道具のように使っていた事も認めた事になる。

 しかし、もう認めないといけない。

 俺が犯した罪を……。

 そうしなければ俺もあの侵略ロボットと同じだ。


「ヨウタ……ブラストカノンで悲しんでくれた事には俺もここに居る皆も感謝している。だけど、もう二度と仲間の事を考えずに行動したり、自分の体の事を考えずに行動するな。それさえ守ってくれば俺はもう何も言わない」


 グレンがそう言った後、俺は眼から流れ出る涙を拭き取る。

 そして、その場で立ち上がる。

 すると、集めた仲間たちが俺の元へ集まってくる。


「皆……ごめん。あんな風に使って……」


 そう言った後、集めてきた仲間たちは俺の言葉が通じているのか首を横に振る。

 そして、俺の目の前にウミガメが来る。


「ごめん……俺はお前の約束を果たせなかった……」


 俺がそう言った後、ウミガメは俺の右手の方に寄ってくる。

 その行動は俺を慰めているように見えた。

 俺はそのまま右手でウミガメの頭を撫でる。

 全く皆、優しすぎるよ……。

 また涙が溢れてくるじゃないか……。


「それでヨウタ、君はこれからどうする?」


 俺の後ろからグレンがそう問いただす。

 そんなのもう決まっている。


「俺は世界を救うとか分からないし、グレンの言った言葉が守れる自信も無い……。けど……」


 俺はそう言いながらグレンの方に体を向ける。


「俺はグレンの言った言葉をどんな事があっても忘れずにこれからも仲間探しを続けたい。だからグレン、これからも一緒に探そう」


 俺はそう言いながらグレンの方へ手を伸ばす。

 すると、グレンは俺の方へ近づいてきて、握手する。


「ヨウタの決意、確かに伝わった。これからもよろしくな。ヨウタ」

「あぁ!」


 俺たちはそう話した後、握手する力を強めた。

 ちょっと痛かったがそれは内緒にしておこう。


「後、ごめんな。ヨウタが暴走している時に何も出来なくて……」

「別にいいって」


 グレンが申し訳なそうに謝ってきたのを俺はすぐに許した。

 俺が暴走している時の記憶が無いがグレンが必死に止めようとしていたのは言わなくても分かる。

 仲間の為に必死になるドラゴン……それがグレンだから。

 俺がそう考えていると真横から光が溢れ出す。


「おっ、そろそろ夢の終わりか」


 グレンがそう言った後、お互い握手していた手を離す。

 そして、俺たちはそのまま光へと呑み込まれていった。


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